母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

吾亦紅考

2020年08月25日 | Weblog
午睡のラジオから流れた歌
すぎもとまさとの「吾亦紅」
離婚を決めた男が母の墓に参る
やっと別れることができる褒めてくれと
子供のように語りかける
複雑な人生が山の麓の
風寒い秋の独りの墓地で
線香の香りにゆっくり浮かぶ

長い不義理を悔やみ母に詫び
高原の冷たい風を男は体いっぱい受ける

母たちはいつも
言葉なく風のように透明に姿して
我が子の総てを許すだけ
誰にもある悔い 戻れないその日
母の優しさに訴えることの悲しさ虚しさ

それにしても高原に咲く秋の花吾亦紅は
吾も恋う ワレも乞う
生きてきたこのきまま勝手な時間を誰に乞う

母たちはとうに岸を離れ世界を分かち
大空の中をせいせいとして飛び回っているのだ
慎ましい高原の花
吾亦紅 小さな赤い花に心残して


火鉢に咲く花

2020年08月02日 | Weblog
渡り鳥や回遊魚のようには
自由にねぐら探せぬわたしたち

なんとか住処と狩り場を見つけ
知恵絞り精一杯生きようとするわたしたち

ひと見ればその豊かさにひそかに悲しみ
貧しい人見ればおのれにまた羞恥覚え

それは短い浮き雲のながれのよう
姿変え色を変え 夕闇にミストとなり消えゆく

与えられた場所で咲く花
他を知らずに過ごす一生

花も猫も私たちみな誰かに選ばれ
いのちの幸せ探しを課せられたもの