気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Fear Nothing (Detective D.D.Warren 7) by Lisa Gardner

2018-08-29 12:14:23 | 読書感想

朝9時、Christine Ryan(28歳)という女性が殺されているという110番通報がある。現場についたボストン警察の主任刑事D.D Warrenは、異常な現場に慄然とする。犠牲者はベッドの上でおだやかそうな死に顔を見せていた、しかし、胴体は100か所以上、表皮をメスのようなもうで薄く剥がされて全身血まみれになっていた。そして、死体の傍らにはシャンペンが、血まみれの死体にはバラの花が置かれていた。現場の捜査が一段落した後、署に戻ったD.Dは夜10時、明日からの捜査に備えて捜査員を帰宅させる。何か見逃したことがないか気になり、D.Dはひとり現場に戻るが、同じように現場に舞い戻っていた犯人が彼女の背後から忍び寄り、彼女は階段から突き落とされる。

D.Dは命に別状はなかったが、階段から落ちたことにより右肩に損傷を受け、右腕や肩を上げることができず、3か月の病気療養を命じられる。彼女は、夫のAlexの助けがないと、育児ばかりでなく自分で着替えることもできなかった。また、四六時中襲ってくる痛みに耐えられず。署が推薦した痛み専門の医師Adeline Glenの診察を受ける。

43歳のAdelineは生まれた時から痛みを感じない特異な体質を持っていた。彼女の父親は8人の女性を監禁拷問したうえ殺害、被害者の皮膚を剥いで小瓶に保管していた殺人鬼Harry Day、事件が発覚して警察が逮捕に向かった時、彼は自ら死を選ぶ。その後、Adelineは3歳上の姉Shana Dayとともにフォスターホームに引き取られる。そしてAdelineが3歳の時、彼女は姉Shanaにナイフで腕を切られるが、痛みを感じない彼女は血が流れるままに姉を見つめていたが、傷に気づいた女性によって病院に運ばれる。以来、姉とは離れ離れになる。彼女は無痛症を研究していた医者の養子となり、養父の下で痛みの研究をし痛み専門の医者となる。一方、姉のShana Dayは14歳の時に12歳の少年を殺して刑務所に収監されるが 刑務所内でも二人の看守を殺し、30年近く刑務所にいるサイコパス。今は亡き養父に反対されたが、彼女は毎月第一月曜日 姉のShanaを刑務所に訪ねていた。

D.Dを診察したAdelineは、痛みに名前を付けるようアドバイスする。そして名前を付けた痛みに対して不満不平をぶちまける。それによって 彼女はその痛みをもっと扱いやすくできると。D.Dはそんなことで痛みを緩和することはできないとAdelineに不満をぶちまけるが、患者のそんな対応に慣れている彼女から実践方法を教わった彼女はその治療法に納得する。

そんな中、長年のパートナーであるPhilが療養中のD.Dを訪ねてきて同じ犯人の犯行と思われる殺人事件が発生したと彼女に告げる。D.DはPhilが刑事である彼女を訪ねてきたのではなく、犯人と遭遇した目撃者として犯人の手掛かりを求めてやってきたことを知る。しかし、彼女は背後から襲われたため、犯人の姿を目撃しておらず、犯人が男か女かもわからず、有力な情報を与えることはできなかった

やがて、犯行の手口を警察のデータベースにかけた結果、Harry Dayという男によって、40年前におなじ手口の犯行が行われていたことが判明する。そして、D.DはAdelineが男の娘であることを知る。犯人はHarry Dayを崇拝する犯罪愛好者?彼は死んでいるが同じく殺人犯で父の行為を称賛している娘は無期刑で収監されている。犯人は娘と何らかの方法で接触してHarryの手口を彼女から指示されたか?DDはShanaと会う必要性を感じる。しかし、捜査に協力的なAdelineはShanaは自分以外の人間とは交流していないと断言する。Shanaは面会の条件としてAdelineの同席を要求する。彼女は刑事の質問には答えず、Adelineに事件を解決したいのなら、自分を釈放させ、彼女の部屋に住まわせるよう要求する、さらにShanaはAdelineに犯人の最期の標的は彼女であると忠告する。

