Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フェスタサマーミューザ:バッティストーニ/東京フィル

2021年08月07日 | 音楽
 フェスタサマーミューザの演奏会は、例年は一つか二つしか行かないのだが、今年は興味を惹かれる演奏会が多く、五つの演奏会のチケットを買った。昨日はその中のバッティストーニ指揮東京フィルの演奏会。プログラムはオール・イタリア物。

 1曲目はヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」序曲。オペラティックで血の気が多く、しかも用意周到に設計された演奏だ。見事というほかない。バッティストーニの指揮で(オーケストラはもちろん東京フィルで)オペラ全曲を聴きたくなった。以前このオペラを観たのは2003年だった。当時は若杉弘がびわ湖ホールでヴェルディの初期のオペラを中心に毎年一演目ずつ上演していた。その一環だった。今度はバッティストーニの指揮で上演できないか、と。

 2曲目はレスピーギの組曲「シバの女王ベルギス」。わたしには未知の曲だが、柴田克彦氏のプログラム・ノーツによれば、「一般的にはレアなこの曲、日本の吹奏楽界では屈指の人気作となっている」とのこと。わたしは高校生のときまで吹奏楽をやっていたが、それはもう50年前のこと。曲目は大幅に変わっているのだろう。

 初めて聴くこの曲は、オリエンタルなムードが漂い、迫力にも事欠かない、演奏効果満点の曲だった。原曲はバレエ音楽だが、いまは組曲だけが残っているそうだ。そういわれてみると、たしかにバレエ音楽の出自が感じられるところがあった。

 第3曲の「戦いの踊り」(当日は順番を入れ替えて、2番目に演奏された。その変更は慣例らしい)では、戦いの太鼓に和太鼓が使われた。和太鼓だとどうしても、太鼓を叩いてから音が出るまでに、多少の時間を要する。そのタイムラグといったらよいか、アンサンブルの難しさが気になった。

 3曲目はニーノ・ロータのハープ協奏曲。ハープ独奏は吉野直子。わたしはもちろん初めて聴く。ニーノ・ロータといえば、数多くの映画音楽で有名だが、わたしはその中でも「ロミオとジュリエット」の記憶が鮮明だ。思春期に観たからだろう、ジュリエットを演じた女優に憧れ、音楽に酔った。そのニーノ・ロータが書いたハープ協奏曲は、明るく明快な音楽だが、展開に一筋縄ではいかないところがあり、その点がおもしろかった。吉野直子の演奏はこの曲の魅力を余すところなく伝えたと思う。アンコールにマルセル・トゥルニエの「朝に」という曲が演奏された。

 4曲目はレスピーギの「ローマの松」。これはもう、情熱的で躍動的、歌心があり、用意周到な設計を兼ね備えたバッティストーニの良さが詰まった演奏だった。
(2021.8.6.ミューザ川崎)
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