hiyamizu's blog

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桐島洋子「林住期ノート」、「続林住期ノート」を読む

2007年08月25日 | 読書
林住期(りんじゅうき)とは、務めを果たし自然と向き合って自分自身の人生を静かにみつめる人生の期間である。桐島洋子の「林住期ノート」、「刻(とき)のしずく 続・林住期ノート」と、「林住期を愉しむ 水のように風のように」を読んだ

母子4人で2ヶ月間、世界中を巡り歩き、子育てを卒業し、彼女の林住期が始まった。「林住期ノート」とその続編の「刻のしずく」は、彼女が会った聡明でさまざまな分野で活躍している女性との出会いについて書いたエッセイである。
私など社会を動かしているのは企業、とくに大企業だとついつい思ってしまうが、男性社会とはまた別の形で、場合によっては草の根的に下から社会を動かしているすばらしい女性たちが多くいることを知った。バンクーバーでお世話になった知人が、きわめて好意的に紹介されていてうれしくなる。

「刻のしずく」から2箇所だけ紹介したい。
「今、飛行機に溢れる日本人を見回しても、不気味なペアルックでハネムーン・パックのベルトコンベアーに乗せられた、つがいのブロイラーみたいなカップルズとか、ジョギングに出るような超カジュアルでいかにも旅なれた風に図々しくふるまいながら、挨拶程度の英語もできない卒業旅行の大学生とか、空港の免税店で買うべき化粧品の心配ばかりしているOLとか、パリのロブションがどうのロンドンのサヴォイがどうのと、本の受け売りの気障なウンチクを聞こえよがしに喋り立てるグルメおばさんとかいった、・・・国際人どころか日本人としての手応えさえほとんど感じられない」
(これは約15年前の話だが、今は少し良くなったが、基本的にあまり変わりない。自戒、自戒。)

アニタ・ロディックが始めたボディー・ショップという自然化粧品の会社の紹介がある。この会社は、すべて天然素材で製品を作り、動物実験はせず、工場立地になるべく失業率の高い地域を選び、マスメディアを使った宣伝はせず、従業員は週二時間社会福祉活動するが、会社はその分の給与を払う。
(フェアー・トレイドもそうだが、このような活動がボランティアでなくビジネスとして展開されているのはすばらしい。添加物を入れない、エコロジーに配慮するなどの動きは今では日本の企業の多くが取り入れている。究極はやはり値段をとるか、こだわりをとるかになるが、少なくとも、消費者の選択の幅が広がるのは歓迎である)


「林住期を愉しむ」には、「好きなところで暮らしたい ヴァンクーヴァーに恋をして」という節がある。
「海があり、雄雄しい山、優しい森があり、綺麗な家並みもあり、ダウンタウンの摩天楼もある。豪奢な桜の向こうに雪化粧の山々が聳える。」
「日本だったら人波で真っ黒になる絶景の公園が至る所にあり、人影は少ない」「各国料理は新鮮な材料得て本国よりおいしい」

「引き算の美学」という節には、「もう人生ここまで来たんだから、できる贅沢は遠慮なくしようじゃないの」と決心したのは50歳になったときだった、とある。しかし、「いかに身辺を整理して簡素に風通しよく自然体で暮らすかという方にばかり心が向いていく。結局のところ、折り返し点を過ぎてからの贅沢というのは、足し算ではなく引き算にあるらしいと気付いたのである」

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