Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

MUSIC TOMORROW 2017

2017年06月10日 | 音楽
 今年のMUSIC TOMORROWはローレンス・レネスの指揮。レネスは1970年生まれのオランダ人で現在スウェーデン王立歌劇場の音楽監督を努めている。同歌劇場では今シーズン、「中国のニクソン」、「サロメ」および「イェヌーファ」を振っている。

 1曲目は岸野末利加(きしの・まりか)(1971‐)の「シェイズ・オブ・オーカー」。N響委嘱作品。岸野末利加は現在ケルン在住。わたしは初めて聞く名前だ。作曲者自身のプログラムノーツによると、「オーカーは赤土や黄土とよばれ、酸化鉄を多く含む色彩豊かな土です」。シェイズは「陰影」。

 激しい口笛のひと吹きのような音型で始まり、緊張と弛緩を繰り返しながら、音の帯が流れていく。各楽器が細かいところで、渦を巻いたり、飛沫を上げたりするが、全体としては太い流れが持続している。音の生きがよい。

 結論めいたことを先にいうようだが、わたしにとっては、岸野末利加の発見は今年のMUSIC TOMORROWの最大の収穫だった。

 2曲目はマーク・アントニー・ターネイジ(1960‐)の「ピアノ協奏曲」(2013)。ターネイジを聴く楽しみが詰まった曲だ。3楽章構成。第1楽章はまるで音と格闘しているような曲だ。第2楽章は甘くロマンティックな曲。「ハンスのための最後の子守唄」という副題が付いている。ハンスとはドイツの作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926‐2012)のこと。ターネイジには弦楽合奏のための「ハンスのための子守唄」(2005)という曲があるが、同曲の武満徹の「弦楽のためのレクイエム」に似た響きに対して、こちらは優しく慰撫するような曲だ。第3楽章はノリのよい曲。

 ピアノ独奏は反田恭平(そりた・きょうへい)(1994‐)。頭がこんがらがってくるような複雑な曲を見事に弾いた。スリル満点。鮮烈なN響デビューだ。

 3曲目は一柳慧(1933‐)の「交響曲第10番―さまざまな想い出の中に―岩城宏之の追憶に」。4曲目は池辺晋一郎(1943‐)の「シンフォニーⅩ「次の時代のために」」。ともに今年の尾高賞受賞作品。

 聴いていると、両氏の個性の違いが楽しめたが、前半の2曲とは対照的に、オーケストラを未知への挑戦に誘う(もしくは駆り立てる)要素がないのが何とも‥。レネスはN響をよく掌握して説得力のある演奏を繰り広げた。注目に値する指揮者だと思う。
(2017.6.9.東京オペラシティ)
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