気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Girl in the Ice by Robert Bryndza

2017-05-16 19:37:07 | 読書感想

治安の悪い南ロンドン、1月朝9時、Forest HillのHorniman Museumの凍ったボート池の厚い氷の下からAndrea Douglas-Brown の絞殺死体が発見される。23歳の若く美しいAndrea Douglas-Brownは、社交界の花形であるが4日前から行方不明になっていた。彼女の死体には、両手を縛られた跡や髪の毛を引き抜かれた跡など過度な暴力を振るわれた痕跡が見られた。

Erika Fosterは、前任地Manchester Metropolitan Policeで6人の少女を殺した連続殺人犯を逮捕するなどのすばらしい逮捕実績を誇り、39歳の若さで捜査主任警部(DCI)に抜擢される。しかし、彼女が主導するチームが麻薬製造工場を襲撃した時、彼女の事前の調査が不十分だったために、彼女の夫を含む襲撃チームの5人を死亡させていた。彼女は部下の刑事や夫を亡くしたショックから休職していたが、数か月ぶりにLewisham Row Police StationのAndrea Douglas-Brown殺人事件の捜査主任として復職する。


Andreaが行方不明になった時からこの事件を捜査していた前捜査主任警部のSparksの不服な態度と対峙しながら、ErikaはAndreaが最後に姿が確認された駅から死体が発見された場所までの足取りを突き止めるように指示、特に、彼女の服装から考えて、Andreaは駅からMuseumまでのLondon通りに面したパブに立ち寄った可能性が高いとみて、再度聴き込みを行うように指示する。

Erikaはたまたま知り合ったこの付近を根城にしている売春婦Ivy Norrisから、他の証人が話していたパブThe Glue Potについての情報を聞き出そうとするが、彼女は知らないと答える。しかし、答えた時の怯えた様子や動転した様子から彼女は何かを知っていると彼女は確信する。The Glue Potには何かあると感じた彼女はそのパブに向かう。そこで彼女は、その夜勤めていたバーテンの女性から、Andreaが店に来ていたこと、Andreaが黒髪の男と会っていたことを聴きだす。しかし、警察で男の似顔絵を作るに協力するよう話すと、不法移民である彼女は逃走する。

翌日の捜査会議で、Erikaは、Glue Potでの聞き込みについて話し、Andreaが会っていた男について調べるよう指示するが、不法移民である女性の証言の信憑性について刑事たちの懐疑的な態度に会う。さらに、彼女の上司MarshはThe Glue Potは不法移民を働かせている場所、売春婦がたむろしている場所として知られており、Andreaがそこにいたという事実は彼女と家族の名誉に関わるとして慎重に捜査するよう警告する。Andreaの父親Simonは貴族の称号を持つ政財界に影響力を持つ防衛産業のオーナーだった。Simonは自分が捜査責任者であるかのように捜査に介入して、一般の被害者と同じく普段通りの捜査を進めようとするErikaを解任して、彼の意向を汲んで捜査しようとするSparksを捜査主任に戻すようMarshに要求していた。イギリスの階級社会において、Erikaは事件関係者が貴族である時の捜査の難しさに直面する。

そんな中、Sparksは元交際相手だったMarco Frostの名前を容疑者としてあげる。Andreaが殺された夜、Andreaと彼は、彼女の死体が発見された場所から近い場所で開かれたパーティーに招待されていた。Sparksは、Andreaが彼との交際を絶った後も、Frostはしつこく彼女につきまとっていたことなどを根拠としてFrostの犯行に自信を持っていた。上司のMarshは、Andreaが会っていた黒髪の男について捜査すべきとするErikaの主張に耳を貸さず、Frostのアリバイの有無についての捜査に専念するよう彼女に命令する。
だが、事件について市民に情報を求めるための記者会見当日、Frostのアリバイが証明されたと言う電話を部下のMossから受けた彼女は、抑えられない衝動にかられ、上司の意向に逆らって独断でAndreaがパブで会った男の情報を求める発言を会見の席で行ってしまう。会見後、上司の出頭要請を無視してその場から逃げるようにして去ったErikaは、自分の行為に信念を持ちながら万が一間違っていたらという不安にかられ、その精神的葛藤から自宅に帰ると眠りこんでしまう。

電話の呼び出し音で目覚めた彼女はIvy Norrisが殺されたことを知らされる。彼女の会見をテレビで見たIvyは、ErikaにAndreaが会っていた男についての情報を100ポンドくれたら教えるという留守電メッセージを残していた。急ぎ署に出向いた彼女は、自分が捜査から外され停職処分を受けたことを知る。
やがて、Sparksを中心とする捜査本部はFrostのアリバイがインチキだったことを突き止め、彼をAndrea殺しで逮捕する。停職中のErikaは、Simonも同席した捜査本部の記者会見を見て、この逮捕を知る。ErikaはIvy殺しとの関連性を否定した彼等の捜査に納得できず、バッジを取り上げられた捜査権限がない一市民としての限界を感じながらも、事件の真相を突き止めようとしているのは自分だけだと信じ、密かに捜査を続ける。そして、ここ2年間で、AndreaやIvyと同じ手口で殺された3人の売春婦がいることを突き止める。彼女は4人の売春婦とAndreaの殺人は同一犯であるとして捜査のやり直しを求めようと、Marshに会いに行く。そんな彼女の様子を殺意を抱きながら監視している男の視線に気づかずに…

 ***********************************************************************************************

久しぶりの仕事に、最初は25年の捜査経験から自信満々、意気軒昂として捜査に乗り出すErikaだが、政治力ある被害者の家族に疎んじられ思い通りの捜査ができず、ついには被害者の家族の要請に負けた上司からも疎んじられ停職にまで追い込まれてしまう。そのどん底から這い上がっていく過程が痛快だった。彼女が再び、捜査主任に復帰したときに、刑事達に話した言葉は胸を打つ。
ただ、彼女が追い詰められていく中盤までの展開は盛り上がるのだけど、最後の詰めの展開がちょっと迫力不足でものたりなかった。

Erikaのキャラクターは魅力的だった。捜査主任という地位にありながら、チームに指示することに飽き足らず、自ら一人で現場に出向き捜査をすすめる傾向がある。チームで動く刑事というより探偵が向いているかもしれない性格。権威に媚びず、自分の捜査方針が正しいと信じたら上司に対しても一歩も引かない。また他人に対しては内面的弱さを見せないが、衝動的に行動してしまい、後でそのことを後悔して自責の念に駆られることがままある。誰も話し相手がない、彼女の孤独感がいたるところで感じられる。

E-book(Kindle版)★★★★ 394ページ  2016年2月出版 199円(2017年5月購入) 


コメントを投稿