私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ベネズエラはどうなっているか

2018-01-18 21:28:30 | 日記・エッセイ・コラム
 皆さんに是非読んでいただきたいコメントを海坊主さんから戴きましたが、『ベネズエラのコミューン運動』(2017年5月17日)というかなり以前のブログ記事に対してなので、ここに転載します:

**********

ベネズエラ人民の闘いは続いています。 (海坊主)
2018-01-12 21:30:48
下記ブログにこの2017年におけるベネズエラの人々の闘いが要約されております。

鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽 
「2017年、ベネズエラ人民はどう闘ったのか①〜③
http://shosuzki.blog.jp/archives/74449281.html
http://shosuzki.blog.jp/archives/74452865.html
http://shosuzki.blog.jp/archives/74465087.html

西側世界の視点から報じられるベネズエラのニュースは偏見に満ちたもので、私には読むに耐えられません。マドゥロ大統領が覚悟を持って自らに課した使命(故チャベスの後継者たれ)に最大限の努力を払って人々を導いていることがこの記事から伺い知れます。

西側世界から異端視されるベネズエラ。闘い続けることを運命づけられたチャベスの子供達。
かなり贔屓目には思える部分は感じますが、私はこれらの記事に触れ、久々に嬉しくなりました。ベネズエラ人民の闘いは続いています。 (海坊主)

**********

私(藤永)にとって、鈴木頌さん、海坊主さんのような方々が、チャベスの子供たちを、我が事として熱い気持ちで見守り、声援を送っている事実を確認させていただくのは、実にありがたいことです。
 鈴木頌さんの「2017年、ベネズエラ人民はどう闘ったのか①〜③」は、中に書いてあるように、もと「モンド・ディプロマティク」の編集総長であったイニアシオ(イグナシオ)・ラモネの筆になる記事:

https://www.telesurtv.net/english/opinion/The-12-Victories-of-Venezuelan-President-Maduro-in-2017-20180102-0009.html

に基づいています。この記事は、私の贔屓のAlexandra Valienteさんの (Libya 360)にも早速(同じ日付けで)アップされました:

https://libya360.wordpress.com/2018/01/02/the-12-victories-of-venezuelan-president-maduro-in-2017/

 鈴木頌さんの三部作は、ラモネの筆になる記事の内容を解きほぐし、まとめ直して、昨年1年間のベネズエラの人々の闘いとその成果を分かりやすく解説した内容で、必読の記事です。ラモネの筆の走りすぎへの注意も込められています。鈴木頌さんの結びの文章は
「残忍な攻撃と果てしない暴力に耐えたこの英雄的な1年に、チャベス主義は強さと生存力を発揮しました。それは支持の基盤を拡大し、革命に有利な政治的および社会的な力を増やすことができました。そこには、これまで以上に強固な確信を抱くに至っています。
2017年におけるベネズエラ革命の勝利と前進はラテンアメリカ全土の救済と希望を意味します。今やベネズエラ革命は決して倒すことのできないものとなっています。」
となっていますが、ラモネの原文は
「In this heroic year of brutal attacks and infinite aggressions, Chavismo has showed its strength and capacity to overcome. It has been able to amplify its base of support, increasing the political and social forces in favor of the revolution. There it is, more solid than ever before. Which means a great relief and a luminous hope for all of Latin America. Whether his enemies like it or not, President Nicolás Maduro has confirmed – with his twelve brilliant victories of 2017- that he continues to be, as his admirers say, “indestructible.”」
です。
 2017年で、チャベス革命を推進する一般人民の力を断然明白に示したのは、二つの地方選挙の結果でした。それは鈴木頌さんの記事②の中で説明されていますのでコピーします:
**********
11.二つの選挙での勝利
制憲議会とともに「平和の季節」がやってきました。それはベネズエラ革命が反革命主義者に政治的反撃を加えるチャンスを与えました。
その反撃は一斉地方選挙で2つの驚異的な選挙勝利をもたらしたのです。
(ベネズエラの一斉地方選挙は日本と同じで4年に1度行われます。前半と後半の2回に分けて行われ、はじめが州知事と州議会の選挙、次が市町村の長と議員の選挙です。制憲議会選挙と違いこちらの選挙は野党も参加しています)
まず最初が10月15日の地方選挙です。州知事選挙では23人の知事のうち19人が与党PSUVの勝利に終わりました。
そこにはこれまで野党が知事を務めていたミランダ州とララ州も含まれていました。また大きな人口学的重要性を持つ戦略的州であり、石油とガスの重要な資源があるスリア州(マラカイボ湖)でも勝利しました。
ついで12月10日の自治体選挙でもチャベス派が圧勝しました。首長選では335の市区町村のうち308で勝利しました。これは市町村の93%を占めています。
大カラカス首都圏は24都市よりなっていますが、チャベス派はこの内22都市を確保しました。いっぽう反政府派は得票数が激減し、21万票を失いました。彼らの行動は多くの国民から非人道的と認知されました。そのことが投票行動によっても確認されたといえます。
**********
これは、米欧(日本を含めて)のマスコミだけに接している人々には何とも理解できない結果です。ベネズエラを崩壊寸前の状態に追い込んでしまったマドゥーロ大統領の破滅的失敗政府への支持がこれほどまでに強いという事実を説明する手がかりは、マスコミの何処にも見当たらないからです。
 しかし、私はこの地方選挙の結果に特別驚きはしませんでした。この地方選挙圧勝の理由はベネズエラのコミューン運動の盛り上がりにあると私は考えます。ベネズエラのコミューン運動については、海坊主さんから今回新しくコメントを戴いた『ベネズエラのコミューン運動(1)』(2017年5月17日)というブログ記事の中で論じました。その部分を次にコピーします:
**********
次の『Venezuelan Revolutionaries Demand ‘Truly Communal State』と題する記事をぜひ覗いてみて下さい。ベネズエラのコミューン運動の最近の動きが分かります。ビデオもあります。

