気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Cop Town by Karin Slaughter

2015-04-29 14:22:14 | 読書感想

2015 Edgar Nominees  Best  Novel

人種差別が撤廃されてまもない1970年代のアメリカ南部Atlanta市、黒人市長が誕生するが、白人の警察官たちが大多数を占める警察にはまだまだ人種差別の風潮があった。警察官には黒人もいるが彼らは白人から事情聴取することは認められず、黒人を逮捕することだけが彼らに許されていた。また少数だが、女性警官もいるが、女性を採用することによって与えられる政府の補助金が目当ての採用で、女性に警察官は勤まらないと考えている男たちは、彼女たちを戦力と考えておらず、セクハラの対象としてしか見ていなかった。しかし、白人警官達には、この町に住む人々に安心と安全を与えているという自負があった。その見返りとして、当然のように彼らは町での飲食に金を払わなかったが。

11月の月曜日の早朝、Atlanta Police Department(APD)所属、女性警察官のMaggieは、母親への電話で警察官で、兄のJimmyがパトロール中に襲われ、相棒のDon Wesleyが殺されたことを知る。ここ3ヶ月の間に、APDの白人警官が殺される事件が相次いでおき、Donが5人目の犠牲者になった。警官達は犯人をAtlanta Shooterと呼んでいた。Maggieは兄の怪我の状態を心配したが、警官である自分にこのような重大事件の連絡がこなかったことに苛立つ。また、Maggieは、他の事件では現場に向かった二人の警官が殺されているのに、今回はJimmyが殺されなかったことに疑問を感じる。自宅に戻ったJimmyと、朝食に立ち寄った叔父で捜査主任のTerryに、その疑問をぶつけるが、Terryは彼女が事件に関心を持つことに怒り、Jimmyは事件の状況について話すが、彼の証言の中に嘘があることを彼女は発見する。Jimmyは事件について何かを隠している。MaggieはTerryをはじめ同僚の刑事達が、女性である彼女が事件に関わることに反発することを考え、彼らに知られることなく、自分だけで独自にShooterの事件を捜査することを決意する。

捜査会議の後、市内巡回の任務に就いたMaggieは新人警官のKate Murphyとパートナーを組むように命じられる。
若く、長身、スタイル抜群の美貌のKateは、男の警官達から受けた卑猥な扱いにショックを受け、おどおどしていた。そんな彼女の様子を見て、Maggieは、今日一日で彼女は辞めると判断する。
Kateは2年前にベトナム戦争で夫を亡くしていた。悲しみに打ちひしがれて泣き暮らしていたKateを心配して、父親は社会に出て働くことを勧め、彼女に事務の仕事などを紹介するが、彼女に会う仕事は見つからず、すぐに解雇されていた。警察官は、たまたま、広告に出ていた婦人警察官募集の広告を見て応募した職業だったが、世の中に役立つ仕事ということで親も大賛成だった。お嬢様育ちのKateは、男達の粗野な言動、同僚女性の非友好的な態度に泣きそうになりながらも、この仕事を辞めて家族を失望させたくなかった。Kateは、Maggieの教えを受けながら、男社会の警察で生きていくことを決意する。
二人は同僚女性警官の支援を受けながら、男の刑事たちとは違った視点からShooterの捜査を進めていく。

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昔あったというパルプフィクションの感じ?ドロドロ、退廃した空気が行間から漂ってくる。
犯人と思われる男には自白させるために、読む方もためらうほど、暴力を行使、それも男性警官だけでなく女性の警官も・・そして、卑猥な言葉の連発。

予想外の展開、キャラクターに唖然。なんと、Kateのか弱いこと!
でも、男性社会の中でがんばる女性警官達はかっこいい!とくに、エピローグの二人はカッコいい!

男の警察官たちが犯人は黒人の男と確信し、市内で黒人たちを片っ端から尋問する事によって、力づくで犯人を突き止めようとするのに対し、Maggieたちは、冷静に事件を分析し、これまでにあった被害者の共通点を調べたり、事件の目撃者を捜しに現場周辺の聞き込みをしたり、論理的に犯人に迫っていく。そして男たちが証拠をでっち上げることを意に介さないのに反し、彼女たちはあくまでも法に則った手続きに従って犯人を検挙しようとする。
決して、二人とも強い意志を持っているというわけではないが、一人がくじけそうになると、もう一人が励まして停滞することなく、一歩一歩犯人に迫っていく。

 ★★★★  Kindle版 466ページ 975円

 

 


Rough Justice by Lisa Scottoline

2015-04-19 14:39:03 | 読書感想

円安で新刊が高くなって買いづらくなったので、安い本を物色。以前読んだ「Moment of Truth」が面白かったので同じシリーズの「Rough justice」(¥474円!)を読んでみることにした。

アメリカ、フィラデルフィア。深夜、信号待ちしていた富豪のElliot Steereはナイフを持ったホームレスの男に襲われるが所持していた銃で男を撃ち殺す。彼の弁護を引き受けた全米でナンバーワンと言われる刑事裁判専門の弁護士Marta Richterは彼の行為は正当防衛だったという主張を展開し、陪審員の評決を待つ。公判の経緯から判断して陪審員は、無罪の評決を下す可能性が高い。しかし、評決を待つ間、MartaはSteereから男を殺したのは正当防衛ではないと告白され、衝撃を受ける。

