中日春秋 (2021年6月18日 中日新聞))

2021-06-18 09:42:39 | 桜ヶ丘9条の会

中日春秋

2021年6月18日 中日新聞
 そのまま訳せば「ロシア人」である。英ロック歌手スティングさんの『ラシアンズ』が米ヒットチャートの上位に入ったのは一九八〇年代、冷戦の終盤であった。曲は、核武装してにらみ合う米ソに融和を訴えていた。今聞けば、歌詞の表現に少々びっくりする
▼<イデオロギーは別として/同じ生体組織を持つ僕らなんだ/僕は心の底から願う/ロシア人も子供を愛していることを>。同じ人間じゃないか、子供を愛さないのか。そんな問い掛けが成り立ったのは、彼らはまったく異質かもしれないという思いや疑問が、西側社会の片隅にあったからだろう
▼永遠に分かり合えないのではないかという空気はたしかにあったようにも思う。東と西が絶望的に遠かったあの時代以来、現代の米ロ関係は「最悪」の状況ともいう。そのなかで開催された米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の会談である
▼大きな具体的成果があったようにはみえない。ただ、今も核大国である両国の首脳が核軍縮などで話し合うことで一致した
▼プーチン氏は主要国の会議から排除され、トランプ前米大統領は核軍縮に後ろ向きの姿勢をみせた。その後、最悪に向かった流れが変わったなら歓迎だ
▼同じ生体組織ではないか、などと言わなければならなかったあの時代の空気。吸っていた首脳たちが、戻ってはいけないと知っているはずだ。