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ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『リアル~完全なる首長竜の日~』

2013-05-02 22:40:54 | 新作映画



----これって、カリスマ的な人気を誇る黒沢清監督の作品だよね。
『叫(さけび)』『LOFT ロフト』などのホラー映画でよく知られているけど…?
「原作はホラーというよりもミステリー。
なにせ、あの 『チーム・バチスタの栄光』以来の
選考委員満場一致で『このミステリーがすごい!』大賞に選出されている。
ただね、この手のミステリーの映画化の場合、いつも思うんだけど、
原作を読んだ人には既にネタがバレている。
ということは、そこで張り合ってもしょうがないのじゃないなあと…。
確かにこの物語、
幾層もの謎が仕込んであって、
ぼくもある“どんでん返し”までは読めたけど、
その大元となっている<種>については分からなかったからなあ」

----<種>?
「うん。
それも<恐怖の種>。
これはその<恐怖の種>を探す旅の映画。
黒沢清監督の個性がよく出たホラーだと思う。
そのワケを説明するべく、
まずは簡単なあらすじから。
幼なじみの恋人同士の浩市(佐藤健)と敦美(綾瀬はるか)。
だが一年前、漫画家の敦美は自殺未遂により昏睡状態に陥ってしまう。
浩市は敦美を目覚めさせるため、<センシング>という最新医療によって
彼女の脳内に入っていく。
そこで自殺の理由を問いただす浩市。
だが、敦美は
『首長竜の絵を探してきてほしい』と頼むばかり。
首長竜の絵を探しながら、
何度も彼女の脳内に入り対話を続ける浩市。
そんな彼の前に、見覚えのない少年の幻覚が現れるようになる。
そしてそれは現実の世界をも浸食していく…」

----ぶるる。確かに怖そうだ。
「でしょう。
この黒沢清という監督、
他のジャパニーズ・ホラーとは異なり、
心の奥底までその恐怖の触手を伸ばしているようなところがある。
しかもその表現法が
映像のもたらす効果というものを知り尽くしたところから生まれている。
なかには人の顔がのっぺらぼうと言った日本古来のものもあるけど、
た敦美が連載していたコミック雑誌の編集長・沢野(オダギリジョー)や
彼女の漫画のアシスタント・高木(染谷将太)らの顔が
蒼白く静謐に無表情だったりとかね。
ただ、惜しむらくはその意識下の世界に
現実世界と同じようなSEを付けるのはやめてほしかった。
思い切って無音にするなどの方が、
かえって恐怖を醸しだせたんじゃないかなと…。
ほら、夢ってあまり<音>はないでしょ?」

----さあ、どうだっけ。
人間の<夢>のことまでは
フォーンには分からないニャ。
「そりゃそうだ。
あと、ぼくがこの映画で嬉しかったのは
<自動車>が<移動>するときの描写だね。
『CURE キュア』のバスのときと同じく、
実際に走るのではなく、
流れる風景との合成で見せてくれる。
確か、タランティーノ『キル・ビル Vol.2』でやっていたんじゃないかな。
これってまるでヒッチコックの映画を観ているような
クラシックな香りになるんだ。
で、『CURE キュア』のときにも
そう思ったんだけど、
この手法が出てくると、
それは<異界>に人を運んでいることを意味しているのではないかと…」

----今回もそうだったの?
「う~ん。
そこを話すとネタバレになるけど、
結果的にそういうことかもね。
あと、街が崩れるシーン。この描写はなかなかだよ。
デヴィッド・フィンチャー『ファイト・クラブ』への返歌とも言えるかも。
黒沢清監督、
『日本映画にはジャンルムービーがなくドラマしかない』
というようなことを言っているというのを
ツイッターで読んだけど、
それを自分で一歩踏み出し、破って見せたって感じ。
うん。こういう映画が世界で通用する映画なんだろうな」

----あらら、いきなりまとめちゃった。



中谷美紀、小泉今日子も出ているのニャ」2009.4.7フォーン


※黒沢清監督に村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』を映画化してほしい度
http://www.youtube.com/watch?v=mQiDs9tKZv4
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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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ホラー (ノルウェーまだ~む)
2013-05-03 12:44:03
えいさん☆
これってジャンル分けでいうとホラーになるのですね?
それで全身トリハダが立つぞわっとした感じがあったのですねぇー
知らずに見ていたので、本当に怖かったです。
でも主演の二人のお陰か?ほんわりした雰囲気もありましたね。
返信する
■ノルウェーまだ~むさん (えい)
2013-05-06 23:10:02
こんばんは。
う~ん。
この映画がジャンルとしてどこに属するのかを
ぼくの方で断定はできませんが、
一般に、黒沢清監督は
ホラー映画と共に語られることが多いです。
でもそれは何かが出てきて「わっ」と驚かせるものではなく、
自分の存在さえも不確かなものにしてしまう、
不穏な気配とそこから生まれる漠とした不安感。
「ぞわっ」というのは、
この映画にピッタリあっている気がします。
返信する
おかしい (悠雅)
2013-06-01 16:12:08
・・・と思いながら、
(特に、自動車での移動なんかその典型ですが)
敢えてあれこれ先回りして考えず、主人公たちと一緒に、
流れに翻弄されることこそを楽しんでいたような2時間でした。
薄々勘づいてしまうものと、最後までわからないものと・・・
いろんな意味で最後まで飽きさせない構成のお陰でしょう。
主人公たち2人のキャスティングも、
過去の黒沢監督作品の出演者たちも、皆よかったですね。
返信する
■悠雅さん (えい)
2013-06-06 22:40:19
自動車のシーンは
『CURE/キュア』以来の彼の専売特許。
「さあ、これから別世界へ」というサインのようなものだと思っています。
ぼくもこえは翻弄された2時間。
映画は「分かる分からない」じゃないということを
改めて思いました。
返信する
Unknown (Ageha)
2013-06-21 09:58:14
そうそう、これ指摘されました。
なんで自動車のシーン、合成なん?
スゲー安っぽいと。
・・・この監督の手法というか、これは見せ方であって
意図的にこういうふうにしてるんだってのを
この監督の作品やこういう撮り方をするひとがいるってのを知らないもんで
佐藤健が運転できへんのかいっって書いて・・・お恥ずかしい。

ふだんホラーはまず見ないし、
・・・アハハハハ(と笑ってごまかす)

変な話、映画むっちゃみてるひとと
主役ありきで見に行ってるミーハーとの違いが
感想にでちゃいますね。これわかるひととわからないひとで
なんかリトマス紙にかけられてみたく感想が違うのも笑いました・・・
返信する
■Agehaさん (えい)
2013-06-22 13:21:51
こんにちは。

運転のシーンですが、
あそこから異世界へ…というのは
まあ、ぼくの勝手な解釈です。

もしよろしければ『CURE・キュア』をご覧になっては
いかがでしょうか?
ぼくはあれが出てくるとゾクゾクしちゃうんです。
返信する

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