平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

アメリカなんて大きらい! 高梨みどり

2006年07月29日 | コミック・アニメ・特撮
 紀行文は書こうとする者がその土地に立って「感じ」「考えたこと」を書くものだ。
 沢木耕太郎の「深夜特急」はその名作。
 作者が何を感じ、考え、行動したかが、「私ノンフィクション」の手法で記されている。そこに記されているのは沢木氏自身の赤裸々な自分。ノンフィクションライターらしく何の誇張や脚色もない。

 「アメリカなんて大きらい!」(高梨みどり・著 週刊モーニング掲載)は、そんな紀行文をさらに一歩進めた作品だ。
 アメリカに立った作者が感じたこと、考えたことをそのまま紀行文として書くのではなく、それらをひとつの物語にした。
 自分が考えたことを物語の中で、主人公の目を通して語らせる。
 扱われるテーマは「銃社会」「暴力」「戦争」「南北問題」「貧富」「テロ」「差別」「犯罪」「異常気象」など。
 これらのテーマを9・11テロに巻き込まれて消息がわからなくなった恋人を捜すためアメリカにやって来た主人公・緒方舞子の目で語らせるのだ。
 舞子は恋人を捜すためアメリカを旅してまわりながら、アメリカの現実を見ていく。
 それが物語として結実しているかは別として、面白い試みだ。
 舞子が「恋人を捜す」という目的以外は、普通の女の子だというのも魅力的だ。
 こうした作品が今後も出て来てくれると、エンタテインメントの世界はますます豊かになる。

★追記
 例えば、銃に関してこう描かれる。
 舞子はアメリカ人にこう言われる。
「銃を持つことはアメリカ合衆国憲法修正第二条で「基本的人権」として認められている」
「誰もが銃を持っている。被害者になりたくないなら銃が必要だろ」
「もし舞子がアメリカで暮らしたとして自分の銃を手にしたとしよう。撃ち心地はどうかまず試すだろう?そのうち動く対象物をちゃんと撃てるかどうかとか、自分にはこの銃で家族を守れる力があるのだろうかとひとつずつ段階を踏んでいくのさ」
「そしてもし賊が入って来て自分の敷地内で家族を守るために撃ち、相手を殺したとしてもアメリカでは合法なんだよ。「撃たれる前に撃つ」これがこの国の流儀なのさ」
 こう言われて舞子はどう感じ、考えるか?

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