https://venezuelanalysis.com/news/13123

現在、人口3100万のベネズエラに、約4600の生活共同体協議会(communal councils)と約1600のコミューン(communes) があります。communal council というのは、ある地域社会の生活上の必要事項を、行政からの指図ではなく、住民たちが相談し、対処するための協議会であり、こうした協議会を持つグループがいくつか集まって、より大きな生活共同体が出来ると、一つのコミューンが成立します。このコミューン運動に参加している人々の数はおそらく総人口の1割ほどでしょうが、私には、この運動の盛り上がりは、ベネズエラの政局の将来を左右する力を秘めているように思われてなりません。
************
 これまで私は「もう一つの世界」が実現される希望を「ロジャバ革命」にかけてきましたが、米国は私の夢を打ち砕く方向に決定的に踏み出しました。ISの勢力地域をそっくりSDFの占領地にすり替える形で米国の支配下に置いたシリア北東部の広大な地域を制圧し続ける軍隊として3万人に及ぶ border security force(境界警備部隊?)を創設することを、米国は言明しました。これで、シリア紛争という悲劇はまだ延々と続くことになりましたが、その結末がどうなるにしても、これは、私の「ロジャバ革命」の死刑宣告以外の何物でもありません。ここにあらわにされた米国の全く悪魔的な残忍さについては、機会を改めて取り上げますが、クルドのロジャバ革命に替わって、ベネズエラのコミューン運動の興隆が私の「もう一つの世界」の夢を支え続けてくれるかもしれません。ちなみに、“もう一つの世界は可能だ”という言葉はイグナシオ・ラモネ(Igunacio Ramonet)が1998年に発したもののようです。

藤永茂(2018年1月18日)
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

1ドルで人を殺せる世界がやってくる

2018-01-14 23:00:17 | 日記・エッセイ・コラム
 2018年1月10日の日本経済新聞(電子版)によれば、2017年11月、人工知能(AI)が判断して動かす兵器に関する初の国連公式専門家会議がスイスで開かれて、そこで「「殺人ロボット」を防げるか」という問題が議論され、「野放図なAIの開発競争は1ドルで人を殺せる世界をもたらす」ことに危惧が表明されたそうです。
 「1ドルで人を殺せる世界」とは妙な表現です。「お手軽に人を殺せる世界」ということでしょうか? そうではありますまい。一人当たりの費用が大変安上がりな殺人手段を実行するのに人工知能(AI)の力を借りる必要は全くありません。現在、すでに可能であり、実行されています。気に入らない外国に対して米国が率先して実行する経済制裁、貿易封鎖はそのもっとも身近な手段の良い例です。米国の国連大使、続いて、国務長官を務めたマデレーン・オルブライトがイラクに対する経済制裁という手段で50万人のイラクの子供達を殺したのはよく知られた事実で、これについては以前にこのブログにも書きましたが、以下にはウィキペディアの記事の一部を転載させて貰います:
“1996年、CBSテレビ『60 Minutes』に出演して、レスリー・ストールから対イラク経済制裁について“これまでに50万人の子どもが死んだと聞いている、ヒロシマより多いと言われる。犠牲を払う価値がある行為なのか?”と問われた際「大変難しい選択だと私は思いますが、でも、その代償、思うに、それだけの値打ちはあるのです」(“I think that is a very hard choice, but the price, we think, the price is worth it.”)と答えた。なお、オルブライトのこの発言を腹に据えかねた国連の経済制裁担当要員3名(デニス・ハリデイ、ハンス・フォン・スポネック、ジュッタ・バーガート)が辞任。このうちハリデイは「私はこれまで(対イラク経済制裁について)“ジェノサイド”という言葉を使ってきた。何故なら、これはイラクの人々を殺戮することを意識的に目指した政策だからだ。私にはこれ以外の見方が出来ないのだ」とコメントを残している。”
オルブライトは国連内での外交的根回しにいくばくの事務的費用を費やしたかもしれませんが、50万ドルはかからなかったでしょう。1人当たり1ドル以下の殺人です。核弾頭についても、この安値レベルはとっくの昔に到達済みです。
 兵器の開発製造に関与している専門家が心配しているのは、人工知能(AI)を使用した安価で高性能な暗殺用ロボット(キラーロボット)の出現でしょう。しかし、公式には、この問題は表面化されていません。例えば、次の記事をみてください:

https://thebulletin.org/don’t-fear-robopocalypse-autonomous-weapons-expert-paul-scharre11423

