hiyamizu's blog

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東野圭吾『虚ろな十字架』を読む

2017年05月13日 | 読書2

 

東野圭吾著『虚ろな十字架』(2014年5月25日光文社発行)を読んだ。

 

11年前、娘を強盗に殺害された中原道正を訪れた当時の担当刑事・佐山は、離婚した元妻の小夜子が刺殺されたと告げる。小夜子とは、犯人の蛭川の死刑を望み、裁判をともに戦ったがその後離婚し、連絡し合っていなかったが、小夜子は離婚後もライターとして被殺害者遺族のために盛んに行動していた。

 蛭川は、かつて強盗殺人を犯し、刑務所で無期懲役だったのだが、更生良好とした仮出所し、強盗殺人を犯したのだ。死刑判決だったなら愛美は殺されなかったのだ。

 

 小夜子はいう。「今の法律は犯罪者に甘いですからね。人を殺めた人間の自戒など、所詮は“虚ろな十字架”でしかない」

 

 花恵は問う。少年の時に一つの命を奪ったとして刑務所に入り、ろくな反省もしない“虚ろな十字架”と、罰から逃れても、その後、何人もの命を救いながら生きるのと、どちらが償いになると思いますか?

 

この作品は書下ろし。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 充分な面白さを保ちながら、重い死刑制度の是非を読者に問うという力量はさすが。

 

ミステリーとしては途中から、おおよその最後の予測がついてしまうが、まあまあかな。

 

 被害者家族の死刑を望む気持ちは良く書けているし、死刑制度の是非の問題提起も小説的によくできている。しかし、最後に出てくる、小夜子の、贖罪も認めない全く一方的な強弁は、娘を殺された直後ならわかるが、強引過ぎる。

 

 

死刑について私が思うこと

 

 私は死刑制度には反対だ。無期でなく終身刑を設けるべきと思う。

現在の無期という制度は、殺人しても無期で、その後いつのまにか出所してしまうのも問題だが、刑務所を出た後も、受け入れ体制がないためもあり、結局社会復帰できず再犯する人が多いのが問題だ。

 死刑というのは、殺したら、殺し返すということだし、なかには本当に悔いて、贖罪し、更生して人生を送る人もなかにはいるのだろうし。

死刑が残酷な殺人行為の抑止になっているというのも、本当に残忍な殺人者には効き目がないようだし、一時の怒りにまかせた殺人に対しては、死刑という抑止効果はないだろう。

 

多くの場合は全く落ち度のない被害者が命を絶たれ、被害者の家族は、犯人がいまだに生きているのは理不尽と思い、死刑を望むことが多いだろう。しかし、死刑になってももちろんそれで心が晴れるわけではない。

死刑と決まると、犯人の贖罪の気持ちが薄れる可能性もある。命はかけがえのないものというが、殺人犯も死刑となれば、自分のかけがえのない命で償うのだからと、反省、贖罪の気持ちが薄れる可能性もあるのではないだろうか。

 

 

登場人物

 

中原道正:ペット葬儀社「エンジェルボート」経営。娘の愛美を殺された。

神田亮子(りょうこ):40歳、中原の部下

 

浜岡小夜子:中原道正の元妻。フリーライター。娘の愛美を殺され自分も刺殺される。被殺害者遺族の会に参加。

浜岡里江:小夜子の母。裁判への被害者参加を決意

浜岡宗一:小夜子の父

 

仁科史也(ふみや):富士宮市の中学で一学年下の沙織と付き合う。現在慶明大学附属病院の医師

仁科花恵:史也の妻、町村作造の娘

仁科翔:史也と花恵の長男、花恵の連れ子

仁科由美:史也の妹

仁科妙子:史也と由美の母

 

井口沙織:幼稚園の時母を亡くし、父洋介と二人暮らし。富士宮市の中学で史也と付き合う。

井口洋介:沙織の父。化学工業製品会社の技術者。

 

町村作造:小夜子殺しで自首、仁科花恵の父

町村克枝:仁科花恵の母、50歳前の癌で死亡

田端祐二:花恵と付き合う。詐欺師。

 

蛭川和男:中原道正と小夜子の娘、小2の愛美(まなみ)を殺す。48歳

平井肇:蛭川の弁護士

 

佐山:警視庁捜査一課

 

日山千鶴子:小夜子の大学の同級生、出版社経営。

イグチ:小夜子が取材した女性、30代、情緒不安定で盗んだ物を食べ2度刑務所に入る

 

山部:弁護士。被殺害者遺族の会

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

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