hiyamizu's blog

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田中聡『施設に入らずに「自宅」を終の住処にする方法』を読む

2024年05月21日 | 読書2

 

田中聡著『施設に入らずに「自宅」を終の住処にする方法』(詩想社新書36、2021年8月28日詩想社発行)を読んだ。

 

詩想社による内容紹介

病院、施設、それとも自宅か、
あなたは大切な人をどこで看取るか
そして、自分はどこで逝くのか・・・

よりよく生きたいと思えば
「よりよい最期」を求めることは当然のことだ。
しかし現在、人の最期においては、
医療、介護の関係者がかかわるだけで、
居心地のよさを追求する住環境の専門家の視点はほとんど加味されていない。
病院や施設などの自由が制限されるなかで、
その他、多くの人たちと一律に扱われて亡くなっていくことが、
はたしてその人らしい最期と言えるのだろうか。

一級建築士でありながら、自身で設計した介護施設の施設長も務めた著者は、
人間がその人らしい最期を迎えることができるのは、自宅しかないと考える。
要介護となっても、穏やかで上質な時間を過ごし、
尊厳ある最期を迎えることのできる終の住処のつくり方を説く。
安心老後住宅にするための戸建て住宅、マンションのリフォーム法や、
最期まで暮らせる新築住宅を提案。
さらには、介護施設長だった経験から、
よい介護施設、悪い介護施設の見分け方についても施設運営の裏事情とともに明かし、
理想的な「最期の居場所」を考察する。

 

  • 2017年の死亡者134万人のうち、最後の居場所は、
    病院が約100万人(75%)、自宅約17万人(13%)、老人ホーム訳10万人(7.5%)
  • 2012年の希望(意識調査) 病院(28%)、自宅(55%)、施設(9%)
  • ホスピスの一般的な入居条件は、末期がんなどで余命宣告をされていること。
    日本ではホスピスは絶対量が少なく、質よりも量も必要な段階。
  • 病院で働く9割の医師や看護師は、人が自然に穏やかに亡くなる過程を一度も見たことがないと言われている。

  • 入居者の平均介護度が高い順
    特養(要介護3以上)、介護老人保健施設(老健)、グループホーム、介護付有料老人ホーム(介護付有老)、サ高住、住宅型有料老人ホーム、ケアハウス
  • 利用料が高い順    介護付有老、サ高住、グループホーム、特養、ケアハウス
  • 特養は社会福祉法人が運営主体で補助金も潤沢で、内部留保が数億円の特養が多いことが問題になった。入居者はなるべく手間のかからない人を優先する殿様商売傾向が疑われる。

  • サ高住は自立度が高い人を想定した制度で、サービスとは介護せずに見守るだけの安否確認サービスである。実際には特色づくりに頑張っているサ高住も増えているが、単にハコモノだけのものもそれ以上に増えている。

  • オープン後2年以上なのに常時空室のところは見学に行くだけ無駄。
    常時満室のところは、地域最安値か、入居者のためのサービスを充実させているところだ。

  • 老健は、2~3カ月のリハビリをして自宅へ戻るという在宅復帰支援のための介護施設。

 

  • 介護施設、老人ホームへの入居を迷うくらいならやめた方がよい。入るのは簡単だが、新たな行き場所がなく、金銭負担も大きく、出るのは難しい。

  • 自宅介護の心得
    ・家族は介護のために仕事を辞めてはだめ。できる範囲での介護をする。
    ・介護のための同居は避ける。簡単ではないが、寝たきりになってもできる。
    ・仕事に向かうように介護に取り組むと、「敗戦」への直行ルート。介護はあきらめる撤退戦。

 

  • 介護ヘルパーのタイプ
    ・「上から目線型」赤ちゃん言葉で話しかけ、命令口調で指示
    ・「ダメダメ型」やることなすことダメ出し
    ・「職務優先型」食べ残しは悪で、完食を絶対とする
    ・「新人類型」介護には興味がない。携帯ゲームし放題な夜勤大好き
    ・「優等生型」親の介護経験ありか、お年寄り好きな若い女性

  • 介護現場でも「サシミの法則」3割は良く働き、4割は普通で、残り3割はあまり働かない

 

  • 50件中2~3件の良い施設の見つけ方
    ・1カ月程度の体験入居をしないと本当のところは分からない。
    ・老人ホーム紹介業は、複数の候補選定に留める
    ・口コミサイトは信用しない

  • 入居施設から退去するか迷ったら
    ・その施設に自分を理解してくれ、本音で相談できるスタッフがいれば急いで退去しなくてよい
    ・良い施設は簡単に見つからないし、長期間良い状態であり続ける可能性は低い
    ・要介護3以上の方には退去を強くは勧めない
    ・要介護2以下の方は自宅エリア担当の親身になってくれるケアマネを探して、自宅で生活するべき
    ・自宅介護が難しくても、本人が望むなら、せめて最期の2~3週間だけでも自宅での生活を検討したら

 

  • よいケアマネと在宅医の見つけ方

・ケアマネには在宅看取り積極派と各論反対の消極派がいるので、面談して前者を選ぶ
・在宅医はケアマネから紹介してもらうのがベスト。厳しくても現実的なことを云う医師がよい。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

著者は元サ高住の施設長なので介護現場の実状が分かり、なるほどと思う点が多い。ただし、全体状況ではなく、個々の実例に基づく話の羅列だが。

 

自宅介護のための方策はあまりなく、なんとかなると言うばかり。一方で、施設の問題点は、あれもこれもと指摘する。

 

 

田中聡(たなか・さとし)

1966年生まれ。一級建築士、介護福祉士。東京理科大学大学院修了後、大手ハウスメーカー等で設計、営業に携わり、「家づくり」一筋約30年。

サービス付き高齢者向け住宅を企画設計し、自身で施設長も務める。

現在は、「終の住処コンサルタント」として活動。たとえ要介護になっても穏やかな老後生活を送り、尊厳ある最期を迎えることができる住宅の企画提案、情報発信をしている。
「終の住処 設計企画 」 banfoo@nifty.com

 

 

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