2018年4月14日〜22日
会報「游」21号よりNo.2
出品者は十五人。これまでの九年間、関根哲男さんが毎年相手を替えて戦ってきたVS展の九人、乱入組五人、本人を合わせた十五人による「最後のVS 乱闘展」である。游文舎のギャラリーとホールをすべて使って目一杯の展示となった。
ホールの空間には立体作品が、ギャラリーには主に平面作品が並んだ。ジャンルも現代アート系の作品から、油彩、彫刻、版画と多岐にわたった。そこに統一的な緊張感を与えていたのは「VS乱闘」の精神だった。
九回の半分くらいを観てきたが、「格闘技のノリで始めた」というVS展だから「勝敗」ということにこだわる面もある。もとより美術に格闘技のようなはっきりとした「勝敗」があるはずもないが、それでも「どっちが勝っているか?」との判断を迫られる緊張感には独特のものがあった。それは関根さんの作品が持っている攻撃性や暴力性、あるいは不謹慎などに対して、相手がどのように立ち向かうのか、どう戦術を立てるかに関わっている。
しかしこれまでの九人と乱入組の五人の作風を観ると〝現代アート系〟の作家が意外と少ないことに気づく。つまり必ずしも〝同じリング上で〟戦うのではない作家が多かったのだ。それはやはり、ジャンルは違っても関根さんと戦ってみたい、〝同じリング上で〟勝負してみたいという願望を掻き立てられるからなのだろう。
関根さんの挑発に乗るということは、普段では決してあり得ない緊張感のもとで制作してみたいという願望そのものであり、関根さんはVS展という形で、県内の作家たちに大きな緊張感をもたらし、作家たちを刺激し続けてきたのである。それはVS展の果たした大きな功績であり、「一応の区切り」と言わず、これからも続けてほしいものである。
関根さんの今回の作品は〈原生―赤ふんベロベロ〉。このところ続けているボードに穴を開けて、無数の荒縄をとおし、表と裏で結びつけ、泥を塗ったくった作品である。中央部におなじみの赤ふんが見えている。
関根さんの作品については「無意味な行為の集積としての作品」と言われることがあるが、それだけでなく、私には他の作家達が作品を作る行為の本質的な無意味性を暴き出し、表現者達を無意味の淵へと誘い込む魔力を持った作品のように思えるのだが……。(柴野毅実)
作品リスト
猪爪彦一〈夜のトルソ〉、荻野弘一〈英雄の死〉、佐藤秀治〈VS廃木〉、佐藤美紀〈二〇一八―一、二〉、信田俊郎〈光の場所二〇一八 四月十一日〉、霜田文子〈遡行〉、霜鳥健二〈再生―線―二〇一八〉、関根哲男〈原生―赤ふんベロベロ〉、高橋洋子〈最初で最後の自由〉他、玉川勝之〈顔出し仏壇〉、藤井芳則〈不死身のモンスター〉、星野健司〈パイロン〉シリーズ、堀川紀夫〈Tensegrity∪Strut 三〇〇㎝×五〉、前山忠〈壁の視界〉、吉川弘〈空白の存在〉