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 東京地検がまもなく小沢一郎民主党幹事長の「不起訴」処分を決定して、事件の捜査を終結させると報道されている。石川議員ら秘書を政治資金規正法違反事件で起訴して捜査は終結する。「検察の完敗」と言っていい事態だろう。私が知る限り、政界捜査でリークを乱発し、政権党幹部の「事情聴取」を2回まで行なって、ゴール寸前にきびすを返して東京地検特捜部が退却した例はない。

陸山会の土地購入をめぐる事件では、1月15日に現職国会議員の逮捕、小沢事務所をはじめとした関係先の一斉捜索、さらには鹿島など大手ゼネコンの捜索と「政権党の幹事長」を狙い撃ちにする「大型事件」の態勢を組んできた。しかし、政治資金収支報告書の「虚偽記載」容疑で小沢幹事長の具体的な関与を立証することは出来ず、石川議員や秘書らの「共犯」として在宅起訴することを断念したということだ。

特捜部にとって、「虚偽記載」は犯罪捜査の入口であって、大型公共工事に「天の声」として小沢氏が関与し、その対価としてゼネコンから裏金をもらい、その裏金が「不動産取引」という形で表に出てきた。政治資金収支報告書の矛盾をつく一方で、「水谷建設からの裏金受領」という供述を取って、大型事件として小沢幹事長本人を立件しようとの見通しだったと私は見ている。

「『水谷建設からの1億円』というのが与太話だったんですねえ」と語るのは、特捜部の捜査に詳しいジャーナリトの魚住昭さん。「特捜部は、この話に飛びついた。そもそも、饅頭のアンコは腐っていたのに、食べられるものと思って特捜は手をつけてしまった」と語る。刑務所にいる水谷建設元会長が供述した内容が引き金となって、今回の捜査が動き出したが、この人は佐藤栄佐久福島県知事の贈収賄事件の時に「実刑を免れるために検察の言う通り供述した」ことが明らかになっている。今回も、でっち上げでも何でも「1億円裏金供述」が事件の土台に使われれば、「仮釈放」の日が近くなるという実益が元会長にはある。この福島県の事件の捜査指揮をとってきたのも、当時副部長だった佐久間達哉特捜部長である。

 政治資金規正法違反容疑で逮捕されている石川議員の身柄を取り扱うかが今後の焦点だ。「とてつもない大きな事件」の入口としてこじあけたのが政治資金規正法違反だが、最大の焦点だった「裏金」と「親分」の関係を立証する証拠を固めることが出来なかった検察が、国会開催中に国会議員を拘束し続けるに足る相当の理由を示さなければ、裁判所も勾留をもう認めないはずだ。

 いったい、この捜査は何だったのか。昨年の西松建設事件以来、2度にわたって新聞・メディアを巻き込んで大騒動を起こした特捜部の狙いは「政権交代阻止」や「政権交代潰し」ではなかったのか。この点について、今後、真相解明されるべきだろう。また同時に、戦後一度も使われて来なかった「検察官適格審査会」(※当初は私がブログタイトルに適格性審査会としていたのは、適格審査会の誤りです)を実効性あるものに制度改革することも急ぐべきだ。

→「凍りついた『検察官適格審査会』秘話」(2010年1月29日 保坂展人のどこどこ日記)

→「続・凍りついた『検察官適格審査会『秘話」(1月30日 保坂展人のどこどこ日記)

 午後にも正式な東京地検の決定があり、捜査の終結と事件の処理について検察の説明もあるだろう。「捜査は続行」というポーズは崩さないだろうが、「特捜部に狙われたら最期」という神話は崩壊した。きちんと筋道をつけられる自信があるからこそ、強引に見える捜査を大々的に行なったのだと解説する人々は、この事態に言葉がないごろう。「検察リークと事件報道のあり方」についてメディアも自己検証が迫られる数週間ではなかったか。

今回の教訓を生かさないと、必ず同じことがくり返される。ここで、「2度あることは3度ある」としないためにも、制度として「検察官の暴走」を監視・チェックし、民主的な統制を利かす社会にしておかなければ、ならない。特捜部に残された頼みの綱は「検察審査会」とも言われている。「起訴すべし」との議決を二度重ねた場合に「強制起訴」のシステムが稼働し出している。その場合は、弁護士会から選出された弁護士が検察官の役割をする。

これからの議論の深まりと世論の動向が流れを決めるに違いない。


 

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