2015 Edgar Nominees Best Novel
人種差別が撤廃されてまもない1970年代のアメリカ南部Atlanta市、黒人市長が誕生するが、白人の警察官たちが大多数を占める警察にはまだまだ人種差別の風潮があった。警察官には黒人もいるが彼らは白人から事情聴取することは認められず、黒人を逮捕することだけが彼らに許されていた。また少数だが、女性警官もいるが、女性を採用することによって与えられる政府の補助金が目当ての採用で、女性に警察官は勤まらないと考えている男たちは、彼女たちを戦力と考えておらず、セクハラの対象としてしか見ていなかった。しかし、白人警官達には、この町に住む人々に安心と安全を与えているという自負があった。その見返りとして、当然のように彼らは町での飲食に金を払わなかったが。
11月の月曜日の早朝、Atlanta Police Department(APD)所属、女性警察官のMaggieは、母親への電話で警察官で、兄のJimmyがパトロール中に襲われ、相棒のDon Wesleyが殺されたことを知る。ここ3ヶ月の間に、APDの白人警官が殺される事件が相次いでおき、Donが5人目の犠牲者になった。警官達は犯人をAtlanta Shooterと呼んでいた。Maggieは兄の怪我の状態を心配したが、警官である自分にこのような重大事件の連絡がこなかったことに苛立つ。また、Maggieは、他の事件では現場に向かった二人の警官が殺されているのに、今回はJimmyが殺されなかったことに疑問を感じる。自宅に戻ったJimmyと、朝食に立ち寄った叔父で捜査主任のTerryに、その疑問をぶつけるが、Terryは彼女が事件に関心を持つことに怒り、Jimmyは事件の状況について話すが、彼の証言の中に嘘があることを彼女は発見する。Jimmyは事件について何かを隠している。MaggieはTerryをはじめ同僚の刑事達が、女性である彼女が事件に関わることに反発することを考え、彼らに知られることなく、自分だけで独自にShooterの事件を捜査することを決意する。
捜査会議の後、市内巡回の任務に就いたMaggieは新人警官のKate Murphyとパートナーを組むように命じられる。
若く、長身、スタイル抜群の美貌のKateは、男の警官達から受けた卑猥な扱いにショックを受け、おどおどしていた。そんな彼女の様子を見て、Maggieは、今日一日で彼女は辞めると判断する。
Kateは2年前にベトナム戦争で夫を亡くしていた。悲しみに打ちひしがれて泣き暮らしていたKateを心配して、父親は社会に出て働くことを勧め、彼女に事務の仕事などを紹介するが、彼女に会う仕事は見つからず、すぐに解雇されていた。警察官は、たまたま、広告に出ていた婦人警察官募集の広告を見て応募した職業だったが、世の中に役立つ仕事ということで親も大賛成だった。お嬢様育ちのKateは、男達の粗野な言動、同僚女性の非友好的な態度に泣きそうになりながらも、この仕事を辞めて家族を失望させたくなかった。Kateは、Maggieの教えを受けながら、男社会の警察で生きていくことを決意する。
二人は同僚女性警官の支援を受けながら、男の刑事たちとは違った視点からShooterの捜査を進めていく。
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昔あったというパルプフィクションの感じ?ドロドロ、退廃した空気が行間から漂ってくる。
犯人と思われる男には自白させるために、読む方もためらうほど、暴力を行使、それも男性警官だけでなく女性の警官も・・そして、卑猥な言葉の連発。
予想外の展開、キャラクターに唖然。なんと、Kateのか弱いこと!
でも、男性社会の中でがんばる女性警官達はかっこいい!とくに、エピローグの二人はカッコいい!
男の警察官たちが犯人は黒人の男と確信し、市内で黒人たちを片っ端から尋問する事によって、力づくで犯人を突き止めようとするのに対し、Maggieたちは、冷静に事件を分析し、これまでにあった被害者の共通点を調べたり、事件の目撃者を捜しに現場周辺の聞き込みをしたり、論理的に犯人に迫っていく。そして男たちが証拠をでっち上げることを意に介さないのに反し、彼女たちはあくまでも法に則った手続きに従って犯人を検挙しようとする。
決して、二人とも強い意志を持っているというわけではないが、一人がくじけそうになると、もう一人が励まして停滞することなく、一歩一歩犯人に迫っていく。
★★★★ Kindle版 466ページ 975円