頭の中は魑魅魍魎

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マンガ『おろち』楳図かずおはスゴかった

2010-05-19 | books

まことちゃんハウスとか、グワシや奇天烈な人柄が先行して有名な楳図かずお。ホラー系を描かせると並ぶ者がいないという話は聞いていたが、機会があったので読んでみた。絶版になっている秋田文庫だと全3巻。復刻版で全4巻。全て読みきりの短編(一本一本は長いので中篇か)

<姉妹> おろちがたまたま入ったその家では美しい姉妹が。しかし18歳になることを極端に恐れている。18歳になると遺伝で醜くなってしまうと言う。姉妹はその後・・・

<ステージ> 3歳だった佑一。父親が車に轢かれて死ぬ。運転手の顔を覚えていた佑一はその顔がテレビに出ているお兄さんと同じだったことから「おはようのおにいたんがとうたんをひいた」と言う。しかし大人は信じてくれない。そしてそして・・・

<カギ> 嘘ばかりついていて誰にも信じてもらえない幼稚園児はうそつきというあだ名をつけられる。そんな彼に重大なアクシデントが。狼少年に何が・・・

<ふるさと> 村で育った彼は都会へ出る。しかしヤクザな生活を続けている内に命に危険が。村に帰りたいと願う彼に・・・

<骨> 貧乏でかわいそうだった千恵に良縁が。しかし夫が死に・・・

<秀才> 赤ん坊だったとき強盗が家に。首に傷をつけられたが命に別状なし。赤ん坊は長じて秀才となり・・・

<眼> 盲目で優しい彼女の家で殺人事件が。無実の罪で父親が捕まる。真犯人のすぐそばにいた彼女は・・・

<戦闘> 父親は学校の教師。困った人に異常なほど優しい。息子のもとに怪しい人物が近寄ってくる。父親の過去を知るらしい。実は暗い過去を持つ父に対して・・・

<血> 珍しくおろち本人が観察者のみならず参加する作品。名門門前家に生まれた姉妹。妹は常に出来る姉と比較されひねくれたまま大人へ。意識を失ったおろち本人が、門前家の遠縁の娘としてストーリーに入ってくると、そこは地獄の一丁目・・・

 いやいやいや。怖い・面白い・やめられない。おろちという第三者の目から見たよく出来た短編小説のようだ。ホラーというジャンルからややはみ出ていてそれがまたいい。

わざわざ金と時間をかけて読む価値がある。ストーリーとコマ割りがよく計算されているし、絵も本当によく描き込まれている。タッチは古いというか独特の不可思議な味があるのだが、それがむしろ怖さを増している。漫画(マンガとすべきかまだ迷い中)は動きをどこかで止めて、それと描くわけで、そんな事当たり前なんだけど。映画やドラマは動画で描写するのだから、どこにフォーカスするのか、どこを画面に入らないようにするのか、言わば画面に入るものを切り取るという事が重要な仕事である。漫画は、現実の世界が動画で動いているに対して、それを静止画に変えてしまうのだから、どんな風に静止させるのかが重要な仕事だ(ええ。当たり前ですとも。)

 楳図かずおは、登場人物の静止のさせ方が絶妙だと思う。







↑思わずインスパイアーされ描いてしまった。





 
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2 コメント

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始めまして (ミント)
2015-11-02 20:27:25
始めまして
ステージ2「秀才」立花親子の確執の犠牲になってしまった優の同級生の事が気になりますね。
優には同情出来るけど、同級生の子は何も悪く無いのに…
彼の人生は?最後優と母親は憎しみを乗り越えた。
無関係なのに、優達の憎しみに巻き込まれた同級生の子に責任は?償いは?
それをしないとダメでしょう。
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こんにちは (ふる)
2015-11-04 00:39:09
>ミントさん、

はじめまして。

最近のことが思い出せなくなっている今日この頃なのですが、本作品のことを思い出そうとしてみました。しかし、サッパリ思い出せません。よく考えたら先週読んだ本のことすら忘れてしまっているのでした。

というわけでして、内容に関しては、「そうですよね〜」という同意も「いや、違うと思います」という否定もできないことご容赦ください。

しかし、怖くて面白かったことだけは覚えています。
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