平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「銀河英雄伝説」で政治を学ぶ~独裁者はいかにして誕生するか?

2022年05月13日 | 小説
『銀河英雄伝説 黎明編』の序章・銀河系史概略には、銀河帝国の創始者ルドルフがいかにして「独裁者」になったかが書かれている。

「閉塞した時代の状況に窒息するような思いを味わっていた銀河連邦の市民たちは、この鋭気に富んだ新しい英雄を、歓呼とともに迎えた。
 ルドルフは、いわば濃霧のたちこめる世界に登場した輝ける超新星であったのだ」


「ルドルフの登場は、民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好むという、歴史上の顕著な例証である。
 民主政治においては失政は不適格な為政者を選んだ民衆自身の失政だが、専制政治においてはそうではない。
 民衆は自己反省より、気楽かる無責任な為政者の悪口を言える境遇を好むものだ」


「強力な政府を。強力な指導者を。社会に秩序と活力を」

・閉塞した時代に強い指導者を求める心
・自分で考えることの放棄。誰かに思考を委ねること

 これが「独裁者」を誕生させる土壌である。
「民衆が根本的に、自主的な思考とそれにともなう責任よりも、命令と従属とそれにともなう責任免除のほうを好む」というのは『奴隷の自由』と言われているエピソードを思い出させる。
 奴隷解放されたアメリカの奴隷は急に自由を与えられて、自分が何をしていいか、わからず、不安になり、結局、奴隷の境遇に戻っていった。
 完全な自由って不安なんですよね。
 だから何かに身を委ねた方が楽。
 身を委ねるものは、会社とか宗教とか、いろいろあるが、一番大きなものは「国家」。
 自分は「御国のために働いているんだ」「御国のために死ぬんだ」と思えれば、惨めな人生も無意味な死も克服できる。

 さあ、これらを踏まえて、僕たちはどう生きていく?

『銀河英雄伝説』田中芳樹・著は、すぐれた政治学・歴史学のテキストでもある。
 これからも折にふれて書いていきます。

コメント (10)
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