この中で、兵器の持つ抑止力(deterrence)についての議論が行われていて、「When you think about deterrence, I think of the general concept of, "I'm stronger, more powerful," and that may deter you.」といったことが述べられていますが、北朝鮮の核兵器保有の問題だけを考えても、これは無内容の擬似的常識論に過ぎません。
 現在、世界的に見て、「殺す側」と「殺される側」との間には、相手を暗殺することの難易に絶大な隔たりがあります。現在、支配権力側は、その意向に反抗する人物を抹殺する充分の手段と実行力を持っていますが、被支配者側にはそれが殆んど全く欠如しているのが実状です。しかし、人工知能(AI)技術を応用して、遠隔操作あるいは自己判断で正確敏捷に行動する高知能の超小型ロボットが比較的安価に出来るようになれば、暗殺の実行は「殺される側」にとって大幅に容易さを増します。つまり、「殺す側」の個人が「殺される側」によって暗殺される可能性が大幅に増大するということになります。この形で、弱者は強者の恣意な殺人行為に対する貴重な抑止力(deterrence)を入手することになります。
 2016年3月3日、ホンジュラスの先住民環境保護運動家ベルタ・カセレス(Berta Cáceres)さんが生地ラ・エスペランサの自宅で暗殺されました。殺し屋は早朝に乱入してベルタ・カセレスさん(43歳)を銃殺しました。彼女は環境保護運動家として既によく知られた存在でしたが、殺された直接の理由は有力な電力会社の水力発電ダムの建設への熾烈な反対運動の先頭に立っていたことにあると考えられます。彼女は殺害される1週間前、彼女の属するレンカ族先住民共同体の指導者4人が殺害されたことに対する告発を行い、また、彼女自身もやがて暗殺される予感を語っていました。
 2016年5月8日、ホンジュラス裁判所はベルタ・カセレスさん殺害の実行犯容疑者の名前を発表しました。この事件についてはDEMOCRACYNOWのサイトその他に多数の資料があります。下の記事は

https://www.democracynow.org/2017/11/1/shocking_new_investigation_links_berta_caceress

ダムの建設を進めている電力会社の最高幹部が暗殺の指令を出したことを示唆しています。次の二つの記事も参照してください:

https://www.democracynow.org/2016/3/4/remembering_berta_caceres_assassinated_honduras_indigenous

https://www.pambazuka.org/land-environment/¡berta-lives-life-and-legacy-berta-cáceres

ホンジュラスに限らず、南米の先住民の居住地域は米國を主とする国際資本による強引な資源開発が行われ、それに抵抗する先住民の反対運動の指導者たちが、これまで総計すると数百人のオーダーで暗殺されているようです。
 ここで「殺される側」である先住民たちの環境破壊反対運動組織が、「殺す側」の目ぼしい連中を確実に暗殺できるキラーロボットを安価に入手し、安価に使用できる状態がAIテクノロジーの飛躍的発達のお蔭で実現したらどうなるか、想像して見ましょう。ベルタ・カセレスさんに率いられて無法なダム建設に反対の運動をしている先住民レンカ族の中に気性の激しい人工知能オタクの若者がいて、ベルタ・カセレスさんの暗殺の命令をしたと推定される電力会社の幹部をAIキラーロボットで殺します。あるいは、若者は現在のホンジュラスの諸悪の元凶、責任者として、2009年のクーデターを率いたロメオ・バスケス将軍を暗殺することを実行するかもしれません。今まで、自分の方は全く危険にさらされることなく、邪魔者を消すことが出来た「殺す側」の有力者たちは、“これはまずいことになった。こちらも簡単に殺されるかも”と思って怯えるに違いありません。つまり、「殺される側」は強力な「抑止力」を持つことになります。これはまさに“貧者の原爆”と呼んでよいでしょう。
 このように使用される高性能のAIキラーロボットは、「殺される側」に襲いかかる理不尽な暴力に対する抑止力として、極めて有効に働くと思われます。それに比べて、核兵器の持つ「抑止力」は全く役に立っていません。核兵器の「抑止力」は第二次世界大戦後、“戦争”の勃発を抑止してきたという戯言を口にする人もいますが、それは全くの嘘言です。第二次世界大戦の後、戦争は間断なく行われていて、世界で数百万の無辜の生命が失われてきました。いや、それでは余りにもの過小評価というもの、コンゴだけでも、死者は六、七百万人に上り、殺戮は今も進行中です。殺され続けているコンゴの一般民衆側が、このような暗殺手段を入手して、コンゴ大統領カビラ、ルワンダ大統領カガメ、ウガンダ大統領ムセベニの三人の同時暗殺に成功すれば、その衝撃で、コンゴ・ジェノサイドは終りを迎えるでしょう。
 しかし、説明するまでもありませんが、そのような超小型ロボットの研究開発を大々的に進める傾向は世界の兵器産業界では全く見られません。秘密裡に開発していることもない筈です。むしろ、その開発を制御扼殺したいのが本音でしょう。世界中のSHITHOLE COUNTRIESの貧者たちが“貧者の原爆”を持つことになったら大変ですから。

