こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ちょっぴり忙しい時間

2023年04月19日 02時33分26秒 | 日記
4月のイベント「畑ライブラリー」の、
準備に手を取られています。
そこでいつもの定番です。
昔の原稿を引っ張り出しました。

都会暮らしに疲弊して舞い戻った十数年ぶりのふるさと。二人きりの兄弟である兄の急逝を受けた帰郷が表向きの理由だった。実態は都落ち同然のUターンである。

 周囲を山に囲まれた田舎の風情は、都会に就職が決まり出ていったころと変化はさほど見られない。面食らったのは見知った顔が少ないこと。幼馴染の大半は都会に出ている。顔や名前がわからない住人に囲まれ、もともと人見知りな私に、自分から村の仲間入りするなど無理な話で、孤独感に苛まれた。

 疎外感を脱しきれないまま、村の秋祭りを迎えるはめに。子供のころ祭り屋台の乗り子として太鼓を打ち鳴らした記憶はあるが、青年になるかならないかで村を離れ、祭り屋台を担ぐ機会は一度も得なかった。

「兄ちゃんらが守り継いだ祭り屋台やで、気合いれて担いで来いや」

 高齢の父に尻を叩かれて、渋々祭りに参加した。昔から引きこもりに近い暮らしで、人の中に飛び込むのは嫌で嫌で堪らない。それでも父の思いは拒めなかった。

 屋台庫前に集合した村の男衆の中で予想通り浮いた存在の自分を思い知らされた。端っこで大人しく固まっているしかなかった。

「つねよっさんやろ」

 顔を上げると、若者の顔があった。怪訝そうな私に気付いた彼は、笑顔を弾けさせた。

「二年後輩のSです。一緒に屋台担げるなんて嬉しいなあ。僕も同じUターンですわ」

 顔を知らない後輩でも、Uターン仲間と聞けば親近感を覚えた。二年前に大阪から帰郷したらしい。「俺、神戸からや」思わず口を滑らせた。Sと話が弾むと、次々と若者が割り込んできた。やはりUターン組が多かった。てんでに酒を進めあい、肩を組み合った。

 同じ帰郷組、年齢を超えた仲間意識が生まれた。屋台を担ぐのもやる気満々となった。

 私にふるさとを返してくれた秋祭り。今は見物の立場で参加を楽しんでいる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする