ルイガノ旅日記

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ことこと列車~日本一ゆっくり・おいしい・楽しい列車【車窓の風景】

2020年11月26日 | お出かけ
福岡県および沿線自治体が出資する第三セクター「平成筑豊鉄道」は、その名のとおり筑豊地方を中心に運行されるローカル線で、伊田線(直方~田川伊田 16.1km)・糸田線(金田~田川後藤寺 6.8km)・田川線(田川伊田~行橋 26.3km)の3路線があります。いずれも筑豊炭田で採掘される石炭の輸送のために敷設されたもので、1893年(明治26年)に伊田線の一部(直方~金田)が開通したのを皮切りに現在の姿まで延伸しました。
今回の旅の起点・終点となった田川は、かつて「炭都田川」とも呼ばれた石炭採掘の中心地で、全国各地の盆踊りでお馴染みの「炭坑節」発祥の地。五木寛之氏の名作『青春の門』の舞台となった土地でもあります。(写真は復路、夕陽を浴びて油須原駅に停車中のことこと列車)


車窓の風景です。
鷹取山、福智山、赤牟田の辻、焼立山、牛斬山などが連なる福智山系。最高峰福智山の標高は901mで、九州百名山に選ばれています。
ことこと列車は、福智山を眺めるために線路上で一時停止します。このとき、乗務員の佐藤チーフがサービスカウンターの窓を開けて、ガラス越しではない写真を撮らせてくれました。


ついでに、ことこと列車の側面を撮影。決して、走行中に身を乗り出して撮ったのではありません、念のため(笑)


『青春の門』は東宝で映画化され、田中健さん(伊吹信介)や仲代達也さん(伊吹重蔵)、吉永小百合さん(伊吹タエ)や小林旭さん(縞竜五郎)、そしてまだ初々しい大竹しのぶさん(牧織江)らが出演しました。撮影は、田川のランドマークとも言える香春岳の近くで行われたとのことです。香春岳をぐるっと回り込むようにコトコトと走る平成筑豊鉄道。五木寛之ファンや青春の門ファンにとっては、一見の価値がある風景が続きますよ~♪
香春岳には3つの峰があり、右から一ノ岳、二ノ岳、三ノ岳と呼ばれます。最も高かった一ノ岳は、石灰石採掘のために削られて、当初の半分ほどの高さになってしまいました。


列車内に展示された、現在の香春岳の写真。上は本物の石灰石です。手にとるとずっしりとした重みがありました。


元々はこんな山でした。にわかには信じられませんが、香春岳の石灰石はハワイ沖の珊瑚礁が化石となり、隆起してできた山だとか……。ここから採掘される石灰石は非常に品質が高く、世界的にも高い評価を受けているそうです。黒いダイヤモンドと言われる石炭に対して、石灰石は白いダイヤモンドと呼ばれました。


田川伊田駅を過ぎると、香春岳の西から南を回り込むように走るので、違うアングルから見ることもできます。採掘されて白くなった部分がわずかに覗いていますね。


平成筑豊鉄道田川線は、山地を避けわずかな平地部分を縫うように、この油須原駅から北東へと向きを変え、筑豊地方と京築地方をつないています。(油須原駅には行きと帰りの2回停車します。この写真は往路のもの)


田川線は周防灘に注ぐ今川に沿って走りますが、源じいの森駅を過ぎたところで今川を横切ります。正面の公園のようなところは、源じいの森キャンプ場。温泉も湧いていますよ~♨
ちなみに「源じいの森」とは、付近で生息する源氏ホタルの『源』、所在する赤村の村花「春蘭」の方言名「じじばば」の『じい』、赤村の7割を占める森林の『森』を組み合わせた愛称です。


源じいの森駅を過ぎると、明治28年(1895年)に完成した第2及び第1石坂(いっさか)トンネルを通過しました。


石坂トンネルは、九州最古の鉄道トンネルとして国の登録有形文化財に指定されています。
同じく登録有形文化財とされている、煉瓦と石で造られた三連アーチ橋の内田三連橋梁もこの近くなのですが、残念ながら写真は撮れませんでした。


もう少し進むと、英彦山の伏流水を使って九州菊(くすぎく)などの銘酒を造る林龍平酒造場(1837年(天保8年)創業)が見えてきます。
ことこと列車に向かって手を振ってくれている人がいますね~♪


私も九州菊を飲みながら、手を振って応えました(笑)


ほどなく列車は、崎山八幡神社に差し掛かります。逆立ちしている狛犬(右)に注目するよう車内案内があり、それに合わせて列車も徐行運転。


遠くの山並みが連なって見えました。


行橋駅に到着しました。隣接するのはJR九州の行橋駅。日豊本線の特急ソニックとのツーショットです。ことこと列車は、ここから田川伊田駅に向かって引き返します。


行橋駅から田川方面に戻るひとつ目の駅は、令和コスタ行橋駅。令和になって開設される国内初の駅となったため、このように命名されました。地元産の筑豊杉、京築ヒノキをふんだんに使った木造の駅舎は、ことこと列車と同じく水戸岡鋭治さんのデザインだそうです。


平成筑豊鉄道田川線が沿って走る今川には河童伝説が残っています。それに因んで名づけられた今川河童駅のそばに立つ河童像の前で、再び列車は徐行運転……。


もう少し戻ったところには、線路を覆うように木々が生い茂る場所、「緑のトンネル」があります。ことこと列車ファンの間では、列車がそこを通過するシーンが人気だそうで、この写真はそうしたファンの方から寄贈されたものだそうです。(右の写真は、この日私が撮った緑のトンネルです (^-^)ゞ)


