Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

飯守泰次郎/東京シティ・フィル&阪哲朗/日本フィル

2015年05月10日 | 音楽
 昨日の土曜日も演奏会が重なってしまった。もっとも、移動の時間を入れても、両方とも聴くことができる十分な時間差があったので、安心だったが。

 まず14:00からは東京シティ・フィルの定期。指揮は飯守泰次郎で、曲目はブルックナーの交響曲第8番(ノヴァーク版第2稿1890年)。毎年1回、第4番、第5番、第7番と続けてきたブルックナー・チクルスの第4回だ。前3回がいずれも名演だったので、今回も期待が膨らんだ。

 でも、今回は「?」だった。飯守泰次郎の想いが空回りしていた観がある。前3回は、肩の力が抜けて、おのずから生まれる音の充実感があった。今回は、どうしたわけか、オーケストラと噛み合っていなかった。

 とくに第1楽章がそうだった。第2楽章でも立ち直りきれなかった。第3楽章で音のまとまりが出てきたが、表現は十分に練れてはいなかった。第4楽章でやっと、音、表現とも、まとまってきた。でも、残念ながら、遅きに失した。

 次に、初台から横浜に移動して、ゆっくり夕食をとった後、18:00からの日本フィル横浜定期に臨んだ。指揮は阪哲朗で、1曲目はシューマンの交響曲第1番「春」。最初の音が鳴ったとき、こうでなくては!と思った。バランスの取れた響き、鳴りっぷりの良さ、ともに申し分ない。そうか――、第一線で活躍中の指揮者はこうなのかと思った。音のコントロールの違い。それを如実に感じた。

 楷書体の演奏。でも、きっちりしているだけではなく、しなやかで、瑞々しい。スタンダードなレパートリーの好演を聴いたという手応えがあった。

 2曲目はブラームスの交響曲第3番。第1楽章の冒頭、管楽器群の2つの和音の後に出てくる第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの下降音型が、線が細くて、他のパートに埋もれ気味だった。なぜだろう。バランスのミスというよりも、意図されたもののように感じられたが。

 以下の演奏では、シューマンほどの明快なイメージ――あるいは音像――は感じられなかった。だが、第4楽章になったら、オーケストラがよく鳴り、ドラマティックな演奏が展開された。彫りの深い、ダイナミックな演奏だった。

 アンコールに弦楽合奏で「トロイメライ」が演奏された。たんなるアンコール・ピースではあるが、表情の付け方は通り一遍ではなく、指揮者のこだわりが感じられた。そんな点が好ましい。
(2015.5.9.東京オペラシティ&横浜みなとみらい)
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