Steereから感謝の言葉を期待していたMartaは、無罪を勝ち取ろうとした被告Steereは,実は、冷酷な殺人者だったことを彼の告白によって知る。正当防衛で男を殺したと信じてSteereを弁護したMarta Richterは、一転、彼の有罪を証明しなければならないと決意する。

Marttaは評決が出る前に彼が有罪である証拠を探し出す必要がある。評決までの残された時間は24時間、彼女は助手として雇ったRosato& Associate事務所のassosikate弁護士JudyMaryを叱咤しながら大雪で都市機能が麻痺した町を有罪の証拠を求めて駆け回る。

しかし、裁判は結審していて、あとは評決待ち。そんな状態で、もう一度審理をやりなおせるのか?また、弁護人が被告の利益に反する行為をするのは職業倫理に反する。どうやって職業倫理に反することなく彼を有罪にすることができるのか?・・・興味を持って読んだが、ちょっと期待はずれ。似たようなプロットで、ある作家が書いているが、その方が落ちがうまいし、説得力があった。こちらは犯罪の動機も結末も物足りない。でも、出だしから緊迫した状態が続いて、けっこう最後まではらはらしながら読めた。

ただ、いろいろ詰め込みすぎだと思う。陪審員たちの会議は要らないと思う。その他、市長、判事などちょこちょこと登場人物が多すぎる。
ヒロインがピンチ!どうなると思うとところでそれらの人々の場面に転換。緊張感が維持できない。チョとしらける。

JudyとMaryのふたりのやりとりは楽しい、何かにつけて悲観的なMaryと楽観的なJudy。MaryがMartaのコロコロわる指示に苛立ち、Judyに鬱憤をぶちまけ、彼女がさらりと受け流してやることでMaryも平静を取り戻す。また二人の事件についての議論はテンポがよく、徐々に真相に迫っていく、時には漫才のような掛け合いになったりするが・・二人の友情、絆の深さが二人の会話から読みとれる。できればこの二人をメインにして物語を進めていって欲しかった。連携してない3組の探偵は多すぎる。

 ★★★ 480ページ Kindle版


W is for Wasted by Sue Grafton

2015-04-12 11:43:52 | 読書感想

80年代から続く、タイトルにアルファベットを付けるこのシリーズ、「A is for Alibi」から始まってWまで来た。2014年の SHAMUS AWARDSのTHE HAMMER AWARD (Best P.I. Series Character)にKinsey Millhoneが選ばれたということで久しぶりに読んでみることにした。
このシリーズを読むときは、どうしても同じように80年代から続くSara ParetskyVicシリーズと比較して見てしまう。
Vicのほうはシリーズが続く内に彼女も歳を取ってしまったが、Kinsyは事件を1988年に設定して、38歳と若いままにしている点が大きく違っていて、Vicが年を取っていくのを残念に思っていた僕には、いつまでも若いままでいるこちらの設定のほうがうれしい。

浜辺で死んでいたホームレスの男がKinseyの名前と電話番号を所持していたことから、彼の身元を調べた彼女は男が彼女の従兄弟で、彼女に60万ドルの遺産を与えるという遺言を残していたことを発見する。
男の死に不審な点があって、Kinseyが事件を調査して犯人を突き止めていくのかと思ったら、男の子供たちと彼との疎遠な関係やKinseyの家族の歴史など遺産相続の問題が延々と語られていく。
Kinseyが遠い親戚の男から突然大金を相続することになり、それが彼の子供たちの反発にあってどうなるのかが物語の主題?ミステリーとしては物足りないと思っていたら、物語が進むにつれ、思わぬ展開になり、ミステリーとして十分楽しめた。人によっては物語前半は退屈な展開かもしれないが、Kinseyの語りのうまさで、けっこうストーリーに引きつけられて読み続けていくことができる。
久しぶりに読んだがおもしろかった。最初の書き出し、格闘シーンとシリーズを読んでいる人にはおなじみのパターン。

★★★★ Kindle版 484ぺーじ


Backlash by Lynda La Plante

2015-04-05 10:17:58 | 読書感想

物語の出だしは興味を引かれる。パトロールの警官が不審尋問した車に女性の死体が見つかる。署で尋問された男Henry Oatesは、女性を殺したことを認め、さらに二人の女性を殺していると話す。一人は5年前、マスコミを賑わした少女行方不明事件Rebekka Jordan、もう一人は警察も事件を把握していない交換留学生Julia。彼は本当に二人を殺したのか?それとも捜査を混乱させるための嘘か?

ワクワクさせる物語の始まり方!

しかし、期待外れ!物語の展開が遅く、ストーリーがだらだらと長い。それなりに、物語に、捻りや山を作ろうとしているようだが、さして、盛り上がりもせずに、だらだらと終わりに向かっていく。終わり方も期待はずれ。

キャラも魅力的でない。Annaシリーズとうたっている割に、Annaの存在感、個性が伝わってこない。
Oatesが殺害したという二人の女性RebekkaとJuliaを、AnnaMike、二人の刑事がそれぞれ別個に捜査を進めていく。
ある章では、AnnaがRebekkaの事件を捜査する様子が述べられ、ある章ではMikeがJuliaの事件を捜査する様子が述べられて、さらにある章では、かってRebekkaの事件を捜査した彼らの上司Langtonが事件に介入する様子が述べられるという感じで、誰が主役か、どこに視点を置いて読んでいけばいいのか混乱してしまう。
ページ数もかなりあり、読むのはお勧めしません。

 ★ 484ページ Kindle版