気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Under Water(Duck Darley #1) by Casey Barrett

2019-03-03 12:45:28 | 読書感想

2018年 PWA BEST First PI Novel 候補

Duck Darley(Lawrence James Darley)は、少年時代、お金持ちのお坊ちゃまでオリンピック候補と言われるほど競泳の才能に秀でていた。しかし、父親が不正な経済活動をしていたことが発覚し逮捕されてから、彼の人生は一変、オリンピック選手の夢は破れ、生活が窮地に陥った彼は麻薬取引の仲介を始めるが、やがて警察に逮捕され一年以上刑務所に収監される。出所した彼は二度と刑務所に入らないことを自らに誓う。彼は前科があるため、私立探偵の免許を得ることができず、founder and consultantという肩書で探偵業を始め、かって彼もその一員だった金持ちの人々からの依頼で浮気調査や家出人の調査の仕事を行っていた。

ある9月の日、20年以上親交がなかった元水泳のチームメートでオリンピックの金メダリストCharlieの母親Margaret McKayが突然彼を訪ねて来る。彼女は18歳の娘Madelineが先週から行方不明になっているので、探して欲しいと彼に依頼する。わずか一週間で心配するのはどうかと話す彼に対して、彼女は娘とは毎日メールのやり取りをしており、レーバーデイの先週の月曜日に『ごめんなさい』というメッセージが来てからメールが来なくなった。普段、反抗的な態度をとっている彼女が『ごめんなさい』と殊勝なメッセージを送ってきたのはおかしいと主張する。

Duckは依頼を受け、母親が用意してくれたMadelineの親しくしていた人達を訪ねることから調査を開始する。しかし、それは彼が必死になって忘れようとようとしているオリンピック金メダルの最有力候補と言われていた彼の過去の苦い思い出と向き合うことを意味した。彼は酒の力を借りて、当時、彼より能力が劣っていたにもかかわらず、彼が競技を断念した結果、オリンピック水泳で金メダルを獲得した彼女の兄Charlie、今はMadelineのスィミングコーチであるが、当時、彼に将来絶対メダルが取れると保証していたコーチTeddy Marksに会いに行く。しかし、ビジネスマンとして、コーチとして成功している彼らの対応は、人生の負け犬である彼に対して冷たくそっけない態度を示し、彼は何の収穫も得られなかった。彼はパートナーのCassandra Kimball(Cass)の調査から、Madelineが失踪した直前まで、最近別れた彼女の元カレJames Fealyに頻繁にメールを送っていたことを突き止め、Fealyのアパートを訪ねる。そこで彼は残酷に切り刻まれて殺されているFealyの死体と遭遇する。警察は別れ話にカッとなったMadelineが男を殺害したと推測、マスコミは一斉に彼女を狂信的殺人者として報道する。DuckはMadelineが破滅的な人生を送ろうとしていることを立証する証拠を次々と発見するが、彼女が男を殺したとは信じなかった。警察は彼に調査を中止し、あとは警察に任せるよう要求するが、彼は未だ行方が分からない彼女の捜索を続行する。それはオリンピックを目指す華やかな水泳競技に潜む深い闇の部分、死と暴力が待ち受ける世界に彼を導いていく。

**********************************************************************

酔いどれ探偵DuckとSM女王Cassのコンビはユニークだった。Cassがパソコンを駆使して依頼に関する情報を集め、Duckがその情報をもとに行動する。ただ、暴力的、残虐な場面が結構あるので読む人によっては不快感を抱くかもしれない。Duckは、今の自分の生き方と直面することを避けるために酔うのか、こんなに酒を飲んでいて探偵業続けられるのかと思ってしまうが、プロットは良くできていた。Duckという男、失踪した少女の部屋からドラッグを拝借したり、倫理観と云うものもなく惰性で人生を送っているようにみえるどうしようもないキャラクターだが、なぜか次の作品も読みたくなるキャラクターだった。でも次回作Against Nature、1876円の値段は読むのを躊躇させるな。PWA新人賞候補になったことが値を釣り上げた?


E-book(Kindle版)★★★ 336ページ 2017年11月出版  320円(2019年2月購入)