藤永茂(2018年1月14日)
コメント (1)
この記事をはてなブックマークに追加

トルコにも負けず、アメリカにも負けず、・・・

2018-01-07 22:29:07 | 日記・エッセイ・コラム
 ロジャバ革命については、これまでHitoshi Yokooさんから数多くのコメントを頂いています。ロジャバ革命への強い支持のお気持ちとロジャバ革命に関する重要な情報が読み取れますので、皆さん是非Hitoshi Yokooさんのコメントを読んでください。ご自身の言葉を少し引用させて頂きます:
**********
ロジャバ革命の特長は、女性の解放を優先し、民族や宗教の共存を求めるところにあります。「女性の解放」と「共存の思想」に基づくロジャバ革命もまた、旧来の革命運動に見られない雰囲気を醸し出している様に感じます。「反革命であるブルジョア階級を打倒しプロレタリア独裁政権を打ち立てる革命運動」とは、何か根本に於て異質ではないかと感じられるのです。彼らは、ISISとの死闘を演じながらも、彼らの内側では大きな抗争を起こす事なく革命運動を持続しています。外から参加しているトルコのマオイストやアナキストも内部抗争を起こす事なく連帯し続けています。「共存の思想」は、革命運動参加者の中にも浸透して、革命観を異にする参加者同士の共存さえ可能にしているのかも知れません。スペイン革命は内部抗争によって内からも崩壊していきましたが、ロジャバ革命にはその様な兆候は見られません。

「幼児性の復権」、「女性の解放」、「共存の思想」、「環境の維持」等、現代の注目すべき変革運動は、旧来の勇ましい男性原理の運動とはまるで異質な運動なのではないでしょうか。クルド人が横一列に並び手を繋いで踊る動画をよく見ますが、ロジャバ革命の性格は、あの踊りのなかに体現されている様に思われます。
**********
Yokooさんが紹介してくださった記事で重要なものの一つはErcan Aybogaという人の書いた長い解説記事:

https://anfenglish.com/features/geopolitics-of-syrian-kurds-and-military-cooperation-with-the-us-23467

です。著者は『 Revolution in Rojava: Democratic Autonomy and Women’s Liberation in the Syrian Kurdistan 』(Pluto Press, 2016)の三人の著者の一人で、自らもロジャバ革命を推進している人物のようです。この本は、今、本屋で入手できるロジャバ革命関係の本で最も詳しい著作で、著者たちは革命の成功を願っているに違いありませんが、宣伝のための美化歪曲は決して度を過ごしたものではないと、私は判断しています。上掲の記事についても同じことが言えます。この記事と単行本『ロジャバの革命』の内容的な違いの一つは、米国とSDFの関係についての説明です。共著ではほぼ一頁が当てられただけですが、Ayboga単名の記事では冒頭に、“critics think that the SDF is already instrumentalized by the US and has betrayed the revolution.”と書いてあり、この重要問題が全面的に取り上げられています。
 Yokooさんが紹介してくださった『ROJAVA: A Utopia in the Heart of Syria’s Chaos(ロジャバ:シリアの混沌のど真ん中のユートピア)』というタイトルのTouTube動画;

https://www.youtube.com/watch?v=uQh8aRVJnY4

も我々がロジャバ革命を知るために有用なドキュメンタリー(45:34の長さ)で、最後の三分間にはクルドの女性軍団YPJの司令官が米国との関係を論じているインタビューが含まれています。その女性司令官(Nasrin Abdallah)の発言を要約すれば、次のようになります:
「今のところ、米国から受けているのは軍事的援助に限られていて、経済的な援助も、政治的援助も全く受けていない。ダマスカスがロジャバ革命を受け入れるかどうかは不明だが、どんなことでも起こりうると思う。もし、アサド政権が民主的になり、選挙への道を開き、シリアで民主主義的政策を実行すれば、我々は戦争の手段を選ばない。しかし、不幸にも今までのところアサド政権から何の前向きのジェスチャーも示されていない。我々の主要な目標は民主的連邦制(democratic federalism)を成就することだ。そうなれば、誰もが解放され、その権利を享受できるようになる。我々はこの計画を国民国家(a nation state)の中で遂行するつもりはない。何故ならば、現在の中東ではすべての国民国家が崩壊しつつあるからだ。革命を経験した国の一つが將にシリアなのだ。もし、民主的な連邦システムができていたのであったならば、戦争など起こらなかっただろう。」
クルドのこの女子司令官の意気軒昂たる発言を私は好意的に受け取りたいと思います。そして、ロジャバ革命が究極的に成功することを祈る点で人後に落ちないつもりです。このYouTubeのフィルムにはHitoshi Yokooさんから寄せられた一連のコメントを中心に勇気付けられるやりとりが展開されています。ぜひお読みください。
 しかしながら、この記録映画の全体のトーン、特に終末のYPJ司令官の発言で、「現在の中東ではすべての国民国家が崩壊しつつあるからだ。革命を経験した国の一つが將にシリア」という件りはちょっと引っかかります。崩壊に瀕している国々とは、アフガニスタン、イラク、リビア、シリア、イエメン、・・を意味するとすれば、尚更です。私の個人的危惧はこの『ロジャバ:シリアの混沌のど真ん中のユートピア』というドキュメンタリーの制作がフランスの「モンド・ディプロマティク」であることから発しています:

https://mondediplo.com/2017/09/05rojava

昔、イニアシオ・ラモネが編集長であった時代の「モンド・ディプロマティク」誌を私は好んで読んだものでした。しかし、現在の「モンド・ディプロマティク」はラモネの路線上にはありません。明らかにNATO-USA路線上にあります。そのことは、上記ドキュメンタリーの制作の元である記事の記者(二人)と同じ人たちによるシリア報告:

