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補助金留保、の報を聞いて

2016-11-11 10:00:00 | (瑛)のブログ
 神奈川県の黒岩県知事は8日、神奈川朝鮮学園に通う児童生徒への学費補助(4~8月分、約2100万円)の交付決定を留保すると発表した(神奈川県新聞)。

 その「理由」は、県が求めていた歴史教科書の改訂が行われていないからだという。


 同知事は2013年2月の朝鮮の核実験を受け、13年度の経常費補助の交付を取りやめ、14年度からは、外国人学校への補助金制度をなくし、児童生徒への補助に切り替えた。それが「外国人学校児童・生徒学費軽減事業補助金」だ。その「交付要綱」第1条には次のように補助金の趣旨が明記されている。

 「外国人学校に在籍する児童・生徒等の保護者に対してその授業料または保育料を補助することにより、保護者等の負担軽減を図り、児童・生徒等の教育を受ける機会を安定的に確保…」

 要綱のどこにも、教育内容によって補助金を停止したり、留保する、とは書いていない。県は新しい補助金制度を設けたとき、以下のような説明をしていた。

 …国際情勢・政治情勢の不安定さが、母国・民族との関連を想起させ、子ども達の教育の機会に影響を与えかねない。外国人学校に通う子ども達であっても、こうした不安定さの影響を受けることなく、安定的に教育を受ける機会を確保する必要がある。

 「想起させる…」の部分は理解しがたい。なぜなら、国際情勢は常に不安定であり、仮に想起させたとしても、国や民族の隔たりなく教育の機会を設けることが、行政や国の責務、仕事であるはずなのだから…。

 同知事は、拉致問題を教科書に明記することにこだわる。

 しかし、そもそも、朝鮮学校は学校教育法に定める1条校ではない。法律の枠組みでいうと、朝鮮学校は、各種学校の認可を受けており、そこで教える教育内容に県知事が介入することは法律で認められていない。知事こそが、要綱が定める「子どもの学ぶ権利」を脅かしているのではないか。

 政府の無償化差別に始まり、東京都、大阪府でも教育内容を口実に補助金が止められているが、今後、日本の教育行政は、すべての外国人学校の教育内容を監視するつもりなのだろうか。アメリカンスクールで原爆投下をどう教えているのか、アジア系の学校で「従軍慰安婦」問題の記述がどうなっているのか、など、枚挙にいとまがない。お金をちらつかせながら、マイノリティ学ぶ権利を脅すその先に、何があるというのだろう。

 留保を受けて、朝鮮学校を支援を続けてきた日本市民たちが、撤回を求め、動きだしている。

「神奈川朝鮮学園を支援する会」の成田恭子事務局長がイオ12月号に寄せた文を紹介したい。補助金留保は知事一人の問題ではなく、日本社会、県民たちの意識が問われていることだと思う。


●会う(マンナミョ)・学ぶ(ペウミョ)・ともに(トブロ)


 神奈川県下には5校の朝鮮学校があります。2013年2月、神奈川県知事は「北朝鮮の核実験」を理由に朝鮮学園への経常費補助金の予算不計上を発表しました。それと連動して、横浜市、川崎市、大和市が補助金の停止または減額を行ないました。

 その数日間のうちに県下83もの労働組合、市民団体が結集して「反対声明」をあげ、「朝鮮学園への補助金支給再開を求める県民会議」を結成しました。

 署名、集会、「60万回のトライ」上映会などを実施し、朝鮮学園について市民の理解を深め、補助金再開を求める活動を行いました。また、「ムジゲタリ基金」を募り、高校無償化制度から除外された上に自治体の補助金まで不支給となった学園への経済的な支援の輪を広げました。

 県は2014年度予算において「外国人学校に通う生徒に、政治や国際情勢に左右されず安定的に教育を保障する」として、県下のすべての外国人学校に対し、経常費補助に代えて新たな就学支援金制度をスタートさせました。これは朝鮮学園の児童・生徒にも支給されることになりました。県民会議は一つの役割を終え、復活していない自治体の補助金再開をはじめとする課題を引き継ぎ「神奈川朝鮮学園を支援する会」と統合されました。

 しかし今年11月8日、県は朝鮮学校に通う児童・生徒に対する支援金の交付決定を留保すると発表。教科書に拉致問題の記述がないことを理由にしています。

 何としても留保を撤回させなければなりません。現在、支援する会は「出会う(マンナミョ)・学ぶ(ペウミョ)・ともに(トブロ)in NANBU−かながわの朝鮮学校交流ツアー2017」(2017年2月18日)に向けて取り組みを進めています。(成田恭子「神奈川朝鮮学園を支援する会」事務局長)

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