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『異国トーキョー漂流記』高野秀行

2013-03-18 | books
「異国トーキョー漂流記」高野秀行 集英社 2005年

日本にやって来た様々な外国人とのふれ合いと高野自身の人生、生活を描くノンフィクション。

日本にブトーを学びに来たフランス人(暗黒舞踏を学びに日本に来る…)、コンゴのリンガラ語を教えてもらうために紹介してもらったコンゴ人、アマゾンに行くのでスペイン語を教えてくれたスペイン人、ウエキという名のペルー人、大連で中国語を教えてくれた先生の息子、仕事のないイラク人、盲目で日本のプロ野球の大ファンのスーダン人。

単に外国から見た変な日本とかあるいは変なガイジンを紹介する本、というわけではない。ホロッとしたり、ドキッとしたりしながら、高野の人柄と狭くて広い世界のことを考えさせてくれる本。

彼の語学の学び方は、教えてくれる先生を見つけてマンツーマンで教えてもらうというもの。英語は苦手だそうだが、フランス語、中国語、リンガラ語、アラビア語等数多くの言語を駆使できるのはすごい。語学の学校に行くよりも効果的なのか、あるいは彼にはこのやり方が向いているのか。

また、いい話だなーと思ったのは、コンゴ人の結婚式での高野のスピーチ。考えさせられたのは、盲目なのにもかかわらず広島カープのファンであるスーダン人の話。野球を一度も「見た」ことがないのに野球ファンとはどういうことだ?と思うのだが、

よくよく考えれば、昔の日本人はみなそうだった。ラジオにはりつき、川上哲治や双葉山に熱狂していた私たちの先達は、彼らの打撃や相撲などほとんど見たこともなかったはずである。
人間は言葉と想像力で「見る」ことができる。そうでなければ、誰も十九世紀ロシアの小説なんか読まない。いや、私が今書いている文章だって読まない。なんでこんな当たり前のことに気づかなかったのか。
マフディはロッテの小林雅や元広島のソリアーノの情報だけでなく、私がいかにマヌケな人間であるか教えてくれる。(234頁より引用)


うーむ。「見える」人間には見える世界しか見えていない。うーむ。うーむ。私もマヌケだった。

では、また。

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2 コメント

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Unknown (midori)
2013-03-18 20:06:12
ふるさん、こんばんは。
ペルー人のウエキのお話ではちょっとほろ苦くて少し淋しい気持ちになってしまいましたが、でも大変な状況にいる人をほっとけない高野さんの人情味溢れる優しさにホロッとなり‥結婚式でのスピーチにはほっこり温かい気持ちにさせて頂き‥、野球が大好きなマフディ君と高野さんの会話にはクスッとさせられたり、じぃ~んとさせられたり‥人間て凄いなぁって感動させて頂きました。 ふるさんの感想を読ませて頂いてまたゆっくり再読したいなって思いました。ありがとうございます!
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こんにちは (ふる)
2013-03-19 13:16:34
★midoriさん、

人間とは、おっしゃる通り、凄いものであり、みっともないものであり、おっきいものであり、ちっちゃいものですね。
高野秀行著作は現在色々と読んでいるところです。再読したくなる本ですね。
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