そんな中、犯人は大胆にもDDの家に侵入して不可解なメッセージを残していく。

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このシリーズは副主人公というか事件に関係してくる女性のキャラクターとその生き方が、こちらが引き込まれてしまうほど魅力的に書かれている。今回もその特異な設定、父親は女性の体から数百片の皮膚を切り取っていた殺人鬼、姉は14歳の時に少年を殺して以来刑務所に収監されているサイコパス、自らは痛みを感じない体質。特に幼児の時、父親が1歳の彼女の腕を切り刻んでいる時、痛みを感じない彼女がじっと父親を見つめている描写はすごく印象に残った。

また無痛症というものが 患者(?)にとって大変なことがよく分かった。ミステリーによく出て来る無痛症の人物は殺し屋などで、殴られても刺されても平然として相手を殺す無敵な人間だと思っていた。しかし、この本を読んで考えが変わった。切り傷などに気づかず感染症で亡くなる者や、自分が痛みを感じないため人が怪我しても痛みに同情しないため社会から孤立していく者。そのため成人になっても生きている確率は20パーセント。

その体質のためか結婚も恋人も作らず孤独な生活を送るAdeline。14歳から30年にわたって刑務所に収監されているが、囚人仲間や看守とも交わらず孤高に生きるShana、社会の中と外にもかかわらず姉妹には共通の孤立感がある。彼女の生き様、そしてサイコパスと言われている姉にも読み進むうちに意外な一面が見えてきて、読み終わった後ジンとくるものがあった。

E-book(Kindle版)★★★ 376ページ  2014年1月出版 133円(2018年3月購入)





Absolute Power by David Baldacci

2018-08-11 19:30:00 | 読書感想

プロの泥棒のLuther Whitneyはある豪邸に忍び込み寝室の奥にある隠し部屋の金庫室で金や貴金属を物色中、豪邸の所有者の妻Christy Sullivanが帰宅、男と密会する場面に遭遇してしまう。男はあろうことか大統領Alan J.Richmond、そして二人はちょっとしたことから諍いを起こし、激昂した女が近くにあったレターナイフで大統領に手傷を負わせるが、異常に気が付いたシークレットサービスによって女は射殺される。

殺された女の夫は地元の名士で大統領の有力なスポンサー、事態を公にできない大統領とその側近の国務長官Gloria Russellはシークレットサービスに命じて 自分たちの痕跡をなくすよう指示する。彼らは彼女が侵入した泥棒に出くわし、驚いた泥棒によって殺されたように見せかけるように細工する。

Lutherはその一部始終を金庫室から見ていた。Lutherは彼らの隙をついて部屋から脱出する時 女が大統領を殺そうとして使った大統領の血痕が付いているレターナイフを持ち出す。しかし、逃げ出すがところをかれらに目撃されてしまい 彼が殺人現場にいたことが知られてしまう。

大統領は Lutherが証拠品となるレターナイフを持ち出したことを知り、シークレットサービスに彼の殺害と証拠品の奪還を図るよう命じる。彼は目撃した男が泥棒であることから、男が警察に目撃情報を漏らすことはないと考える。また 被害者の夫が大統領の有力なスポンサーであることを理由に 殺人の捜査を担当する警部Seth Frankに捜査情報を与えるよう要請する。

Frankは現場が信じられないほどきれいに掃除されていて犯行の痕跡を残していないことから居直り強盗の仕業と考えることに疑問を抱く。そんな時、シークレットサービスのBill BurtonがFrankに会いに来て、自分を捜査の一員に加えて欲しいと要請する。彼は大統領から捜査状況を逐一知らせるよう命令されていた。Frank は彼が捜査の妨害、介入しないことを条件に彼に捜査状況を知らせることに同意する

