母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

在りし日の夏

2015年08月28日 | 季節
迎え火 送り火 盆提灯
ねずみ花火のシュールシュル
手牡丹花火を手に持って
縁側に涼んだ夏の夕

線香花火は手に咲く牡丹
手牡丹花火の花開く
たった一分の物語を
息をのんで見つめてた
かすかに火薬の
匂ういつもの夏の宵

ガラスの風鈴
盆提灯
縁側に揺れる夏の色夏の音
灯に揺れる人影を
金魚の浴衣に下駄履いて父のひざの上
花火遊びで夜が更けて
青い蚊帳に運ばれた


それは遠い遠い思い出の
在りし日の夏
花たちの匂いと水の匂いと
光放って真直ぐに落下し
小さく燃え尽きてしまったオレンジ色の火の玉の
夏の宵
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牛首の麓から

2015年08月08日 | 
マツムシソウにみつ蜂の群れたひろい草はら
牛首山からいきなり吹き下ろす風に
帽子を盗られてあわてた
私たちの高原は
人の知らないお花畑を隠していた
「地元の人も知らないところ」
カノコユリやワレモコウ、ナデシコに黄スゲらとりどりの野の花が
生きもののように首を振るなだらかな斜面に
わたしたち兄弟三人は
子供のころの姿に戻ってはしゃいでいた日
「飯盛山へ続くあれは白い道」
「あの曲線が釜無の流れ」
「こんもりと小さいのは旭山」
瑞牆山も金峰もすぐそこ 
そして甲斐駒の峰はきりりと聳え
真昼の昼下がり人の気配薄いこの秘密の草はらに立って
わたしたちはその時
まるでふるさとを抱え込んだようにうっとりと
うねうねと続く河川
深緑の樹林とやまなみと
湧き起こり流れてゆく雲に見とれていた

コメント (2)
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