佐野といえば佐野ラーメン。いもフライ。あと厄除けか。
「約されてナンボ」という言葉を思い出す。
あだ名や略称を得てこそ本当の人気者。なんだそうだ。
人口に膾炙してゆく過程において、そのインパクトを持たせるため、そのものは簡素化され、他は捨て去られてゆく。
ま、それは仕方のないコトだし、当然のメソッドでもあろう。
ただし。その裏に。その他多くの食文化や生活が存在している事実を忘れてはならない。
佐野は、ラーメンといもフライと厄除けだけで出来ている訳ではない。コレ何も佐野だけの話ではないけどね。
佐野から葛生に向かって3駅。田沼はそんな「かつての」バランスが残されたこじんまりした町だった。
そのメイン通りに在る一軒の大衆そば店の暖簾をふらりと潜る。
暫し待った後、供されたもり450。
極粗挽きのそば粉をつなぎでうまく麺にまとめた手打ちのそれは、素晴らしく香り、甘みが爽やかに広がった。
すぐ裏手にそばの隠れた一大名産地である山々を据える町ではあるが、まさかこんな名人芸に出会うとは。
うまいそば湯をあがりながらたなびく余韻に浸る。
もちろんラーメンも、いもフライも、いい。
しかしそれだけではない。こんなすごいそばも在る。
町も。人も。表面をなぞるだけじゃあその深度は計れないコトを改めて強く感じるのであった。