「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」米原万里 角川書店 2001年
著者が9歳から14歳まで住んでいた、チェコのプラハ。ソビエト学校での個性的な同級生たち。ルーマニア人で生粋の共産主義者っぽい発言をする割にゴージャスな家に住むアーニャ、運動が苦手なギリシャ人リッツァ、絵の天才のユーゴスラビア人ヤスミンカ。米原さんが当時を思い出すとどうもおかしいと思ういくつかのこと。そしてそれから30年も経ってから分かった真実とは…
いやいやいや。どうしてこの本を読んでなかったんだろう。文句なしに面白い。頁をめくる手が止まらない。激動の東欧を描くだけでも面白ネタ満載なわけだけれど、米原さんの文章の巧さったらない。60年代のプラハが目の前に蘇る筆力の持ち主なんだね。
子供の頃のことをこんなに鮮明に覚えているのも驚異的だ(うろ覚えで後は想像力で埋めているのだとしたら、その想像力が凄い。凄すぎる)そして、当時&現代の状況を暖かくそして冷たく、バランスのとれた目線で見てくれていて、それが読んでいてなんとも心地いい。
作品は三部構成で、リッツァ、アーニャ、ヤスミンカについてそれぞれ描く。219頁ではヤスミンカの父親がなぜパルチザンに加わることになったのか、彼の先生の思い出が書かれている。ここを読んで不覚にも目頭が熱くなってしまった。ヤスミンカの父、先生、そしてそれを描く米原、その三人に感謝。
米原さんは残念ながらこの世にはもういない Only The Good Die Young. 彼女のユーモアを解する心と真面目さゆえ、ある意味、私の理想の女性像である。私が死んで、万が一天国に行けることになったら、そこで米原さんと色々お話ししたいものだ。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) | |
米原 万里 | |
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