気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Room of White Fire by T.Jefferson Parker

2018-10-13 08:55:31 | 読書感想

2018年 Nominees for  Best P.I novel

California州San Diego、人探しでは有能だと評判の私立探偵のRoland FordBriggs Spenserが経営する私設精神病院から脱走した患者を探して連れ戻して欲しいという依頼を受ける。病院に向かった彼は脱走した患者の 担当医である女医Paige Huletに会い、彼に関する経歴や診断書を渡される。経歴書によると、男はイラクに従軍した元軍人Clay Hickman で帰郷した後、精神を病みこの施設に3年間収容されていた。Fordは、警備責任者から担当医師から、そして最後はBriggsから、男を見つけたらまず第一に自分に連絡して欲しい、他の人にはそのあと知らせて欲しいと言われたことに、なぜ彼らが皆、誰よりも先に男の所在を知りたいのか興味を持つ。

Clayが逃げ出した現場を検証していたFordはSequoa Blainいう19歳の女性に話しかけられる。彼女はClayが脱出するのを手助けしたと言い、Clayは脱出した後、彼女の車に乗って去ってしまったと話す。彼女はClayは狂人には見えなかったと言い、またClayは彼女に『自分はDeimosを業火(White fire)の中に投げ込むという使命を持っている。それを実行するための方法も考えている』と話していたとFordに伝える。Fordは彼女と携帯の電話番号を交換し、彼は精神的に病んでいて暴力的になることがあるから彼から連絡があった場合、必ず自分に連絡をするよう説得する。しかし、彼女はその後Clayと再会した時、彼と一緒に行動することを決意する。時折、Fordからのメールに近況を報告しながら。

Fordは、病院内でClayと親しかったEvanという男から、Sequoaが話していたようにClayは自分はDeimosをwhite fireで滅ぼすと再三話していたことや、Deimosという名は、ギリシャ神話の恐怖の神ではなく彼が軍人だった時に知った男のニックネームだということを知る。またClayは経歴書に書いてあったイラクに従軍したのではなくルーマニアに従軍していたと話し、経歴書が偽造されたのかEvanが嘘をついているのかFordを混乱させる。そしてClayの経歴を調べていたFordは、彼の除隊前の2年間の軍歴が空白であることに不信を抱く。

Clayが業火で焼き滅ぼすというDeimos とは誰なのか、何故、彼はDeimosに怒りを覚えているのか?そして彼はどのような手段を考えているのか?Fordは彼と行動を共にするSequoaの携帯に彼と会いたいというメッセージを送り続ける。

そんな中、Fordは彼の行動を監視している車に気づく。

*******************************************************************************

このミステリーのテーマは、「国を守るためにはテロリストからテロの情報を得るために拷問は許されるのか」という重いテーマ。拷問のシーンが事細かに描かれ、読むのが辛くなる時がある。人間として許されない行為をしたという苦悩から精神に障害を起こした男。しかし、9.11で多くの犠牲者を出した米国民はテロに対する怒りと恐怖を持っており、再びテロを起こさせないためテロリストからテロの情報を引き出すためには拷問も必要悪だと主張する人々もいる。自国を守るため戦争に赴いたFordはこの問題をどのように決着させるのか、彼の態度がなかなか分からずイライラさせられる。しかし、終わり方としてはまあまあ満足な結末だった。

ただ重いテーマの割には抒情ミステリーという感じ。2年前に亡くなった妻のことが忘れることができず、何かにつけて彼女への想いがつづられている。そのせいかストーリーに緊迫感があまり感じられなかった。Best P.I novelとしてはちょっと物足りないな。

E-book(Kindle版)★★★ 343ページ 2017年出版  1083円(2018年10月購入)