東野圭吾著『禁断の魔術』(文春文庫、ひ13-12、2015年6月10日文藝春秋発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。ある日、フリーライターが殺された。彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。シリーズ最高傑作!
「ガリレオシリーズ」の基本構成は、草薙刑事が直面した不可解な謎を物理学者の湯川が科学的考察によって解明するという構図だ。本書は、湯川や草薙という人物をもっと描きたいと長編になったと著者は語っている。(文藝春秋特設サイト)
東京のシティホテルの一室で20代後半と思われる女性が大量出血し亡くなっていた。
帝都大学理学部助教授・湯川学は、高校の後輩・古芝伸吾が帝都大学に入学したとのお礼の訪問受ける。かて、湯川の斬新なアイディアと厳しい指導で作り上げた装置での派手な実験パフォーマンスが成功して、古芝が部長の物理研究会に新入が入り、部活動が継続したという経緯があったのだ。
しかし、古芝は親代わりの姉が急死し、大学を中退、町工場で働くことになる。さらに、代議士の大賀を追っていたフリーライターが殺され、さらに、大賀の担当新聞記者が古芝伸吾の姉だったことが分かる。
初出:この作品は『禁断の魔術』(2010年10月)所収の「猛射つ」を大幅に加筆・改稿
私の評価としては、★★(二つ星:お好みで)(最大は五つ星)
著者自身が、「ここに登場する湯川学は、「シリーズ最高のガリレオ」だと断言しておきます。」(「本のWEB」自書を語る) と言っているが、人物描写に力を入れるという長編にも拘わらず、湯川が十分描かれているとは思えない。また、出版社の宣伝では、この本自体を「シリーズ最高傑作」と言っているが、過大広告だ。事件の推移自体に、意外性は珍しく九割方なかった。兵器?実験装置も、正直いまいち?です。ストーリーが頗る単純
姉がそんなに魅力的とも思えない男性と不倫しているのか理解できない。しっかり者の姉がしかも妊娠に気づかないとは。
最後の最後で湯川の態度はあり得ない。どんな事情があっても人が命を絶つことを肯定してはいけない。
登場人物
湯川学:帝都大学理学部准教授、ガリレオ先生
多々良:管理官、本事件の実質的責任者
間宮:草薙の上司
草薙:警視庁捜査一課、特捜本部主任、警部補、湯川の親友
岸谷:草薙の後輩刑事
内海薫:草薙の部下、巡査長、女性
古芝伸吾:帝都大学工学部に入学し、1か月で退学、湯川の高校の後輩、クラサカ工機に勤めていた
古芝秋穂(あきほ):伸吾の姉、父母亡きあと生計を支える、明生新聞政治部で大賀担当記者
長岡修:フリーライター、38歳、スーパー・テクノポリス(ST)反対運動家、自宅マンションで絞殺される
渡辺清美:長岡の交際相手、美容整形外科の受付
勝田幹生:レストラン「ボタニアン」の店主、ST反対運動のリーダ的存在
米村:書店経営、タウン誌発行、勝田を助けている
大賀仁策(じんさく):光原町が地元の代議士、STの発案者、元文部科学大臣
鵜飼和郎:代議士・大賀の秘書
池端:代議士・大賀の光原町(みつはらちょう)の後援会長
西村:大手不動産会社の社長、光原町のプロジェクトの実質責任者
矢場:建築コンサルタント、プロジェクトの反対派対策調整役
倉坂達夫:クラサカ工機社長
倉坂由理奈(ゆりな):高校生、クラサカ工機社長の娘
サトル:ミカにプロポーズしようとSTに侵入、突然バイクが炎上
スーパー・テクノポリス:光原町に建つ最新科学技術の拠点、高レベル放射性廃棄物処理の研究も行う予定
光原町糸山地区:G棟が建つ予定の場所、イヌワシの巣が確認され反対運動が再燃
吉岡:東京のシティホテルのフロント、古芝秋穂の宿泊を受け付ける
松下:東京のシティホテルのベルボーイ、古芝秋穂の死体を発見