日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

平壌でトロリーバスに乗ってみた

2012-06-15 09:00:00 | (相)のブログ


 今日で平壌滞在28日目。
 先日、市内を走るトロリーバスに初めて乗る機会があった。
 日本にいる時のように、交通手段の一つとしてふらりと利用することはできないので、仕事の関係で乗ったわけだが。
 トロリーバスとは、架空線からポールを通して電力の供給を受けて走るバスのこと(『広辞苑』第6版)。走るのに軌道を必要としないので、朝鮮では「무궤도전차」(無軌道電車)と呼ばれている。平壌市民の「足」の代表格だ。
 市内の公共交通機関としては、トロリーバスのほかに地下鉄、バス、路面電車(「궤도전차」(軌道電車)と呼ばれる)がある。個人的には、街中をゆっくりと走る昔ながらのトロリーバスが平壌の風景にもマッチしているようで、好きだ(日本では目にすることができないという意味も含めて。上でも書いたとおり、朝鮮滞在生活の中でこれらの乗り物を利用することはないので、利便性ではなく、あくまでも見た目の判断)。
 そのトロリーバスだが、平壌では1960年代から走っている。その後、70年代からは地方都市でも導入が始まったという。首都旅客運輸指導局の職員によると、だいたい10年に1回、モデルチェンジや技術的な改善が施されるとか。2年前から最新型の「千里馬091」号の運行が始まり、各路線で順次旧型と入れ替わっている。今回乗ったのは、その「千里馬091」号だ。
 ボディは従来のものより明るい色使い。座席数を増やし、シートも改良した。乗り心地はなかなか。一方で、日本の乗り物に慣れているせいだろうか、思ったよりスピードが出ないな、という印象も持った。もちろんこれは、トロリーバスという乗り物の構造上の理由によるところが大きいのかもしれない。
 くだんの職員によると、この新型は旧型に比べて電力消費を40%ほど抑えることができるという。運行する側とすれば、この経済性の高さは大きなメリットだろう。
 バスのチケットは1枚5ウォン。一区間でも、始点から終点まで乗っても同じ額だ。


  
 これを機に、平壌の公共交通機関事情について少し話を聞いてみた(全国規模の鉄道路線についてはまたの機会に)。
 市内を走る路線は、トロリーバスが8、バスが17、路面電車が4、地下鉄が2。トロリーバスの場合だと、運行時間は朝5時半から夜の12時まで。朝の出勤時間帯は2分間隔、日中は5分間隔で運行されているというが、うーん、本当だろうか…。
 日本の通勤時間帯のラッシュはほとんど殺人的といえるレベルだが、平壌でもその時間帯は数十万人が動くので、日本のそれには及びはしないものの、混雑は当然発生する。市中心部を行き交うバスや路面電車はのきなみ超満員で、停留所には長蛇の列ができる。平壌支局オフィスが入る平壌ホテルの前にバスの停留所があるので、朝の時間帯は停車したバスから人々が吐き出されるように降りていき、それぞれの職場に向かう光景を見ることができる。
 昼間でも路線によっては車内が満員になっている姿を見ることがある。上記の間隔で運行されているとしたら、そんな風にはなりにくいと思うのだが、実際のところはどうなのだろう(もちろん、交通機関に遅延やアクシデントがつきものなのは言うまでもない)…。ちなみに、バスの停留所には日本のような時刻表はない。
 市民の声を拾ってみると、公共交通機関では地下鉄の利便性の高さを挙げる声が多かった。スピードや輸送能力といった部分で他の追随を許さないので、それも当然か。ただ、平壌の地下鉄駅は地下のかなり深い位置にあるので、降りてから地上に出て目的地まで向かう時間も考えると、ケースバイケースだという意見も。路線の数やカバーしているエリアの広さ、乗降場所の多さだと、地下鉄よりもバスやトロリーバスが勝っている。機動性ではそちらに軍配が上がるのかもしれない。



 人によって行き先はさまざま。市中心部の移動、中心部から郊外へ、郊外から中心部へ、場合によっては郊外から郊外へ向かうこともあるので、行き先や乗り物の性能、所用時間などを総合的に判断して、自分の普段の行動範囲においては最適なルートと乗り継ぎ方法を把握しているとか(もちろんこれは朝鮮に限ったことではないが)。
 公共交通機関の利便性は年々向上しているという。地下鉄では去年あたりから運賃のカード決済システムが導入されている。自動改札に利用カードをタッチするとゲートが開き、カード内の残高などもわかる仕組みだ(日本のように区間ごとの運賃の差があるわけではなく、利用区間を定めた定期券も必要ないので、システムとしてはずっと単純だと思われる)。今後、他の交通機関への導入も進むそうだ。
  
 付け加えるなら、唯一、遅延やトラブルがほとんどなく、目的地まで決まった時間でたどり着ける方法がある。それは徒歩移動だ(自転車もあるが、平壌市内中心部では禁止されているエリアがあるので除外)。朝鮮の人々はよく歩く。歩き慣れている。「ちょっと近所のコンビニまで」といったプラプラしたものではなく、「本格的に歩く」のだ。だから、歩き方も何かさまになっている(と私には見える)。
 そんな私の移動手段は常にドライバー付の乗用車。ぜいたくを望んでそうしているのではなく、決まりだから仕方がない。(相)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (名無しさん)
2012-06-15 09:19:20
社会主義国で公共交通機関が有料だとは!すごく意外です。
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平壌に行きたい (ポチョンボ電子楽団大好き)
2012-06-15 16:14:38
僕は、鉄道オタクなので、平壌の鉄道にも興味があります。特に、地下鉄。東京の大江戸線や南北線よりも深いらしいので、面白そうです。車両は、どんなやつなのかな?とか、線路の幅は?とか、モーター音など、いろいろ気になってます。僕がいつも使ってる横浜市営地下鉄は、車両がカッコ悪いので、気に入ってません。平壌の地下鉄は、古いながらもなかなかのデザインですよね!それと、鉄道とは関係無いですが、最近冷麺にハマってます(めったに食べないけど)。そこで質問なんですが、平壌の玉流館は美味しいんですか?前、一度だけ平壌冷麺を日本で食べたことあるので、気になってます。機会があれば、玉流館に行った感想を、記事にしてもらえるとありがたいです。長々と、失礼しました。
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