母はふるさとの風

今は忘れられた美しい日本の言葉の響き、リズミカルな抒情詩は味わえば結構楽しい。 
ここはささやかな、ポエムの部屋です。

月の夜 猫の宴

2017年12月04日 | 
その夜は大きな満月だった
眠るには惜しい夜なのだった
カーテンを透かして差し込む月の光に
何かの気配を感じ
風の無い晩秋の夜更けバルコニーと呼ぶ外に出ると
落ちてきそうな大きな満月が
霞むオリオンを従え大空にあった
月は黄金色に輝いて
私をとらえるような目をしていた
雲も無く 群青に広がる夜の空
ここには何か不思議ないのちがいるようだった
見つめる月の丸さは
猫の目のように少し動いた
ウサギが住む カニが住む と
世界の国で人間は月の表を読み想像するが
ここに居るのははやり
別れていった猫たちなのだと思った

“おかあさん、ここよここだよ”
猫たちは私をおかあさんと呼び
今もどこかに生きているのは知っていたが
私の行けない処なのだと諦めていた
けれど彼らはもしやあの遠い月の地下で
いのちの再生のための宴を開いている
とその夜は信じても良いのだと思えた

生まれては消えて行くあらゆる数えきれぬ命は循環を繰返し
そのターミナルは
遠く離れた月の裏側の地下の王国に
命の宴を繋ぐためひそかに存在する
猫たちは満月の夜は一足飛びで地球に戻って空に躍り出て
猫キックに猫パンチ、猫プロレス
と 空を狭しと駆け回り
いつもの愛すべき運動会を続けているのです
尻尾を雲のようになびかせて