https://mondediplo.com/2017/09/12kurds

を読んでも見当がつきます。簡単に言えば、フランスを含むNATO-USAは、依然として、アサド政権のシリアがカダフィ政権のリビアと同じように崩壊することを今もなお望んでいるのであり、「モンド・ディプロマティク」は、米国のニューヨークタイムズやワシントンポストほどではないにしても、NATO-USAのご機嫌を損ねないように心がけている報道機関に成り下がっているように、私には思われます。
 ANFはオランダのアムステルダムに本社のある報道機関でPKK(クルド労働党)との結びつきが強いと考えられます。その英語版サイトを私は毎日のように覗いています。Yokooさんが紹介してくださったErcan Aybogaの長い記事もANFの英語版サイトに出たものです。最近(1月2日付)このサイトに
『PKK’s Engin: “We will continue to be Che’s followers”』
と題する記事が出ました。PKKの中央委員会のメンバーであるKasım Engin氏がキューバ解放記念日(1月1日)を機にANFに語った談話がその内容です。キューバ革命を支えた精神を讃え、チェ・ゲバラの伝統に従って、クルド人の若者たちがゲリラ戦に進んで身を投じることを促しています。次の文章でこの記事は結ばれています:
**********
PKK Central Committee Member stated that Öcalan and the PKK movement he leads are followers and comrades to Che. He stressed that the guerrilla tradition of Kurdistan is the same as the guerrilla tradition of Che Guevara, and adding that the guerrilla is the only solution to fascism, imperialism, capitalism and all forms of regressive ideologies, called on the youth of Turkey and Kurdistan to join the guerrilla to create a free life, the free human being and a world without exploitation.
**********
ここに披瀝されたオジャランの精神をPKKが燃やし続ける限り、米国のシリア政策(中東政策)遂行のためのinstrument(道具、手段、手先)としてのSDFの現在の役割をSDFが米国に対してきっぱりと拒否する時点が必ず到来するはずです。ロジャバ革命の推進者たちが強調するように、SDFの支配地域はSDFの武力によって拡大しているのではなく、土地の住民たちがロジャバ革命の理念とその実践に賛同し、参加することによって拡大しているのであれば、SDFとUSAの連帯決裂の時点で、我々は世界史的な大事件に立ち会うことになります。その規模において、これはパリ・コミューンの比ではありません。意識的に民族主義を排している点で、このコミューン思想はバスクの自治体運動を大きく凌駕しています。
 もう一度、このブログ記事の冒頭に引用させていただいたHitoshi Yokooさんの発言を読んでください。新年の初頭に当たって、我々の頭上にのしかかってくるニヒリズムの暗雲を振り払うものとして「ロジャバ革命」に勝る話題はありますまい。

藤永茂(2019年1月7日)
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

裏切り者(traitors)

2017-12-27 22:22:17 | 日記・エッセイ・コラム
 これまで、シリアのアサド大統領はクルド人問題について、私の知る限り、ほとんど全く言及してなかったのですが、ここに来て(12月18日)、米国の支援を受けているクルド人軍事勢力を「裏切り者(traitors)」と呼びました。多数の報道記事がありますが、シリア政府に最も近いと思われる「シリア・タイムズ」の12月18日付の記事によると、アサド大統領の発言は
**********
"Whoever works under the leadership of a foreign country against his country, his Army, and his people is a traitor, especially those who work with the Americans."(誰であれ、彼の国、彼の軍隊、彼の国民に逆らって、外国の統率下で動いている者は裏切り者だ、特にアメリカ人たちと一緒にやっている者たちは。)
**********

http://www.syriatimes.sy/index.php/presidential-activities/34024-those-who-support-terrorism-have-no-right-to-talk-about-peace-president-assad

といった風になっています。この記事でアサド大統領はロシアとの関係を主に論じていて、来年1月に予定されているソチ会議について「(この会議では)シリアの憲法が、現在の憲法のままでで良いのかどうか、改訂を必要とするのかどうか、シリアは新しい憲法を必要とするのかどうか、を議論する」として、「もし、改訂されることになれば、それに基づいた選挙が行われる」ことを強調しています。この長い記事の中で「クルド」という言葉は一度も出ていません。
 しかし、アサド大統領の発言で“アメリカ人たちと一緒にやっている者たち”というのがクルド人部隊(YPG-YPJ)を主体とするSDFを指しているのは明白ですから、他の報道機関は陽にクルドの名をあげた記事を掲げました。例えば、イランのプレスTVには:

http://www.presstv.com/Detail/2017/12/18/546047/Syria-Russia-US-Bashar-alAssad-Dmitry-Rogozin-YPG-Daesh-economy

“All those who work under the command of any foreign country in their own country and against their army and people are traitors, quite simply, regardless of their names, and that is our evaluation of the groups that work for the Americans in Syria,” President Bashar al-Assad said on Monday, responding to a reporter’s question about Kurdish activities, according to state media SANA.

