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またまた炸裂!釣り野伏 「戸次川合戦」4

2007年12月17日 | 歴史
のんびり気軽にさんぽがてら。
本日は…涙なくしては見られない、こちらの合戦をば。

天正十四年(1586)大分県大南町 戸次川
秀吉の先鋒部隊が九州入りしてもなお豊後侵攻を止めない島津勢。
囲まれた鶴賀城救出のため、長宗我部ら四国勢が向かいます。
群議では「長宗我部元親」らが慎重論であったのに対し、軍監として派遣されていた「仙石秀久」は強硬論を唱え、やむなくそれに従うこととなってしまうのでした。


ちなみに、何度も出てきた「軍監(ぐんかん)」という言葉。
これは規律である軍掟(いくさおきて)を遵守させると同時に、軍功や働きぶりをチェックする任務が与えられた役職の一つです。
軍目付(いくさめつけ)と呼ばれたりもします。
要するに、降伏したばかりな長宗我部勢の監視役だったんですね。

さて、夕刻から強制渡河した「仙石秀久」ら緒隊は島津の第一陣「伊集院美作守」隊を攻撃。
これは島津方でも予想外なほどに激しいもので、たまりかねた伊集院隊は敗走。
これを見逃さず、豊臣方は追撃にかかったのです。
すると、沈黙していた第二陣「新納(にいろ)」隊らがここで突如左右から逆襲。

わざと先陣を敗走させ、自ら戦場と定めた有利な地形まで誘い出して包囲殲滅するという、島津得意の必殺技「釣り野伏」がここでも炸裂するのでした。

この攻撃によって混乱した豊臣勢「仙石秀久」隊はあっさりと壊滅・敗走。
それに続いていた第二陣「長宗我部信親」「十河在保(そごう・まさやす)」隊もあちこちで分断され、中津留河原まで退却するものの包囲・壊滅させられてしまうのでした。
ここで「十河在保」は討死。
また、「長宗我部信親」は続く第三陣の父「元親」と緒隊を助けるため、七百ほどの手勢とともに敵中に踏み止まったのです。
島津勢の包囲を受けた「信親」隊はここで集中攻撃を受け、壮絶な討死をするのでした。

なにしろ、配下武将から一般兵にいたるまでことごとくが討死したという壮絶な有り様で、逆にこれを攻めていた島津勢にも多大な損害を与えているのです。
この「長宗我部信親」が散り際に見せた”鬼神にも勝る戦いぶり”は島津方でも激賞され、後に遺体の引き渡しに赴いた「谷忠兵衛」には甲冑や太刀も添えて丁重に返却した、と伝えられております。

あの「織田信長」が烏帽子親となって元服した嫡男「信親」は聡明で知られ、部下からの信頼も厚く、次代を担う大将として大いに期待されていた若武者だったのです。
それだけに、日振島まで退却してからその死を知った父「元親」の悲しみは大きく、戻った遺体を見て号泣したそうなのです。
(※余談ですが、後に長宗我部家では家督争いが勃発して数名が粛清されるという、大混乱となるのでした)

この中、主戦論で敗戦を導いた張本人「仙石秀久」は少数の家臣と共に一目散に本拠淡路島まで逃げ帰ったと伝えられております。
ちなみに、夕刻から始まったこちらの合戦はほぼ夜戦であったようでした。

翌十五年(1587)三月。
大坂から二十万とも称される軍勢を率いた「豊臣秀吉」は華々しく出陣。
本気を出した豊臣勢は強く、なんと四月には島津を降伏させるのです。

なお、ここで戦死した「長宗我部信親」の墓は今も戸次川の高台に残っております。


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※こんなシリーズがあるんですね。
 でも、さして戦っていないらしい秀吉の刀って、そんな価値ないような気もしますけれど…。


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1 コメント

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Unknown (鷲谷 壮介)
2021-03-10 12:47:28
初めまして、鷲谷と申します。

この度戸次川の戦いについての記事を書かせていただいたのですが、その際にお寺さんぽさんのこちらの記事を参考にさせていただきました。

長宗我部信親の死は本当に残念ですね。
そして、その後の長宗我部家の運命も残念でなりませんね。

ただ、長宗我部藩が存続していたら土佐藩の強烈な身分制度はなかったでしょうし、幕末の維新志士達は登場しなかったかもしれませんから、複雑な気持ちです。

それと、誠に勝手ながら自ブログにてお寺さんぽさんの記事のリンクを貼らせていただいたので、ぜひ遊びにいらしてください!
http://washiya.sapolog.com/e488235.html
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