Dec. 7, 2005 大恐慌を乗り越えて

2005年12月07日 | 風の旅人日乗
12月7日 水曜日
今日から沖縄の座間味島でサバニ合宿。嬉しいなあ。

朝5時に起き、6時半のバスに乗って、新逗子駅から京浜急行で羽田に向かう。昨日、というか今朝寝たのが2時だったので、えらく眠い。金沢文庫で快速に乗り換えて一安心したところで大事件勃発。トイレ問題だ。それも大。非常に急を要する事態である。朝、時間がなかったので羽田で排出すればいいや、と安易に判断したのがいけなかった。

秒を追って高まってくる緊張の中、少しでも腸内の圧力を下げてみようと、慎重に音を立てずに放屁したら、それがなんと、臭いの何の。自分でもビックリしました。

満員で誰も身動きできない状態の車内に、暴力的な黄色い匂いが漂い流れ、なかなか薄まらない。身近にざわめきが起きたので、他の皆さんと一緒に顔をしかめて周りを見渡し、失敬な犯人を探す振りをした。皆さん、ごめんなさい。

全国の私鉄の中でも際立って飛ばしに飛ばして突っ走る京浜急行が、今日に限ってはひどくノロノロ運転に思える。このまま当初の計画通りに次の乗換駅である蒲田まで行くのはもはや無理であろう、と判断を下し、横浜で降りてトイレに駆け込むことにする。
やっと着いた横浜で降り、重くて大きい荷物(シュラフやキャンプ道具やライフジャケットなどが入ってメチャメチャ大きい)を持って額に脂汗を浮かべ、人ごみをかき分けながら改札口を通り抜けようとするが、パスネット・カードが何回も拒否されて、扉が閉まって通せんぼされる。なんでだー、こんな時にー、と思ってよく見たらパスネット・カードではなくバス・カードだった。これじゃあ通れない。かなり慌てているようだ。

ウン良く、改札口を出てすぐ横にトイレのマークを発見して駆け込んだら、なんということだ、一つしかない個室トイレに先客がいる。
何度もノックをして先客を急かすが、それで気分を害したのか、なかなか出てこない。後ろにもう一人が並ぶ。その人も青い顔をしていて、恨めしい顔で僕のことをチラチラみているが、こっちも余裕がない。「すみません、僕もヤバイもので」と見ず知らずの人に変な言い訳をする。そのうちその人は足をよじり始め手で後ろを押さえている。大変そうだけど、ここで順番を譲ったら、こっちが危ない。

やっと先客が出てきて入れ違いに入りながら、後ろにいる、足よじりの人に「取りあえず一発出して、すぐ交代しますから」と伝えて、ドアを閉めるものもどかしくパンツを下げる。
取りあえず一発出して、すぐにパンツを上げ、ジーンズのジッパーを上げながら出て、交代してあげる。足よじりの人は中に突進していった。いつの間にかその後ろにはもう一人の人が深刻そうな顔をして立っていたが、こっちもすでに第2波の攻撃にさらされているので同情している場合ではない、元々の権利として前に並ぶ。しかし朝の駅トイレはすごいことになっているのだなあ。苦しんでいるのは僕だけではないのだなあ、と、下半身の筋肉が緩まないよう気を付けながら、妙な感慨に耽る。

足よじりの人のはやっぱりかなり危険な状態だったようで、個室の中から、液状のものが大量に噴出しているらしき音が聞こえてくる。今日は朝から他人にとても親切なことをすることができたなあ。
でも僕が2発目の爆弾を抱えて待っているのを知っているのに、足よじりの人は意外と慎重な人だったらしく、時間をかけてじっくりと取り組んでいる。それは困るぞ。
その人はしばらくして個室から出てくると、「ありがとうございました!」と真っ白い歯を見せて爽やかな顔で御礼を言ってくれ、でも手を洗わずにトイレから去っていった。入れ替わりに再び個室に入ると、中の匂いは爽やかではなく、とても臭かった。

第2波の攻撃を処理して、今度はキチンとジーンズの中にシャツを入れ、ベルトもキチンと締めて、やっとそのトイレを後にすることができた。まだ8時前なのに、今日はもう一仕事終えた気分だ。

トイレの入り口で作業をしていた駅構内清掃のおじさんに見ててもらった重くて大きいバッグを再び担ぎ、歩いて横浜のシティーエアターミナルに向う。トイレ問題で遅くなってしまったため、京浜急行はもう通勤ラッシュがピークになっていると思われ、こんなに大きな荷物を持って乗り込むと迷惑だ。当初の作戦を変更して、バスで羽田に向うのだ。

9時ちょっと前に羽田の第2ターミナルの3階にあるコーヒー屋さんに入り、パソコンを広げる。飛行機の出発まであと1時間半。あと2つ仕事メールを送信しておけば、晴れて、1週間の沖縄サバニ合宿に集中できる。

1時間くらいかかってその書き物を書いて無事送信し、横浜で出し切れてなかった第3波を、広くて清潔でウォッシュレットも付いている第2ターミナルのトイレに座って処理しているところに、今回の沖縄サバニ合宿の企画者であるシーカヤッカーのUから、「いま羽田に着いたよ」と電話が入る。原稿仕事も急ぎの物はすべて終え、他の仕事の段取りも1週間先の分まで一応済ませ、朝からわが身を苦しめたトイレ問題も爽やかに解決し、完璧なタイミングである。

 午前10時35分の全日空沖縄行きに乗り込む。冬の陽射しが差し込む窓際の席に座ったと思ったら、そのまま爆睡。
 那覇空港に着いたのが午後1時半、柔らかな陽射し、特有の匂いが混じった風。やっぱり沖縄はいいなあ。

 午後3時発の座間味島行き高速船に乗るために、タクシーで泊港に向かう。
 泊港で、沖縄のシーカヤック・ガイド会社社長のOと映画プロデューサーのK氏と合流して高速船クイーン座間味に乗り込んで、いよいよ座間味島へと出発する。今年の座間味―那覇サバニ帆漕レースでは、前日に相模湾で初島ダブルハンド・レースがあり、その翌日、レース当日の飛行機にしか乗れず、しかもフェリーに乗り遅れて座間味まで行くことができなかった。なので、1年半ぶりの座間味島なのである。阿嘉島経由で、夕方4時過ぎに座間味島到着。

まずは、座間味村の艇庫からサバニM丸を出し、阿真港のスロープから下ろしてみんなで漕いで座間味港に回航。
今日は合宿初日である。となれば、当然前祝である。
泡盛飲み比べの夜が始まる。