となっています。

 シリアのクルド人たちについての、アサド大統領の初めての公式の敵対発言に対するSDF(YPG-YPJ)側からの反応は迅速かつ激烈でしたが、真の含意をはっきり読み解くのは困難です。どの発言にも、すでに米国の息がかかっている気配が感じられるからです。関係記事は多数目につきますが、その主な主張傾向の一つは、(1)もともとアサド大統領こそがシリアの住民を裏切る独裁者であり、彼の方こそ「裏切り者」だというものです。例えばSDFの声明:

http://en.hawarnews.com/sdf-we-are-one-who-overthrew-treason-al-assad-is-last-to-speak-of-betrayal/

この「裏切り者」という言葉ですが、裏切りとは、以前に志を同じくしていた筈の人間集団の仲間内で生じる現象であることを忘れないようにしたいものです。
 二番目の主張は、(2)アサドはトルコを助けている、というものです:

https://anfenglish.com/features/democratic-federation-s-response-assad-plays-with-fire-23739

https://anfenglish.com/rojava/foza-yusif-assad-s-accusation-against-kurds-serves-turkey-23756

アサド大統領の「裏切り者」発言に対する反論として、「アサドはエルドアン大統領と“ぐる”になっている」と断定するのは明らかに馬鹿げたことですが、この(1)と(2)の主張の背後に米国の言論操作の影を私は見ます。
 三番目に注目すべきは、SDF(YPG-YPJ)側が表明する、(3)SDFが占領した地域を守りぬく、という決意です。これはよく注意して接しなければなりません。例えば次の記事です:

https://anfenglish.com/rojava/people-of-tabqa-respond-to-assad-we-are-all-sdf-fighters-23875

これは、SDFがIS を追い払った北部の要衝タブカで、12月26日、行われた「アサドの裏切り者発言に対する抗議集会」の報道ですが、要点は「ISが攻め上がって来た時にはアサドはタブカの住民を見捨てて遁走したが、やっとSDFがやってきて我々を救ってくれた。今や我々すべてがSDFだ」というものです。このブログでも以前取り上げたことですが、トルコと米国がアサド政権を痛めつける手段としてISを支持し利用していたことは、少なくとも、SDF(YPG-YPJ)の幹部たちには分かっている筈と思われます。ラッカで表面化したこの事実は、タブカの攻略戦でもすでに存在していた可能性が十分あります。
 タブカでのこの抗議集会の声明では、次のように、クルド人だけでなく、他のすべての人々も SDFを一致して支持することが強調されています:
**********
“We strongly condemn Bashar Assad’s immoral comments that accuse our forces of treason. The whole world knows that these forces are fighting against terror in Syria and enable the unity of Syrian people. Kurds and Arabs are working together, having fought in the same emplacements in Tabqa.
Those who label Syrian Democratic Forces “traitors” do also label Kurds, Arabs, Syriacs and Turkmens “traitors”. We state that we will give our struggle with the Syrian Democratic Forces that we support.
Bashar Assad’s irresponsible comments aim to deepen the crisis in Syria.
We all know that the Syrian regime conducted attacks, too, while the Tabqa city faced terror attacks. The regime abandoned Tabqa city into the hands of gang groups that later handed the city over to ISIS gangs. After a long while, Syrian Democratic Forces came to our rescue. There are hundreds of young women and men from Tabqa in SDF ranks. Those young people liberated our city with their blood, paying the heaviest price. For this reason, we do not accept Assad and others labelling such a force “traitor”.
On this basis, we declare that we will continue working with the Syrian Democratic Forces under the Syrian Democratic Council where our children are present. All together, we will build a Syria on the basis of peoples’ brotherhood, that involves all peoples and faith groups.
We call on all segments to unite around Syrian Democratic Forces. We are all SDF fighters.”
**********
 現在、実質的に米軍指揮下にあるSDF(YPG-YPJ)勢力の支配する地域の面積はシリア全土の面積の30%近くになっています。SDFの幹部たちがどのような言葉を使うにしろ、これは米国がシリア国内で不法に占領している地域です。米国がSDFの軍事力を利用して、このままこの不法占領を続けるならば、シリア戦争は終結することなく、だらだらと継続することになります。
 私としては、シリア北部のロジャバのクルド人がロジャバ革命の理念を堅持しながらも、スペイン北部のバスク地方(ゲルニカの町はそこにあります)の人々と同じように、今のシリアの国土の中で大幅の自治権を獲得して、とにかく今のシリア戦争が終焉することを強く希望します。
 ロジャバ革命については、Hitoshi Yokoo さんから、これまで有益なコメントを数多く頂いています。次回には、そのことについて私の思いを綴ってみることにします。

藤永茂(2017年12月27日)
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

アサド大統領に物申す:ロジャバを救いなさい(3)

2017-12-18 20:34:07 | 日記・エッセイ・コラム
 シリアの人々の苦難はまだ長く続くことになります。平和な生活の日々の到来は遠い未来の中に霞んでいてまだ見通しがつきません。当面、最大の問題は、米国がISとSDFを操ってシリア国土内に獲得した米国の勢力圏をどうするかということです。そして、私の最大の関心は「米国とイルラエルはロジャバ革命という革命的現象に対してどのような政策をとるか?」にあります。
 ロジャバ革命の思想的最高指導者は勿論アブドゥッラー・オジャランその人ですが、1999年以来トルコ政府によってイムラル島の独房に隔離されて、この2年ほど、外部との連絡は全く絶たれています。現在のロジャバ革命勢力の政治的な決断は集団的に行われていると思われます。オバマ政権とYPG/YPJ/PKKとの間でどのような取引が行われて、YPG/YPJが、SDFという呼称でシリアでの米国の代理地上軍の役を引き受けたかについては、多数の憶測はあっても、真の真相は明らかになっていません。しかし、ロジャバ革命勢力にとって、この決断が苦渋に満ちたものであった事に間違いはありません。ISとそれを殆ど大っぴらに支持するトルコから身を守るための唯一の選択であったのではないかと私は推測します。ロジャバ革命勢力の指導者とみなされる人々の発言には米国から受けた大きな軍事的支援に直接感謝する文言が見当たりません。ただ、米国としては、トルコ(エルドアン大統領)の不興は買ったにしても、ISが占領していたシリア内のかなり広大な土地(石油埋蔵地域)をSDFの占領地に肩代わりをさせる事で、米国はシリアの今後について堅固な発言の足場を確保したのは事実です。国際法的には全くの違法行為ですが、米国は、そんなことは歯牙にもかけていません。米国は、シリア東部の“占領地域”でラッカから救出移動させた旧IS軍兵士を再訓練して、アサド政府軍との戦いを続行しようとしているとさえ報告されています:

http://www.presstv.com/Detail/2017/12/17/545892/Daesh-Syria-Iraq-Putin

https://syria360.wordpress.com/2017/12/16/us-creating-new-terrorist-army-in-southern-syria/

 私は、SDFの支配地域(つまりシリア内の米国支配地域)でYPG/YPJ/PKKがロジャバ革命の思想に基づくコミューン的自治組織と社会制度の設立に懸命の努力を続けていることを重視したいと思います。そして、ロジャバ革命の思想を広げようと努力しているクルド人たちは、何よりもまず、極悪なISをシリア国内から排除することを目指していて、その点ではロシア政府、イラク政府、シリア政府との協力も進んで行っています:

https://www.rt.com/news/411945-syria-kurds-russian-support/

https://anfenglish.com/news/sdf-iraqi-army-to-establish-joint-coordination-center-at-border-23591

https://anfenglish.com/news/sdf-commander-we-are-in-harmony-with-iraq-for-border-security-23682

上の最後の記事は次の文章で結ばれています:
********************
“OUR DOOR IS OPEN TO ALL”
Qamişlo said: “Our door is open to all. We are prepared to offer any kind of help to develop solutions to the present issues in Syria with anybody in or outside of Syria, with neighboring countries, domestic powers and forces fighting against terror, on the basis of the interests of the peoples.”
********************
ここで、ロジャバ革命を推進しているシリア北部のクルド人たちは、イラク北部の(マスード・バルザニ大統領下の)クルド人たちと違って、クルド人国家の設立を目指してはいない事に注目しなければなりません。オジャランの革命思想の中心には民族国家設立の希求の放棄、諸民族、諸宗教、諸文化の共存の必要性が置かれています。ロジャバ憲法には、現在のシリア国家の領土の枠を尊重することがはっきり書き込まれているのは以前に報告した通りです。
 シリアをめぐる政治状況は極めて流動的でその近未来は見通すのが困難ですが、国家としてのシリアがロジャバ革命の望むような形態に移行するのはなかなか困難であろうと思われます。例えば、Dmitry Minnという人の論考:

https://syria360.wordpress.com/2017/12/12/why-syria-would-not-survive-a-transition-to-a-federal-system/

によれば、アサド大統領はシリアを民族と宗教に基づいた自治的行政地区の連邦国家に変化させることにはっきり反対の立場をとっているとされています。最近(11月)首都ダマスカスで行われた「Arab Forum on Confronting the US-Zionist reactionary Alliance and Supporting the Palestinian People's Resistance」というフォーラムの出席者たちとの会合で、アサド大統領は汎アラブ主義(pan-Arabism)という考えの重要性を強調しました:

http://syriatimes.sy/index.php/speeches/33511-president-al-assad-hitting-national-belongingness-weakens-defense-line-against-cultural-invasion-attempts

現在のシリア国家と汎アラブ主義との連関には長い歴史がありますが、アサド大統領は「汎アラブ主義の考えは民族概念を超えるものだ」と言います:
“It is necessary now to refute the ethnic concept. There are people who talk about federalism, nationalism, and federalism on national basis. We have to assert that the concept of Arabism is an inclusive civilized concept that includes everyone, which means that Arabism is greater than being ethnic, the cultural concept includes everyone, includes all ethnicities, religions, and sects,”
民族として、アラブ人とクルド人は区別されます。ロジャバ革命の革命概念によれば、それぞれの地域で出来上がるコミュニティー(コミューン)の性格はその地域に住む多数派民族によって自然に左右されるでしょうが、多数派が少数派を抑圧することは許されません。例えば、コバニはクルド人の町ですが、米軍の指導支援下でSDFが占領したラッカ(ISの元の首都)は、クルド人ではなく、アラブ人住民が多数派です。ラッカをロジャバのクルド人が圧政的に支配することはロジャバ革命の革命概念の許すところではあり得ません。
 アサド政権側の発言者として注目すべき人物に、Bouthaina Shaabanという女性がいます。アサド大統領のトップの側近の一人だと思われます。その11月7日の発言:

https://southfront.org/assads-top-advisor-what-happened-in-iraqi-kurdistan-should-be-a-lesson-to-the-sdf/

