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NHKハーバード白熱教室がいい

2010-04-17 | film, drama and TV

4月11日(日曜)18時から教育テレビで放送があった。毎週同じ時間で放送があるようだ。調べてみると、マイケル・サンデル教授による、ハーバード大学の法哲学(政治哲学?)の授業JUSTICE(=正義)が全24回の講義を6月20日まで放送されるとのこと。

物凄く面白かった。生徒1000人(教室にそんなに入るか?)とサンデル教授が交わす対話方式の授業、知的刺激に満ちている。政策ディベートでは欠かせないCost/Benefit Analysisをディベーターたちが雑に普段扱っているそれとは次元が違う高いレベルで提供してくれる。知り合いの日記を読んでいたら、これを見たという人を何人か見かけた。その内の一人は彼が通っていた某国立T大学のロースクールよりも(特に喋り方が)優れた授業であるというような事を書いていた。なるほど。

授業内で映像を流して、シェークスピアとバラエティ番組とザ・シンプソンズを見せてどれが好きかという生徒たちの反応も面白かった。私はあまりザ・シンプソンズは好まないのだが、ハーバードの学生にも人気なのか。


NHKのオフィシャルサイトからそのまま引用させて頂くと

Lecture1 犠牲になる命を選べるか
あなたは時速100kmのスピードで走っている車を運転しているが、ブレーキが壊れていることに気付きました。前方には5人の人がいて、このまま直進すれば間違いなく5人とも亡くなります。横道にそれれば1人の労働者を巻き添えにするだけですむ。あなたならどうしますか?サンデル教授は、架空のシナリオをもとにしたこの質問で授業を始める。大半の学生は5人を救うために1人を殺すことを選ぶ。しかし、サンデル教授はさらに同様の難問を繰り出し、学生が自らの解答を弁護していくうちに、私たちの道徳的な根拠は、多くの場合矛盾しており、そして、何が正しくて、何が間違っているのかという問題は必ずしもはっきりと白黒つけられるものではないことを明らかにしていく。

Lecture2 サバイバルのための殺人
サンデル教授は、19世紀の有名な訴訟事件「ヨットのミニョネット号の遭難事件」から授業を始める。それは、19日間、海上を遭難の後、船長が、乗客が生き残ることができるように、一番弱い給仕の少年を殺害し、その人肉を食べて生存した事件だった。君たちが陪審員だと想像して欲しい。彼らがしたことは道徳的に許容できると考えるだろうか?この事例を元に、哲学者、ジェレミー・ベンサムの功利主義「最大多数の最大幸福」についての議論を戦わせていく。


という初回は見逃してしまった。今回は

Lecture3 ある企業のあやまち
ベンサムの功利主義の中心となる考え方である「効用の最大化」、つまり最大の喜びをもたらすものこそ最善である、という論理をさらに具体的に考える。「すべての便益の合計から、代償を差し引いたとき、幸福が苦痛を上回るだろうか」というこの論理は、「費用便益分析」という名で、昔から企業や政府でよく使われてきた。サンデル教授は、事例をいくつか挙げる。政府がたばこの消費税率を上げようとした時、あるたばこ会社は費用便益分析を行い、「政府は、国民の喫煙によって得をする」という結論を出した。1970年代には、アメリカの自動車メーカーが、人の命に値段をつけて、リコール問題における費用便益分析を行った。多数派が残酷で、卑劣であっても、私たちは常に多数派の幸福をより重視すべきなのだろうか?すべての価値をお金のような共通の基準を用いて足し合わせ、比較することは可能なのだろうか?

Lecture4 高級な「喜び」 低級な「喜び」
サンデル教授はもう一人の功利主義の哲学者、ジョン・スチュワート・ミルを紹介する。ミルは、道徳性の高さは効用の大きさで決まると考え、「望ましいものとは、実際に人が望むものである」と述べた。さらに、功利主義が高級な喜びと低級な喜びを区別することが可能だと論じている。区別する方法とは、両方を経験した人が選ぶほうが、より好ましい喜びだ、というのだ。その実証のため、サンデル教授は学生たちにシェイクスピアと、人気のアニメや TV番組を比較させる。さて、高級な喜びに選ばれたのは・・・?



AなのかNOT Aなのか常に選ばねばならない立場にいる経営者さんや、物事を考える枠組みにヒントが欲しい学生さんたち、もっと面白い授業がしたいと望む教師さんたちなど観て何か得るモノが多い人たちはたくさんいると想像する。

しかし放送が始まったばかりの18時頃に友人たち7名に「これ面白いよ。まだ間に合うから見れば?」とメールしたのに、誰からも返信がなかった。はっはっは。




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