Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2020年08月30日 | 音楽
 高関健指揮東京シティ・フィルの4月定期の振替公演。4月定期ではデジェー・ラーンキのピアノ独奏でブラームスのピアノ協奏曲第2番とリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」が予定されていたが、ラーンキは来日できず、「ツァラトゥストラ‥」は4管編成で舞台が密になるため、プログラムが大幅に変更された。その変更後のプログラムが、意図が明確で、内容充実の、思わず唸ってしまうプログラムだった。

 1曲目はコープランドの「市民のためのファンファーレ」。冒頭の打楽器の音が重く、抉るような叩き方だったので、ギョッとしたが、それに続くトランペットの音が明るく、輝かしかったので、ホッとした。打楽器はともかく、金管、とくにトランペットは快演だった。トランペットにかぎらず、金管アンサンブルが、立体的というか、陰影の豊かな、曲の構造がよくわかる演奏を繰り広げた。

 2曲目はショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。ヴァイオリン独奏は山根一仁。山根は1995年生まれ。現在はミュンヘン音楽演劇大学に在学中。細身の青年で、曲に食い込むような、鋭い演奏をする。その激しさに惹きこまれた。とくに最終楽章は圧巻の演奏だった。「圧巻の」という言葉はよく使われるので、わたしは極力避けているが、この演奏はそれ以外に形容のしようがないものだった。

 休憩後の3曲目はリヒャルト・シュトラウスの「13管楽器のためのセレナード」。木管9本とホルン4本のための曲。穏やかな曲想にホッとした。前曲のショスタコーヴィチとは好対照だ。演奏もハーモニーが美しかった。最後のフルートのしゃれたフレーズに笑みがこぼれた。いかにもシュトラウスらしい。

 4曲目は同じくシュトラウスの「メタモルフォーゼン」。副題に「23の独奏弦楽器のための習作」とあるように、元来は23名の弦楽器奏者(ヴァイオリン10名、ヴィオラ5名、チェロ5名、コントラバス3名)のための曲だが、それを48名(22名、10名、10名、6名)で演奏した。たしかに効果的だった。各パートをつねに2名で弾くのではなく、音圧が強まるところで人数を増強している。その演奏は堂々として雄弁だった。細かなニュアンスにも事欠かなかった。東京シティ・フィルの弦が、高関体制になって、フレキシビリティを増していることが感じられた。

 以上のようなプログラムだった。金管、木管、弦の各セクションに出番を作り、それはすなわち各セクションにアンサンブルの向上を促していることが明瞭だった。コロナ禍にあっても、けっして手を抜かないプログラムを組み、目標を高く掲げることは、指揮者本来の役割だ。高関健はそれを果たしている。そのような指揮者をもつオーケストラは幸せだ。
(2020.8.29.東京オペラシティ)
コメント (2)
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