A Challenge To Fate

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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第8回「第五列と阿部怪異」編

2012年11月28日 02時00分29秒 | 素晴らしき変態音楽


先日JUKE/19の記事を書くために古いFool's MateやMarquee Moonを紐解いていたところ、たいへん興味深い資料を発見した。恐らく1981年7月発行のMarquee Moon Vol.5に添付していたと思われる第五列テープのカタログである。第II期<第五列テープ>と第五列<ブートレッグ・テープ>のリストと解説が載っており入手方法は「第五列各代理人のもとにただ(1)空テープと(2)返信用切手が与えられたとき即ダビングされ貴茎(ママ)のもとに郵送される」という非営利的なものだった。記憶しているのは「Rutherford+Brotzmann+Kowald+Lovens」のライヴ音源をダビングしてもらったことだ。カタログを見ると第五列テープの「5C-EX<なっとう>(通称)<Improvised Works>(本名)/多数収録」というテープのところに印がついている。ということはこれも頼んだのか?当時は他にもいろいろ音源を注文したので覚えていない。

第五列のことは2001年にアルケミー・レコードから2枚のコンピレーションCDが出るまですっかり忘れていた。以下はそのうちの1枚「社長が出せって言えば出すからThe Early Fifth Column INDISCREET MUSIC 1976-1980)」についての"社長"ことJOJO広重さんによる紹介文である:

第五列とは、1970年代後半から1980年代前半にかけて、京都・東京・盛岡などを中心に音楽、詩、美術などに変わった興味を持つメンバーによって活動していた、非常にユニークなグループである。いわゆるバンド、もしくはミュージシャンという形態ではなく、「なにものでもないもの」として第五列は存在しており、ミニコミや、テープ、レコード作品などを発行していた時期もあった。当時の活動を知る人は素来なく、今ではマニアの間で語られる程度の認知度であったが、アルケミーレコードが第五列の初期音源集「社長が出せって言えば出すから(ARCD-128)」としてCDリリースした。
 この第五列は現在も都内で「チヨズ」というユニットで活動をしているgeso氏、盛岡在住のフリー・インプロヴァイザーのオニック氏が中心メンバーとして運営されていたもので、当時京都に在住していた非常階段、ウルトラビデなどのメンバーもセッションに多数参加していた。それらの録音源はこのCDにも収録されており、非常階段結成以前の録音テイクも聞くことができる。 
内容的にはノイズ、アヴァンギャルド、フリージャズなどをベースに、奇っ怪なラジオドラマ、パロディ、騒音などを巻き込んで、得体のしれない不可思議な音世界を構築している。詳細で難解な解説(英語対訳付き)も付録されている。ユニークなアルケミーレコードの作品群の中でも、第五列は最もヘンで極めつけに面白いアルバムと言える。 ーーtext/JOJO広重(Fujiyama HPより転載)

2枚目の「社長は判ってくれない(The Middle Fifth Column SUSPECTE MUSIC 1981-1990)」も併せて広重さんが書いているように本気か妄想か判断出来ない解説は殆ど役に立たない。この2枚に収められた音楽(のようなもの)は現代音楽、即興、ノイズ、プログレのまさに"百鬼夜行"で聴けば聴くほど頭が混乱してくる。すなわち14年のスパンを持ったコレクションにも関わらずどれも古さを感じる余地もなく未知の世界または黄泉の世界を彷徨っているのである。50年代のミュージック・コンクレートだと言われても昨日落合SOUPで録音されたノイズ演奏と言われても信じてしまうほどタイムレスなサウンドである。



ここで思い出すのが吉祥寺マイナー周辺の地下音楽である。それに関してはピナコテカ・レコード特集に詳しいので参照されたい。最近ではガセネタBOX、タコの2枚のアルバムのCD再発およびBOX、大里俊晴BOX、園田佐登志氏のCD2作等がリリースされ全容解明が進みつつある。再版された大里氏の「ガセネタの荒野」、地引雄一氏編集「EATER'90s インタビュー集:オルタナティブ・ロック・カルチャーの時代」さらに「捧げる....灰野敬二の世界」でも知ることが出来る。実際マイナー周辺と関西のどらっぐすとぅあ及び第五列とは人的交流が盛んでメンバーも重なっていたりする。非常階段の「A STORY OF KING OF NOISE」によれば1978年にJOJO広重さんとULTRA BIDEのヒデ氏が"ビデ&ジョジョ"として出演した同志社大学の学園祭に東京から竹田賢一さんのバンドが来て演奏したとある。その橋渡しをしたのが故・渡邉浩一郎氏だったという。渡邉氏の手により吉祥寺マイナー関連アーティストのテープが大量にどらっぐすとぅあに持ち込まれたそうだ。

ピナコテカ・レコードから発売されたカセットのひとつに「阿部怪異」なるバンドの作品があった。1982年5月発行のピナコテカのフリーペーパーAMALGAM#8に紹介がある:

阿部怪異は関西のバンド。メンバーは広重嘉之(JOJO、現 非常階段)、八太尚彦(現 ジュラジューム)、林直樹(現 NG)、猪狩亘(現 Eel Ghost)、美川俊治(現 非常階段他)などである。メンバーはそれぞれ別のバンドをやっており、阿部怪異という名のもとに集まって、本質的にはハイパワー・インプロヴィゼーションを30秒ずつ演るバンドである。<終末処理場(アンバランス)>に入っている全てのバンドからメンバーが集っているというのも、関西の流動的活動の素直さを象徴している。ものすごく大ざっぱに言ってしまえば「非常階段」を30秒ずつ演っていると思えば良い(良いわけがない)。



阿部怪異の音源はヴァニティ・レコード特集のおまけに付けたので聴いてみてほしい。第五列と直接関係があったのかどうかは判らないが、そのごった煮音響に同じ姿勢を感じる。第五列について調べていて凄いサイトを発見した。おそらく中心メンバーの藤本"ゲソ"和雄氏のサイトだと思われる第五列 The Fifth Column。ここには第五列が発表した印刷物、レコード、テープ、CDの一覧が附され、その殆どがダウンロードできる。そこにJOJO広重さんが1979-80年に録音したソロ・カセットがある。たぶんこのカセット以外では発表されていない音源で初期非常階段、ULTRA BIDE、螺旋階段の音源も収録されている。サンプルとして頭士奈生樹氏とのデュオ=非常階段の音源をお聴きいただきたい。





このサイトにはピナコテカ・レコードの最終作「なまこじょしこおせえ/賣國心」が近日CD化予定と書いてあるので期待して待つとしよう。

★伝説の阿部怪異の奇蹟の復活ライヴが開催!!!!
doubtmusic presents 阿部怪異と集団投射



当時メンバーだったJOJO広重さんと美川俊治さんに加え豪腕ドラマー吉田達也さんとBar Isshee店長でバンド共犯者のIssheeさんによる演奏。恐らく広重さんと吉田さんは初共演ではなかろうか?昔の混沌とした音世界が再現されるのか全く新しい音響美学が構築されるのか興味は尽きない。対バンはこれまた日本の前衛音楽シーンに多大な影響を与えた故・高柳昌行さんの意志を受け継ぐ集団投射。究極のコレクティヴ・インプロヴィゼーションが堪能出来る筈だ。多分二度と観られない組み合わせは、もしかしたら今年最狂のコンサートかもしれない。これを見逃す手はないゾ!

阿部怪異
子連れ狼の
キャラクター

それにしてもまだ終わってないけど今年はノイズが大暴れした一年だった。このブログも書き甲斐があるってモノ。
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