南海トラフ地震 「災前の策」で備えよ  ( 2018/12/13 中日新聞)

2018-12-13 09:33:41 | 桜ヶ丘9条の会
南海トラフ地震 「災前の策」で備えよ
中日新聞

「南海トラフ地震」について、想定震源域の東西どちらかで大地震が起きた場合、残り半分の地域でも住民避難を呼び掛ける報告書を政府の中央防災会議がまとめた。「空振り覚悟」を許容しよう。

 「南海トラフ」は静岡県沖から九州沖まで約七百キロの海底のくぼ地で、プレートと呼ばれる岩板の境界。「南海トラフ地震」は静岡県沖を震源に想定する「東海」、愛知・三重県沖などの「東南海」、高知県沖などの「南海」の三地震を総称し、この地域での十八世紀以降の巨大地震は一七〇七年にはほぼ同時に、一八五四年には三十時間後、一九四四年には二年後に連動して起きた。

 今回のキーワードは「残り半分」だ。地震の想定震源域を東西二つに分け、どちらか半分で巨大地震が発生した場合(「半割れ」と呼ぶ)、その時点では被災を免れている残り半分の地域でも、巨大地震と津波が連動するかもしれないとして、「一週間程度の避難」などを呼び掛けている。

 九五年の阪神大震災、二〇一一年の東日本大震災の経緯から、中央防災会議は「確度の高い地震予知は困難」にかじを切り、今回は「最初に被災を免れた地域の救済」に重点を置いた。一八五四年も一九四四年も東側が先に起きているが、「次」は東西どちらが先かは不明。同時もあり得る。震源域の自治体や企業などは、東西問わず、対応や具体的な避難先の確認などが求められる。鉄道など交通機関の対応も関心事だ。

 「一週間」という避難の期間は「過去の事例や自治体へのアンケートから定めた」という。巨大地震連動の間隔が一週間以上のことは十分ありうるし、連動しないかもしれない。つまり「空振り」も十分予想される。大規模な避難には人手もコストもかかり、社会経済に与える影響は計り知れない。それでも、「命を守る」ためには致し方ない提言だろう。その代わり、綿密な計画を立てないと大混乱は目に見える。

 今回は「残り半分」に重きを置いた報告書ではあるが、最初の巨大地震発生への備えが極めて大切なのは当然である。何しろ南海トラフ巨大地震は、今後三十年以内に70~80%の確率で起きる最大マグニチュード(M)9級の地震とされ、「津波は最高三十メートル超、死者は最大三十万人以上」というすさまじい想定。関係当局も私たちも、既に「災前」にあるとの意識を持って対策を取ることを絶対に忘れてはならない。