気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Puppet Show by M.W.Craven

2021-03-21 12:49:43 | 読書感想

CWA Gold Dagger Award 2019

イングランドのCumbria州に散在するストーンサークルで老人が滅多刺しにされた後焼き殺される事件が立て続けに3件起こる。犯人は現場に何の手がかりも残さない。型通りの捜査では駄目だと感じた地元の捜査本部はSCAS(the Serious Crime Analysis Section)、 連続殺人犯やレイプ犯などの重犯罪について動機や犯人像を調べその情報を捜査員に与えて捜査をサポートする部署、に捜査の支援を依頼する。

3番目の被害者の断層写真を検証していたSCASのTilly Bradshawは検死の時には発見できなかった死体に刻まれた5、Washington Poeという文字を発見する。

SCASの警部Washington Poeは1年前の誘拐事件で致命的な捜査ミスを犯し、以来停職処分を受けていた。犯人は何故彼の名前を刻んだのか?Poeが5番目の犠牲者であるという殺害予告なのか?

SCAS部長はPoeを警部から巡査部長に降格した上でPoeの停職処分を解除しStephanie Flynn警部の下でこの事件についてプロファイリングするよう命令する。Poeは捜査資料から3人の被害者が裕福で社会的地位がある高齢の男性であることを知り、自分と彼らの共通性を思い浮かべることができない。しかし、自分が5番目に狙われる可能性を考え、部で最優秀な調査、分析能力を持つTilly Bradshawを助手にして犯人に迫ろうとする、16歳で大学の学位を取得している彼女の情報収集能力の高さに頼りながらも、融通が効かず言われたことを鵜呑みにする彼女の世間知らずさに戸惑いながら...

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何気なく読んでしまう部分にさりげなくプロットが散りばめられていてよく考えられたストーリーだと感心。事件も残酷だけど、事件の背景も残酷、読んだ後も重苦しい感じが残る。

Washington Poeというキャラクターで思い浮かんだのがその男凶暴につきという言葉。正義のためならあらゆる手段を尽くす、証人が何か隠し事していると感じると、脅し付けてでも隠し事を白状させる。上司の意見や警告を無視して、独断で捜査していく、上の人間と折衝しなければならないFlynn警部は大変そうだ。酒場で女性にしつこく絡む男など社会的弱者に対するいじめを見ると凶暴性が現れる、身分を明かしてやめるように説得する前に腕力を行使して男達を沈黙させた後に身分を明かす。ただ捜査手腕は抜群、事件での被害者に対する分析力、犯人像の分析は明解で説得力があリ、ひとつの発見が次の発見へとテンポ良くつながっていく展開は読んでいて心地良い。ポーが最後までこだわった問題、何故、犯人は自分の名前を被害者の胸に刻んだのか、最後に明かされるその深い意味に納得。

 

E-book(Kindle版)★★★★ 335ページ 2018年出版 136円(2021年3月現在)


The Last Place You Look by Kristen Lepionka

2021-03-07 11:12:48 | 読書感想

2018 winner of PWA for Best First P. I novel

オハイオ州の州都コロンバスに隣接する町、Belmont市

15年前 17歳のSarah Cookの両親Elaine CookGarrett Cookが自宅で刺殺される事件が起きる。使用された凶器であるハンティングナイフがSarahの恋人Brad Stockton(当時20歳)の車のトランクからSarahの衣服に包まれて発見されたことから彼が逮捕される。Sarahは事件後、行方不明になっているが、検察は彼女も両親と同じように殺されて何処かに埋められたと主張し、裁判でBrad Stocktonの死刑が確定する。

今、2ヶ月後に彼の死刑執行が行われることが告知された時、私立探偵Roxane Wearyの事務所にBradの妹Danielle Stocktonがやって来る。Danielleは、事件後、行方不明になっていているSarahの姿を2週間前にBelmontで見かけたと話し、彼女を探し出して欲しいとRoxane Wearyに依頼する。

 

Roxaneは、ここ9か月の間、警察関係者の誰からも敬愛され、彼女も敬愛していた名刑事と云われていた父親Frank Wearyの殉職に動揺して酒浸りの生活をしていて、ほとんど仕事はしていなかった。しかし、は淋しくなってきた懐具合と15年間兄の無実を信じているDanielleの熱意にうたれて彼女は依頼を受ける。

