ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

9例目(?)はニュースにもならず……

2013年10月25日 00時22分04秒 | 受験・学校

 法科大学院からの撤退は、もう新聞記事のネタにもならないのでしょうか。あるいは、私が見落としていただけかもしれませんが、目に付くような見出しが付いた記事を読んだ記憶がありませんし、ネットでも新聞社などのサイトで記事を見つけることはできません。ニュースヴァリューがないということなのでしょうか。

 10月17日付で、東海大学が法科大学院の学生募集を2015年度から停止すると発表しました(http://www.u-tokai.ac.jp/TKDCMS/News/Detail.aspx?code=law_school&id=6589)。この話題は、ネットではいくつかのブログなどで取り上げられていました。私も、実はこうしたブログを読んで知ったのでした。

 これで、私が勘定した限りにおいては9例目となります。発表の順に、(1)姫路獨協大学、(2)大宮法科大学院大学、(3)明治学院大学、(4)神戸学院大学、(5)駿河台大学、(6)東北学院大学、(7)大阪学院大学、(8)島根大学、(9)東海大学です。

 朝日新聞社が今年の9月11日5時26分付で「司法試験合格率26.8% 法科大学院敬遠の傾向強まる」として報じており(http://digital.asahi.com/articles/TKY201309100431.html)、その記事に付されている表によると、東海大学(法科大学院出身者。以下、大学名のみとします)の合格率は0%で、合格率の順位は72位でした(神戸学院大学および姫路獨協大学も同位)。昨年の東海大学の順位は55位でした。大東文化大学の今年の合格率が1.64%で71位(昨年は59位)でしたので、人様のことをあれこれと言えた義理でもないのですが、東海大学自身も認めるように、長らく停滞する状況にありましたので、撤退表明もやむをえないというところでしょう。

 今年の合格率順位表を改めて見直すと、1位の慶應義塾大学が56.78%で、他に50%を超えているのは2位の東京大学、3位の一橋大学、4位の京都大学のみです。40%以上50%未満は、5位の愛知大学、6位の首都大学東京、7位の中央大学です。8位が早稲田大学ですが38.41%で、20%超は24位の関西学院大学まででした。

 当初喧伝された理念などから大幅に乖離している現状ですので、どの程度の合格率までなら法科大学院の存続のボーダーラインを引けるのか、難しいところですが、低すぎるという御意見を承知で記すならば、また、合格率などは変動しやすいということも承知で記すならば、20%というところでしょうか。それでも、今年の合格率に照らせば上位の「3分の1」くらいしか残らないということになります。

 ちなみに、今年の全体の合格率は26.8%で、昨年の25.1%に比べればやや上昇しています。しかし、48位の信州大学および白鴎大学がかろうじて10%であり、50位の西南学院大学が9.62%ですから、50位から72位までの25校が10%未満であるということになります。

 いや、もう合格率云々の話ではないのかもしれません。予備試験経由の受験者の合格率が71.9%と高く、合格者の約半数は20代前半、しかもそのうちのおよそ3分の2は学部生でした。旧司法試験を見ているような気もします。おそらく、学部生ならば法曹界への就職も楽なことでしょう。細かいことには触れられませんが、制度設計のミスがあったとしか思えません。もし、法科大学院制度を存続させるならば、日本の大学の学部制度そのものにも踏み込んだ改革をしなければならないでしょう。例えば、法学部を医学部のような学部に変える、というようなことです。

 法科大学院の低迷を受けてということか、法学部の人気も落ちてきています。このように記すのは、私も影響を受けるから、という訳ではありません(これでは低次元ですから)。法律学を志し、習得する者が減るならば、国家や社会の運営に必ずや支障が生ずるであろう、と考えるからです。


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1 コメント

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他にも撤退するか否かを検討している大学がありま... (川崎高津公法研究室長)
2013-10-29 22:58:01
他にも撤退するか否かを検討している大学があります(例、龍谷大学)が、上の本文は正式に撤退(募集停止)を公表した大学に限定しています。

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