2016年11月22日 読書感想文 あの日と宇宙兄弟 

2016年11月22日 | 風の旅人日乗
小保方晴子氏の
『あの日』を
読み終える


©︎Shigehiko Yamagishi / Kazi

大学を卒業して
最初に入社した雑誌出版社で
海と船とセーリングのことしか知らなかったジブンは
その出版社に費用を払ってもらって
ジャーナリスト専門学校の
夜間講座に通わせてもらった

そこで習ったことは

文章は最初の1行がもっとも大切
ということや
修飾語は修飾したい言葉の直前に置くと
読みやすく理解しやすい文章になる
ということなどいろいろあるが


©︎Shigehiko Yamagishi / Kazi

今でも最も強く覚えていることは

ジャーナリストたる者は
一つの事件なり事象を書こうとするとき
そしてその事件や事象を巡って対立の立場を取る
人たちがいるとき
必ず双方に取材した上で
それぞれの言い分を公平に取り上げて
記事を作っていかなければいけない

ペンは銃よりも強い
人を容易に殺すことさえできる

ペンを持つ者は
そのことを常に心しておかねばならない

ということだった

ジブンの中の
「小保方晴子像」は
毎日新聞の須田桃子記者が書いた
『捏造の科学者』(文藝春秋)
によって作り上げられていた

そして今になって考えてみると
その『捏造の科学者』は
須田記者がジャーナリストの卵だったときに
最初に教え込まれているはずの

『必ず双方に取材し
双方の言い分を公平に取り上げて』

書かれたものではなかった

この本が
日本のジャーナリストたちの
目指すべき人だった
大宅壮一の名が冠せられた賞を
与えられたことも
なんだかとても
座り心地の悪い気持ちに
なってきた



©︎Shigehiko Yamagishi / Kazi

確かに
この騒動の発端そのものは
やはり間違いなく
小保方氏が
研究者としてはあってはならないらしい
とても基本的なミスを
やらかしてしまったことのようだ

そしてその部分そのものは
小保方氏が背負うべき
重い責任のようだ

それははっきりしていることのようだ

しかしその先については

ジブンや須田記者を含めた
『正義の裁判官』を自ら任ずる者たちは

一人の若い
まだ将来のある人間の人格までを

一方的な側からの
しかも不正確な情報だけを元にした
勝手な思い込みと
いじめっ子の心理に誘われるままの
心地良いストーリー作りによって

人として許される範囲を超えて
弄んでしまったのではなかったか

小保方氏の書いた本を読み終えた後
しばらく沈思黙考し

それから
須田記者が書いた
『捏造の科学者』を本棚から取り出して
その扉ページに
「捏造を捏造した(かもしれない)
今のところの最も顕著な例」
とフェルトペンで大書して
日付も書き添えてから
本棚に戻した

次世代たちが間違って読まないように
捨てようかとも考えたけれど

捨てなかったのは
ジブン自身への戒めにしようと思ったから

もしかしたら
小保方氏が書いたことが不誠実で
その大書を消す日も来るかもしれないが
ジブンの直感では
その可能性は限りなく低いように思える


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それにしても

小保方氏のこの本が出版される前に

悪意ある妬みを持つ
特定少数の人間が放った
意図的に操作された情報によって

己のことを「絶対的正義の使者」と信じて疑わない
顔を隠した不特定多数の市井の人たちが
悪の権化となって大活躍する
ネットによる誹謗中傷の嵐が広がる様子を
すでに単行本第27巻で
せりかさんのエピソードとして
物語にしていた『宇宙兄弟』の小山宙哉氏のすごさを
改めて思ったことでした

『宇宙兄弟』第30巻
早く出ないかなぁ


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