遠賀川の支流、彦山川を通過しました。終点の田川伊田駅はもう目の前。ことこと列車の旅もそろそろ終了です。
85kmの距離を折り返しながら、4時間かけて走る旅。ことこと列車は期待にたがわぬ美しさでした。のどかな車窓の風景を眺めながらいただいた料理も美味しかったです(^^♪
そして特筆すべきは、絶やさぬ笑顔で対応してくれた乗務員の皆さん。丁寧で親切、フレンドリーな応対のおかげで、さわやかで気持ちのよい4時間を過ごせました。テーブルを担当してくれた女性は田川出身だったのですが、「地域を盛り上げることに自分も参加したくて、ことこと列車の乗務員募集を知って迷わず応募しました」と仰っていたのが印象に残りました。


平成筑豊鉄道3路線の運営主体は、筑豊興行鉄道から九州鉄道、旧国鉄、JR九州へと変遷。戦後の炭鉱閉山に伴って当初の役割は既に終えていたため、国鉄の分割民営化に際して一時は廃線の対象とされました。ところが、地域住民から存続を求める声が上がり、1989年(平成元年)、県や沿線自治体などが出資する第3セクターとして再出発することに。今では、沿線の学校に通う学生や、田川市立病院に通院する高齢者などいわゆる交通弱者にとって、平成筑豊鉄道はなくてはならない生活の足となっています。
決して人口も多くはなく、目立った産業もない地域を走る典型的なローカル線でありながら、運転本数・駅数ともに旧国鉄および転換前のJR時代の約2倍に増やしたり、ことこと列車といった観光業に参入するなど積極的な経営を行う一方で、運行に関する業務はすべて乗務員が行って経費節減に努めるなど、第3セクターとして何としてでも地域住民に貢献しようという姿勢が強く感じられました。また最初の記事でも触れましたが、地域との連携を高め利用者に運営に参加してもらうために、「まくらぎオーナー」や「つり革オーナー」、あるいは「駅名の愛称命名権」を募集するといったユニークな取り組みも行っています。
頑張れ!平成筑豊鉄道、 頑張れ!ことこと列車~♪

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6 コメント

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令和コスタ行橋駅 (tango)
2020-11-26 20:30:54
知りませんでした?
行橋は娘が結婚しました時、住んでいましたので
何度か参りました。しかしあれから数年・・
時たま、駅裏の石窯パンを買いにまいります
(おいしいんです)
平成筑豊鉄道は一度は乗ってみたいと思いますよ!
詳しいご紹介で良い勉強になりました。香春だけは322号線を車で何度も走り、山が低く見るのを(?>
感じます。コトコト・・ゆっくり・・のんびり・・
そんな旅が良いですね。田畑を見て、川を見て・・今川の周りも走りますよ~~食事はしなくてもよいので
列車には乗りたいですね~~~
小倉から日田英彦山戦で日田まで行きましたが
時間がかかりました。そんなゆっくり旅が好きです。自然を見るのが大好き~~
re:令和コスタ行橋駅 (Duke)
2020-11-26 21:23:38
tangoさん、こんばんは (^-^)ゞ
令和になってからできた駅ですから、平成筑豊鉄道に乗らなければ分かりませんよね。
写真はうまく撮れませんでしたが、杉や檜を多用したきれいな駅でした。
平成筑豊鉄道は、直方から行橋まで1時間半。
たまにはコトコト揺られながらのんびり風景を眺めるのもいいかもしれませんね。
日田彦山線も乗ってみたいです。
田川伊田で平成筑豊鉄道に乗り換えれば、行橋まで帰ってこれますね〜
こんばんは(*^^*) (けろ)
2020-11-26 21:25:55
ことこと列車に乗ってるような気持ちになって読みました(^^)
何から何まで素敵ですね~♪
料理もとっても美味しそう。
手ぬぐいに包まれたランチボックスからワクワクしますね。
ストウブのココットを使ってるなんてもうクラクラします(笑)
列車も料理も景色もスタッフの方も本当に素敵過ぎですね。
ステキすぎます (桐花)
2020-11-26 21:53:41
Dukeさん、こんばんは。
車窓の風景、すてきですね。のどかな日本の原風景が広がっていて、手を振ってくれる人がいて、トンネルも遠くの連なる山並みステキ!
列車って独特の味わいがありますけど、ことこと列車、本当にいいですね^^@
re:こんばんは(*^^*) (Duke)
2020-11-27 07:45:11
けろさん、おはようございます (^-^)ゞ
7月下旬から運行再開して以来、予約状況をチェックしていたのですが、なかなか空席がありませんでした。(4人用テーブルやソファ席は空いていても、2人用テーブル席がいっぱいなんです)
今回なんとか滑り込めてよかったです(^-^)v
ランチボックス可愛いですよね。
女性にはとりわけ好評だと思います。
ほかの料理も美味しく、スタッフの皆さんのおもてなしにも感動しました〜♪
つい先日まで「ストウブ」と「ストーブ」の区別がつかなかった私ですが、容器の蓋に書いてあったので、知ったかぶりしちゃいました(笑)
re:ステキすぎます (Duke)
2020-11-27 08:01:17
桐花さん、おはようございます(^-^)/
筑豊地方は福岡県の内陸部で、かつては日本の石炭採掘の中心地でした。
山々や清流、田畑が広がる長閑な地域です。
この辺りを車で走ったことはありますが、列車でゆったりのんびり風景を眺めるのは初めてで、いい経験になりました。
本当に、列車の旅っていいものですね。

第3セクターが運営するローカル鉄道は全国にあると思いますが、平成筑豊鉄道について調べるにつれて、第3セクターの企業努力の一端を知ることができ勉強になりました (^-^)ゞ

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