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『傍聞き』長岡弘樹

2008-12-26 | books


「傍聞き」(かたえぎき)長岡弘樹 双葉社 2008年

ミステリーグランプリ2008、日本推理作家協会賞短編部門受賞 評判は悪くない。抑えた筆致、淡い筆先で描いた絵画のような短編集だった。

・「迷い箱」

刑務所を出たばかりで行く所のない者を保護する施設で働く女。殺人の前科があるものの非常に真面目な男。男の不思議な振る舞いに、男が殺人を悔いて自殺するのではないかと、女は心配するが・・・・・・

・「899」

独身の消防士。近くに住む、赤ん坊と二人暮らしの女性に惚れる。その彼女の住む家で火災が発生。千載一遇のチャンスと出動する。ところが赤ん坊が見つからない・・・・・・

・「傍聞き」

小学生の娘と二人暮らしの女刑事。窃盗と殺人事件が起こる。以前逮捕した男が、留置場から彼女に面会を要求してきた。出所してからお礼参りとして彼女の娘に危害を加えると言うのか。その真意は?

・「迷走」

結婚を予定している救急隊員。婚約者は半年前に車にはねられ車椅子生活。彼女の父親は隊長。今日初めて義父になる人と出動。娘の事件で、彼女をはねた医者を不起訴にした検事が刺された。救急車に収容し病院へ向かう。しかし隊長は病院の周りをぐるぐると回るよう指示する。憎い検事を見殺しにしたいのか。隊長の真意は?


「迷走」がすごくよかった。緊迫から弛緩へのあざやかな収束は見事。傍聞き、という言葉知らなかった。自分に直接言われたことではなくで別の人間に向かって言われたことを聞くということ。何かを伝えたいときに直接その人物に対して言うよりも、別の人間に対して言っているのを聞いている方が効果があるのだそうだ。その「傍聞き」というタイトルがどう内容とつながっているかすごく意外だった。面白い。



傍聞き
長岡 弘樹
双葉社

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