では、シリア国領土内にあるトルコ軍勢力と米国軍勢力は「不法侵略軍」と見なしていることを明言し、いま米国軍の統率のもとにあるSDFが占領しているラッカをシリア政府が取り戻す決意を表明しています。シリアの人々に平和な日々が戻ってくるのは、まだまだ先のようです。しかし、ロジャバ革命の憲法(憲章)(あるいはオジャランの思想)とアサド大統領の汎アラブ主義思想には共通する思想的成分が十分に含まれていると私は考えます。そこに私は最後の希望をかけたいと思うのです。
 最近(11月16日)の外交問題評論誌「FP, Foreign Policy」
#The Kurdish Explosion Is Unleashing Demons(クルド問題の爆発はディーモン達を解き放つ)#
と題する論評が出ました:

http://foreignpolicy.com/2017/11/16/the-kurdish-explosion-is-unleashing-demons/

結論は刺激的ですが、米国の政治評論の痛々しい貧しさが露呈しています:
********************
The fuse has been lit and further explosions are likely. The breakdown in state control in Iraq and Syria has led Kurdish groups in both countries to take dangerous and precipitous moves in pursuit of their national ambitions. These moves will be met with force from the governments of Turkey, Syria, Iraq, and Iran, who believe their border — if not their national existence — is at risk. A responsible U.S. policy would be to pursue de-escalation and to make clear to all parties, but especially the PYD-YPG, that the United States will not condone or accept challenges to the status quo.
********************
トルコ、シリア、イラク、イランをめぐる現状に対する挑戦を米国は容赦しないことを、とりわけロジャバのYPG/YPJによく分からせるようにしろ、という勧告は、的外れも甚だしく、また、ロジャバ革命に対する死刑宣告とも受け取れます。この暴論あるいはナンセンスに対して、ロジャバ革命勢力としてのYPG/YPJは見事な論駁を展開しました:

https://anfenglish.com/features/democratic-federation-of-northern-syria-a-challenge-to-status-quo-23592

その結語の部分を下に掲げます。an alternative とあるのは、米国が採用すべき「クルド問題」に対する政策としてFPの論者が唱える“現状維持”に対する代替を意味します:
********************
The Democratic Federation of Northern Syria presents an alternative-- one that has survived and grown under adverse conditions. Its constitution structurally empowers women and ethnic minorities. Its military force is not only the most effective force against the Islamic State, but is also responsible for the fewest civilian casualties of any major party to the conflict. Outside powers did not impose its democratic system. Rather, it was developed by and for the people it serves—which gives it far greater legitimacy than the democracy imposed through occupation that so often follows outside interventions. It provides a model for all oppressed groups in the region to look to, and an alternative to dictatorship and intervention in a region whose people have seen too much of both. A responsible international policy would be to continue to support it, and to end support for the regimes that oppress the people of Rojava and of all four parts of Kurdistan.
********************
 私には国際政治評論家の振りをするつもりも、未来の予言を試みるつもりもありません。程なくこの世界から決別する一老人として、この人間世界の未来が今よりも生きやすい和やかなものであってほしいと願っているだけです。
 これからのシリアについては、現大統領のバッシャール・ハーフィズ・アル=アサドに私の希望をかけています。元々は政治軍事に関心が薄い穏やかな性格の男で、父親の後継者とみなされていた兄が交通事故でなくなったので、眼科医としてのロンドン留学を途中で断念してシリアに帰国し、シリアの指導者としての父親の後を継ぎました。私はアサド大統領のこの経歴にも興味を感じますが、この人物に関する私の気持ちと判断は、私がこれまで接した多数の講演やインタビューの録音内容の全文(英語訳)から来ています。インターネットという便利なもののおかげで、こちらが求めれば、そうした資料を、時間的にも数年という十分長い時間にわたって、大量に入手することができます。他の例をあげれば、バラク・オバマ、私はこの人物の発言の数々に大統領就任以前から接しはじめ、早い時期に「稀代のコン・マン」と位置づけましたが、それからの十余年、この位置付けの正しさを確認し続けて現在に至っています。私は「文は人なり」という言葉を信ずる者の一人です。
 バッシャール・ハーフィズ・アル=アサドは、これまで、残忍非情な独裁者ではなく、将来もなり得ません。天才的ではなく凡人的ですが、真剣に正確に物事を考える十分の知性と人間らしい感性の持ち主です。個人としては、ロジャバ革命を推進するクルド人たちの心情と熱意と決意を充分理解している筈だと私には思われます。
 ロジャバは北部シリアのトルコとの国境線に沿って東西に並ぶ三つのカントン(行政区画、県のような)、西からアフリン、コバニ、ジィジラ(Afrin, Kobanî, Cizîrê )、からなっています。シリア紛争の結果、コバニとジィジラの二つのカントンはうまく繋がりましたがアフリン地域とコバニ・ジィジラ地域との間にはトルコ軍が北から南に越境進出してロジャバは二つの部分に分断されています。現在、トルコ軍はアフリン地域に侵攻して占領することを目論んでおり、また、コバニに対しても攻撃をかけています。トルコはロジャバ革命に引導を渡したいのです。潰してしまいたいのです。このあたりを中心に今後のシリア情勢は展開すると思われます。米国とイスラエル、それに対する、ロシア、イラン、イラク、それにトルコがどう動くかによって、シリアの近未来は決められるのでしょうが、私が信を置くアサド大統領が、北からの侵入したトルコを北に押し返し、国境線に沿って、アフリン、コバニ、ジィジラの三つのカントンを連続した行政地区として、それまでロジャバ革命を推進して来たクルド人とその地区のアラブ人その他の人々の大幅な自治に委ねる決断を下すことを、私は切に願ってやみません。

藤永茂(2017年12月18日)
コメント (1)
この記事をはてなブックマークに追加