Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

クーシスト/インキネン/日本フィル

2019年06月17日 | 音楽
 先週の土曜日は、N響の定期が終わった後に、日本フィルの横浜定期へ向かった。両方の定期が重なることは時々あるが、N響が終わるのが17:00くらい、日本フィルが始まるのは18:00なので、約1時間でNHKホールから横浜みなとみらいホールまで移動しなければならず、大急ぎだ(可能であればN響を振り替えるのだが、今回は所用のため、それができなかった)。今回のN響は長いプログラムだったので、NHKホールを出たのは17:10を過ぎていた。結局日本フィルの1曲目(シベリウスの「フィンランディア」)には間に合わず、2曲目から聴いた。

 2曲目はシベリウスのヴァイオリン協奏曲。楽員がステージに揃って、当日のソリストのペッカ・クーシストというヴァイオリン奏者が出てきたときは、頭を丁髷(ちょんまげ)に結っているのでびっくりした。なにかの冗談かと思ったが、そうでもないらしい。これはお洒落か、自分らしさの表現のようだ。

 演奏が始まって、またびっくりした。思い入れたっぷり、というのを通りこして、なにかに憑かれたような演奏。完全に自分の世界に浸っている。でも、それは独りよがりではなく、音楽の文脈に沿っているので、オーケストラから離れない(暴走しない)。

 インキネン指揮日本フィルも、この曲のオーケストラ・パートをどう演奏するか、そのイメージをはっきり持った演奏で、オーケストラだけを聴いていると、まるで交響曲のように聴こえた。

 これは大変個性的だが、奇をてらったとかなんとか、そんなうわべの演奏ではなく、真摯に作品に取り組んだ、真面目この上ない演奏だと思った。わたしは大変驚いた。

 クーシストはアンコールに「悪魔の踊り」というフィンランドのフォークダンスを弾き、足を踏み鳴らしながら、超絶技巧を披露した。これにも驚いた。そしてもう一曲、バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第1番から「サラバンド~ドゥーブル」を弾いた。普通のバッハとは一味違うユニークなバッハに、わたしは完全にノックアウトされた。

 プログラム後半はシベリウスの交響曲第5番。楽員が出てくると、なんとセカンド・ヴァイオリンの最後方にクーシストが座っているではないか! 神妙な顔をして弾くクーシストが気になって仕方がなかった。

 ペッカ・クーシストPekka Kuusistoは1976年生まれのフィンランド人。帰宅後調べてみると、父も祖父も作曲家、兄はヴァイオリニストで、音楽一家の出らしい。
(2019.6.15.横浜みなとみらいホール)
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