社民党の調査で、「棄てられた年金記録、83万件」が明らかになった。たった今、福島党首と阿部政策審議会長と記者会見した。先週から厚生年金の古い記録=「旧台帳」の行方を追跡してきた。先週の金曜日に入手した1枚の一覧表を分析し、何度ものヒアリングと実地調査で「封印されていた過去の年金記録」の闇を一部確認することが出来た。本ブログ読者に速報をお届けする。
棄てられた年金記録、83万件
社民党は、この1週間「年金問題対策プロジェクト」を中心として、年金記録の原点とも言える「旧台帳」の行方を追跡してきた。本日、重要な点が判明したので、ここに明らかにする。
「旧台帳」とは?
戦前の昭和17年(1942年)に始まる「労働者年金保険」から、「厚生年金保険」と名称が変わり、戦後の昭和29年(1954年)までの被保険者年金台帳を、社会保険庁は「旧台帳」と呼んできた。この「旧台帳」の年金記録は、総計で3119万枚と説明を受けてきました。
そのうち磁気テープ化された1365万枚については紙台帳を保存している。マイクロフィルム化した1754万件については紙台帳を廃棄したと社会保険業務センター記録部長・記録課長からの説明を受けてきました。私たちが見てきたデータには、(注)はひとつしかなかった。
磁気テープ化済 1364万件
マイクロフィルム化済 1754万件
枚数 3119万枚
(注)台帳の磁気テープ化済の内訳
1、昭和34年4月1日以後に際取得した者の旧台帳(48万枚)のうち、生年月日及び種別が資格マスターと一致する旧台帳 113千件
2、マイクロフィルム化の際に、台帳記号番号順配列誤り、撮影不良となった旧台帳 76千件
改竄されていた統計記録ところが、20日の夜になって私たちが受け取っていた社保庁社会保険業務センターの資料は改ざんされていたことが分かりました。実は、(注1)のみが記されている資料を見て分析をしてきたのですが、この資料は『30年史』という冊子の1ページであることが判明しました。私たちが急いで同書を入手すると、実はこの一覧表の一番下に(注2)があることが分かりました。
注2)移管を受けた3229万件のうち110万件は年金裁定済分、農林業団体職員共済組合移管分等の台帳であり、磁気テープ化・マイクロフィルム化はしていない。
旧台帳の総数は3229万件
「旧台帳」の総数は先の「3119万件」ではなくて、「3229万件」だったのです。社会保険業務センター記録部長記録課長に問い合わせると、110万件のうち年金裁定分は83万件、農林共済分は27万件の内訳だとのことです。
このうち83万件の年金裁定分は、昭和34年までに全国の出張所(現在の社会保険事務所)から移管された「旧台帳」記録の一部ですが、磁気テープ化もせず、マイクロフィルムにも取らずに、「廃棄処分」(センター記録部記録課長に再三確認済)となっていたのです。「棄てられた年金記録83万件」は、年金時効の撤廃で台帳を再確認しようにも不可能な状態であることが判明しました。
原簿の廃棄は厚生年金保険法違反
厚生年金保険法28条には「記録」について、「社会保険庁長官は被保険者に関する原簿を備え、これに被保険者の氏名、資格の取得及び喪失の年月日、標準報酬、その他路厚生労働省令で定める事柄を記録しなければならない」と明確に規定しています。
先週、福島党首の質問に対して柳沢大臣は、「旧台帳のうちマイクロフィルム化した1754万件の旧台帳(紙台帳)を棄てた」点に関して、「『原簿』の写しがあるので、原簿廃棄にあたらない」という趣旨の答弁をしましたが、磁気テープもマイクロフィルムもない83万人分の紙台帳は、復元・再確認の作業をすること自体が不可能です。
なぜ、83万人分を棄ててしまったのか
社会保険業務センター記録部記録課長によると、「83万人の裁定を終えた受給権者の旧台帳は、処理の中で証拠書として裁定請求書などの中にはさみこんでいき、これらと一緒に廃棄してしまった。いつ頃、どのぐらいの範囲で廃棄してしまったかはわからない」ということです。
「昭和44(1969)年~52(1977)年の旧台帳の磁気テープ化の作業、昭和50(1975)年~52(1977)年まで続いたマイクロフィルム化の作業が終了した時点までに廃棄されたものと思われる」と担当者の説明も要を得ない。当時、地方から中央に移管されたのが3229万件だったことは『30年史』に明記されていて、私たちが先週聞いてきた数字とは開きがある。先週から聞いてきた磁気テープ化済(1365万件)、マイクロフィルム(1754万件)総計3119件と数の相違が110万件あったことが浮き彫りになりました。
農林漁業団体共済の27万人の行方は
厚生年金から農林共済に移行していった27万人分の旧台帳は、農林共済に移動したと社会保険業務センターでは説明している。農林年金は昭和34年(1959年)に設立され、平成14年(02年)に1~2階部分が厚生年金に統合され、3階部分のみ特例年金として農林年金が給付している。(農林年金のプロフィール・農林漁業団体職員共済組合(農林年金)HP)
旧台帳から農林年金に移行した人たちは、農林年金あるいは、厚生年金受給にあたって、どのように記録を処理されたのか。 農林共済に問い合わせてみると「厚生年金から受け継いだのが26万件で、当時の組合員数が29万5千人だった。正確なところは判らないが、この当時の記録はマイクロフィルム化して現在も持っている」とのことです。
政府に年金記録の一斉開示を求める
私たちが丹念にデータを洗い出し、疑問をぶつけ、また社会保険業務センターに視察に出かけても、「紙1枚」出してこないという対応が続いている。(注1)の資料だけで、3回のヒアリングと1回の視察を行い、来週も「旧台帳」を格納している倉庫に視察に出かける。隠蔽体質を改め、今ここにあるデータをすべて開示すべきではないでしょうか。
先に明らかにした「船員保険36万人」の未入力問題についても「1430万件以外に未入力はありません」と胸を張った答弁の後で、未入力のき数字から除外していたことが判った。私たちが社会保険業務センターに視察に行き、マイクロフィルム保管室を見てすぐに目についたのが他の灰色のキャビネットと区別して、青色のキャビネットに「船員保険」と大きく書かれた記録でした。はたして、これを見落とすでしょうか。年金記録への不信の理由は、過去に間違いがあったことを糊塗し隠蔽していることにあります。
「年金記録」への徹底した情報公開を求めて、さらに調査を続けたい。
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