彼女は恋人でアーティストでもあるCatherine WalshにDanielleの情報をもとに現在のSarahの似顔絵を描いてもらい、その似顔絵を見せながらDanielleがSarahを見かけたという場所の近隣一帯に聞き込みをかける。その結果、Danielleが見かけたという女性は別人の可能性が高いことがわかる。また Danielleと一緒にいてSarahを見たはずだというBradの友達だったKenny BrayfieldもDanielleの見間違いだと指摘する。

KennyやBradの弁護士の調査員だった男もSarahは殺されたと確信していた。しかし、当時のBradを知る彼らは皆、彼がそのような犯罪を起こしたことに疑念を抱いていた。刑務所でBradに面会した彼女もまた彼の無実を信じ始める。

Roxaneは警察は早々に彼を犯人と決めつけたため、他に犯人がいる可能性をまったく考えなかったと確信する。彼女は、当時、同じようにハンティングナイフを使った殺人事件がこの地域で起こってないかデータベースで調べ、Cook夫妻殺害事件の前の年にBelmont在住のMallory Evance という18歳の女性がナイフで刺されて殺された未解決事件があったことを発見する。行方不明になっているSarah17歳と同世代の女性が同じ手口で殺されていることに彼女は興奮する。2つの事件はつながっていると感じた彼女は、詳しく事件の内容を調べようとするが、事件の捜査主任が父親のFrank Wearyであったことを知る。彼女は父親が几帳面に書き残していた捜査日誌を参考にしてこの事件を調べていく。

やがて彼女は、犯行に使われたのがハンティングナイフという以外2つの事件を結びつけるものは彼女の直観しかないことに気づく。Mallory の遺体は森に埋められて隠されていた、Cook夫妻の遺体は隠されることなく現場に放置されていて同一犯とは思えない。2つの事件が本当に関連があるのか悩む彼女に、父親の相棒だったTomは、捜査に直観は必要だと父親が言っていたと話し、彼女の捜査方法は父親に似ていると話す。彼女は、その言葉に勇気づけられ、Bradを死刑から救う道は、父親が成し遂げなかったMallory 殺害の犯人を突き止めることだと信じて、2つの事件の接点を求めてMallory の関係者と会い、犯人に迫ろうとする。

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死刑執行まで2か月、誘拐小説もそうだけど、こういう時間との勝負のストーリーはハラハラドキドキさせてくれるので僕の好きなジャンル。ただ、この本も執行の期日が迫るにつれ緊張感が上がっていくのがと思ったけど、あまりそういう展開にはならなかった。しかし、やっと突き止めた真相にぐっと盛り上がっていく展開は読み応えがあった。特に印象に残ったのはヒロインの私生活を含めた個性。

ヒロインの行動を見て、頭に浮かんだのは昔、角川映画の金田一耕助シリーズに出てきた警部、新しい事実が発見されると「よし、分かった!犯人はアイツだ!!」と直ぐに犯人を特定してしまう早とちりの警部、難事件による胃の痛みを軽減しようと常に胃薬を飲んでいる警部、胃薬をアルコールに変えると我らがヒロインになるというのは言い過ぎ?被害者との繋がりがあるのはこの人物だと思い込むと一直線、その男が犯人と決め込んで捜査を進めていく、誰かと協力して行くなら良いが1人で犯人と思しき人物に接近していくのでヒヤヒヤの連続。せっかく、殉職した父親の相棒だった刑事Tom Heitkerの助けを得られるのに、父親から娘を見守って欲しいと頼まれたと彼に告げられ、その言葉が父親から自分は半人前だと指摘されたと感じて、誰に頼らなくても仕事ができることを見せようと1人で奮闘する。

また、父親ゆずりの酒好きの彼女、聴き込み先で酒を勧められるとつい、グビリ、グビリと飲み過ぎて、聴き込みに来た目的を忘れてしまったリ、警察の捜査状況を調べようと110番通報した時、名前を聞かれると恋敵の名前を告げるなど、ハチャメチャな性格が魅力的。

このシリーズの次の本What you want to seeもおすすめです。

Kindle版 ★★★★ 323ページ 2017年初版