Lutherは逃げる後ろ姿は見られたかもしれないが、顔は見られていないことを確信するが、シークレットサービスの捜査官が自分の正体を突き止めるのは時間の問題だと考え、自宅を引き払い、海外へ逃亡する。しかし、逃亡先で、事件に関して大統領が不倫相手の女性の夫の傍で泥棒に入った男が殺人犯であると断言して犯行を糾弾しているニュースを見て憤りを感じる。彼は女性が殺される場面を目撃しながらも自分が捕まることを懸念して、女性を助けなかったことを悔やんでいた。彼はこのままでは女性の無念が晴らせないと感じ、帰国することを決意する。彼は彼女の無念を晴らすために全知全能を傾けることを決意する。帰国した彼は一人娘Kate Whitneyの元恋人で弁護士のJack Grahamに自分が逮捕された場合の弁護を依頼する。

Jack は彼が勤める法律事務所の重要な顧客である会社の一人娘Jennifer Baldwinと婚約しており、そのおかげで32歳でパートナーになり年収100万ドル 大統領が出席する夕食会にも出席するなど 上流階級の仲間入りが約束されている地位にいた。しかし、彼は別れた恋人のKateにまだ未練をもっていた。Jackは突然のLutherの依頼、彼の怯えた様子に戸惑いながら、彼の弁護士となることは 刑事事件は扱わないという法律事務所の方針に反することになるが JackはLutherのただならぬ様子に彼にただならない事態が起きていると感じ、Kateに連絡して彼が直面している事態が何か探ろうとする。

やがてFrankは彼の地道な捜査によって、Lutherがその犯罪現場にいたことを突き止める。FrankはLutherの愛娘で検事でもあるKateに会いに行き、彼を逮捕することに協力を求める。Kateは父親が犯罪者ということで子供時代受けた虐めから父親を許すことが出来ず親子関係を断絶していた。そして自らは検事となり犯罪者を裁く道を選んでいた。彼女は、実の父親の逮捕に手を貸すことに躊躇するがFrankの強い要請を受け、子供の時から関係を断っていた父親に会いたいと伝言を留守電に残し、会合の場所をFrankに連絡する。その情報を得たシークレットサービスはLutherを殺すべくその場所に向かう。Lutherは初めて娘からの会いたいというメッセージを受け、断絶していた親子関係が修復できることに幸福感を覚えながら警察が張り込んでいる会合場所に向かう。

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Baldacciのデビュー作品(1995年)。翌年、クリントイーストウッドの主演で映画化された。

予期せぬ事態に遭遇して、それに対処していくそれぞれの人間模様が面白かった。事件をきっかけにさらに自分の地位を向上させようともくろむ国務長官のGloria Russell。大統領を守るという自分の職務に忠実な行動をしたためにどんどん泥沼に嵌っていくシークレットサービスの二人。大統領の殺人を告発するには自分の窃盗を認め、収監されることが前提となり、さらに前科3犯の彼の証言を警察が信じるか、悩むLuther。実の父親を自ら罠に嵌めて逮捕させたことに後悔、自分の行為を悔やみ続けるKate。居直り強盗の殺人と思われるわりには殺人現場の異様な状態に違和感を覚え、粘り強い地道な捜査でLutherを突き止めるFrank。大金持ちの娘と婚約し、輝かしい未来が約束されているにも関わらず、その生活になじめないと感じているJack。ただ、これらの人物の様子が細かく描写され、ストーリーのスピード感が落ちて読む側も退屈になる部分もある。

LutherはJackたちの身を案じて 殺害したのが大統領だと言ってないのでJackたちはなかなか 殺人犯を特定できない、一方、大統領の側はJackたちの存在に気が付いて その行動を監視している。しかも、相手は大統領の命をうけたシークレットサービス、盗聴はお手の物だし、射撃の腕も一流、ページをめくるたびにJackたちは徐々に窮地に追いつめられていくハラハラする展開は面白かった。

最後は どうするのか、アメリカの恥になるから大統領の犯罪を公に隠して、大統領に自殺するよう仕向けて終わらせるのか、それとも 大統領を逮捕するのか、エンディングをどうもっていくのか 興味津々で読んでいった。


 Paperback 505ページ ★★★ 1996年出版