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自由権規約委員会の日本政府報告書審査

2014-06-13 09:00:00 | (相)のブログ
 きたる7月15、16の両日、スイスのジュネーブで自由権規約委員会の日本政府報告書の審査が行われる。
 自由権規約(「市民的及び政治的権利に関する国際規約」)は、社会権規約と並んで国連人権諸条約の中でも最も基本的で包括的な条約で、表現の自由や生命に対する権利、拷問や残虐な刑の禁止、公正な裁判を受ける権利、外国人の追放の制限、差別唱道の禁止、民族的少数者や子どもの権利などを規定している。1966年の第21回国連総会において採択され、76年に発効した。日本政府は1979年に批准している。
 規約人権委員会は、自由権規約の締約国が、規約に規定されている基本的人権を保障しているか、また保障するためにどのような対策を講じているかを定期的に審査している。日本政府の報告書に対する審査は今回で6回目。前回の審査は08年10月にあった。そのとき同委員会が発表した最終見解では、「前回の審査で出された勧告の多くが履行されていない」と懸念が表明されている。

 さる4月22日、今回の第6回審査に向けて26のNGOが共同でメディア向けのブリーフィングを開催した。私も会場の参議院議員会館に足を運んだ。
 冒頭、「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子さんは、日本政府が昨年の拷問禁止委員会で出された「日本軍慰安婦」問題に関する勧告について「勧告に拘束力はなく、従う義務なし」と閣議決定したことなどを挙げて、「開き直って国連勧告を履行しなくてもいいという態度を鮮明にしている」と指摘。日本政府の人権問題に対するお粗末な姿勢を批判した。
 6年ぶりとなる日本審査だが、注目点は何なのか。ブリーフィングでは、注目されるテーマとして特定秘密保護法・ヘイトスピーチ・日本軍「慰安婦」問題・袴田事件の4つが取り上げられた。
 ヘイトスピーチについて報告した師岡康子さん(人権差別撤廃NGOネットワーク)は、「日本政府はヘイトスピーチが蔓延している現実を直視せず、国際的に隠そうとしている。それが表現の自由として保障されているという主張さえまかり通っている」とし、この問題を取り巻く国内の状況に危機感を表明した。また、京都朝鮮学校に対するヘイトスピーチに違法判決が出されたことについても、「この判決は特定できる対象へのヘイトスピーチを侮辱罪や名誉棄損罪という現行法で何とか対処しているにすぎない。不特定多数に向けて街頭宣伝がなされた場合、これを規制する法律はない」と、法整備を含む対策が遅れている点を指摘した。

 審査は1ヵ月後。これまで自由権規約委員会の日本審査で出された懸念事項や勧告は、個人通報制度の批准や死刑廃止、女性差別や民族差別の撤廃など多岐にわたる。
 日本政府報告書 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000023051.pdf
 委員会からの事前の質問事項と日本政府の回答 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000031106.pdf
 
 これを読む限り、今回も日本政府に対して厳しい勧告が出ることは容易に予想できる。
 自由権規約委員会に続いて、8月には国連人種差別撤廃委員会の審査も予定されている。
 昨年5月に開かれた国連拷問禁止委員会の場で、外務省の上田秀明人権人道大使(当時)が、「シャラップ!」などと発言し波紋を呼んだことは記憶に新しい。勧告を無視して居直ったり、国内の人権問題を放置するのではなく、改善に向けて対策を講じていく姿勢が求められているのではないだろうか。(相)


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