A Challenge To Fate

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【DISC REVIEW】"脱ロック37年"グンジョーガクレヨンの新作『Gunjogacrayon』

2016年05月08日 02時03分29秒 | 素晴らしき変態音楽


Gunjogacrayon
P-Vine / Pass Records PASS-04

1. sabinezu
2. hai ao
3. hisoku
4. aoni
5. huta ai
6. tomekon

All Compositions by Gunjogacrayon

Gunjogacrayon
Tadashi Kumihara guitar
Takashi Maeda bass
Atsushi Miyakawa drums

Guest Musician
Takayuki Hashimoto (.es) sax

Recorded by Hideaki Hayashitani at Nana Hari
Mixed by Yoshitaka Goto and RQlab
Mastered by Takayoshi Manabe at Crown Mastering Studio

Produced by Yoshitaka Goto

A&R Direction by Yoshiaki Ando

Art Direction by Yoshitaka Goto
Cover Photo by Takehiko Nakafuji
Designed by Rosa Yemen

Special Thanks to Satoshi Ito, Shoichiro Mori

Pass Records 2016
2016年5月18日リリース
P-VINEリリース情報

私の傲慢を戒める濃紺の書

グンジョーガクレヨンは1979年結成の脱ロックバンドである。「脱力」ではなく「脱」?脱原発や脱アルコールに倣えば、ロックから脱出して別のフォルムでロックと同じ効能を得るための試みである。つまり元にあるのはROCKであり、AVANTGARDEやJAZZやIMPROVISATIONやNOISEはROCKから脱出するための方法論と言っていい。1980年PASS RECORDSからリリースした1stLP『GUNJOGACRAYON』ではポストパンクの硬質なビートとシャープな音像処理、2nd『gunjogacrayon (2nd album)』(1987)、3rd『グンジョーガクレヨンIII』(1994)では非JAZZ完全即興と、レコーディング作品のテイストは異なる感触を持つが、ライヴ空間に於けるスタイルは、結成以来37年間、大きく変わっていない。

90年代までの5人体制から3人になって初のアルバム。宮川のドラムの擂粉木と前田のベースの篦が絡み合って音響の石膏粘土を叩き/練り/捏ね/潰す。その上下左右前後を組原のギターの彫刻刀が切り/刻み/削り/裂く。今回嬉々として彼らの脱構築作業に加わったのは大阪のアート系即興ユニット.es(ドットエス)のリード奏者・橋本孝之。

1. 錆鼠 さびねず
ギターの地響きをサックスの稲妻が切り裂く。ベースの重低音が地割れを起こし、シンバルの飛沫が飛び散る台風の接近に、子供たちの心はワクワク感で満たされる。

2. 灰青 はいあお
豪雨が一瞬にして止み、雲間から姿を見せたのは太陽ではなく、得体の知れない歪(いびつ)な惑星であった。キーボードにしか聴こえないギターの音色は組原マジック。エイリアンの呼び声が召還した邪悪な魂は、闇にのたうつベースと酸素の希薄なパーカッシヴな打音であった。

3. 秘色 ひそく
湖畔の濃霧に金属の擦れ合う音が響く。隙間を縫って立ち上がるサックスが摩擦熱で温熱湿布する。ナイフの切れ味ではなく、節足動物の湿った表皮を滴り落ちる水粒のように艶かしい。我慢できずにギターが触手を伸ばし、摩耗しながら愛撫する。様子をうかがっていたベースが同調し、触れる程度のペッティングに浸っている間に、ドラムは大胆にも睦み合う二人の下で振動する。

4. 青丹 あおに
忍耐の限界を超えた重低音の欲情放射。低周波ビームで空気を満たせば恰(あたか)も痙攣するサックスの転倒を防げると思っているのだろうが、逆に彼に痛みを与える矛盾に気付く筈もない。ドラムは我関せずと独り遊びに耽る。ギター弦のグラインドの禁断の悦びに悶えるサックスを聴くがよい。

5. 二藍 ふたあい
ギターとサックス二人きりの睦言が漏れ聴こえる。立場逆転、弱者と強者の入れ替わり。

6. 留紺 とめこん
ベースのパルスは一定ではなく、恰も不整脈の如く何時強心剤が必要になるか判らない。死と隣り合わせのスリルに酔って最後まで終ることはない。バスドラムを連打する足の指の付け根が、筋を違えて引き攣りながらも踏み続けるドラムも然り。二人の責め苦をモノともしない屈強さに貫かれた非在ギターは兎も角、遥かに若いサックス奏者もひとかけらの不安もなく自信を持って先の先へ挑むことが可能になる。

トータル47分の旅路を、群青色の豊穣の海の秘密を暴き出そうとする傲慢な人間の性(さが)への警告と捉えた筆者にとっては「禊の儀式」または「寓話の幕開け」となる本作を座右の銘に据える欲望を拭い去ることはできない。

聴くたびに
荒ぶる予感
群青画

■Gunjogacrayon( グンジョーガクレヨン)
結成37周年を迎える日本の前衛ロック界の伝説的グループ。1979年、組原正(g)、大森文雄(key)、前田隆(b)、宮川篤(ds)、園田游(vo,reeds)により結成。1980年、PASSレコードから5 曲入LP『GUNJOGACRAYON』でデビュー。硬質なビートとフリージャズ的な即興演奏を融合したスタイルでポスト・パンクの象徴となる。その後、方法論を完全即興演奏に変化させ、1987年、2nd『gunjogacrayon(2nd album)』(DIW)、1994 年、3rd『グンジョーガクレヨンIII』(日本カセット・テープ・レコーヂング)をリリース。以降も同じメンバーで活動を続け、2009年に解散を表明するが、2012 年に完全復活。他のアーティストとの交流も積極的に行い、かつて無く意欲的かつ解放的な演奏活動を展開する。組原は2007 年に1st ソロ・アルバム『hyoi』(PASS/P-Vine)、2012年に2ndソロ『inkuf(DIW/disk union)をリリースし、デビュー当時“パンク版デレク・ベイリー” と評価された特異なギター・プレイをさらに進化させている。(筆「剛田 武」5/21/2014)
Gunjogacrayon HP



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