頭の中は魑魅魍魎

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『失踪者』下村敦史

2017-03-18 | books
山岳カメラマンの真山は南米ペルーのシウラ・グランデ峰で親友のクライマー樋口の遺体を探しに行った。10年前に滑落したときには回収できなかったのだ。確かにそこにあった。しかし10年前よりも年をとっているように見える。まさか、一旦脱出した後にまた戻ったのか・・・ 大学時代に遡り、山岳部で真面目にやっていた真山と一匹狼の樋口の出会い。真山の就職と登山の料率の難しさ、二人で挑もうとするK2登攀。二人の離反。以後の登山カメラマンとしての樋口の活躍・・・ 登山界の新星としてメディアに大きく取り上げられるようになった榊知輝は日本人初の八千メートル峰十四座制覇を成し遂げようとしている。彼に同行し撮影しているカメラマンが樋口だったのだ。しかしあれだけの技量のあるはずの樋口が登攀途中でリタイアしており、結局登攀に成功しているのは榊だった。樋口はあんなに実力の劣るクライマーだったのか・・・

面白かった。非常に面白かった。

クライミングの技術の話がとても興味深いのだけれど、何よりミステリーとしてものすごくよく出来ている。謎の提示、伏線、そして伏線の回収。

山にまったく興味のない人でも、ミステリー好きなら確実に楽しめる傑作だった。

失踪者

今日の一曲

山の唄と言ってもいいのか。Eaglesで、"Rocky Mountain Way"



では、また。
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