Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

エド・デ・ワールト/N響

2015年05月17日 | 音楽
 デーヴィッド・ジンマンが振る予定だったN響定期のCプロ。ジンマンが緊急手術のためにキャンセルしたが、エド・デ・ワールトが代役に立ち、プログラムをそのまま引き継いだ。ショーソンの「愛と海の詩」を楽しみにしていたので嬉しかった。

 ホールに入ると、驚いたことには、指揮台に椅子が置かれていた。慌ててプロフィールを見た。1941年生まれだ。まだそんなに高齢ではない。急に衰えたのだろうか――と心配した。ステージに現れたその姿を見ると、足腰はしっかりしているように見えた。椅子が必要なようには見えなかった。

 でも、その椅子に浅く腰をかけて指揮を始めた。1曲目はラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」。棒が衰えている感じはしなかった。だが、出てくる音楽に生彩がない。きっちりやってはいるのだが――。

 2曲目はラヴェルの「シェエラザード」。オーケストラに色彩感が出てきた。こうでなくては――とホッとした。弦の編成が、「マ・メール・ロワ」では10‐10‐8‐6‐4だったが、「シェエラザード」では第1ヴァイオリンが2人増えて、12‐10‐8‐6‐4になった。その影響も大きいだろう。

 冒頭メゾ・ソプラノのマレーナ・エルンマンMalena Ernmanが「Asie,Asie,Asie,(アジア、アジア、アジア)」と歌いだしたとき、その艶のある声にゾクゾクした。フランス語の発音もきれいだ。すっかり魅了された。スェーデン生まれ。オペラから近現代歌曲、さらにはジャズやポップス、ミュージカルまで幅広くこなす歌手だそうだ。

 休憩後のショーソンの「愛と海の詩」には、大いに期待が高まった。案の定というべきか、すばらしい歌唱だった。声、フランス語の発音、さらには明→暗に移行する悲劇性、どれをとっても満足すべき歌唱だった。

 オーケストラの演奏も陰影豊かだった。きめの細かいドラマが付けられていた。その演奏とエルンマンの歌唱とがよく噛み合って、わたしの好きなこの曲の、モチベーションの高い演奏を聴くことができた。

 4曲目はドビュッシーの交響詩「海」。第2部「波の戯れ」の後半から第3部「風と海との対話」にかけてダイナミックな演奏が展開された。だが、音の磨きあげは、いまひとつだった。名指揮者エド・デ・ワールトといえども、代役(かなり急な代役だったのかもしれない)では限界があるのかと思った。
(2015.5.16.NHKホール)
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