ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その7)

2008年11月05日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

今年9月下旬にも、やはり東京都内で、急変した妊婦の収容先が決定するまでに3時間以上かかり、最終的に墨東病院に搬送されて脳出血の処置を受けた事例があったとのことです。今話題になっている10月の事例のわずか11日前の出来事だそうです。

当院でも最近、妊婦のクモ膜下出血にて脳外科で緊急手術をしていただいた症例を経験しました。担当の脳外科の先生にお伺いしたところ、妊婦の脳出血は専門医試験のヤマの一つでよく出題される必出項目とおっしゃってました。妊婦に重大な脳疾患の兆候が発症した場合は、兎にも角にも、一刻も早く脳外科の先生に診ていただくことが重要です。このような母体の偶発合併疾患でも、産科医が不在であるとか、ICU満床とかの周産期医学的な理由によって、収容先がなかなか決まらない事態が起こり得る現行の患者搬送システムは、できるだけ早急に改善されるべきだと思われます。

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その2)

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その3)

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その4)

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その5)

母体搬送の受け入れ先決定までに時間を要した事例(その6)

****** NHKニュース、2008年11月5日

妊婦拒否 厚労省も情報収集

 ことし9月、東京・調布市の産婦人科病院に入院していた妊婦が脳出血を起こし、地域の拠点病院を含む6つの病院から受け入れを断られた末に、意識不明の重体になった問題で、厚生労働省は情報の収集を始めました。

 この問題は、お産のため東京・調布市にある産婦人科病院「飯野病院」に入院していた32歳の女性が9月23日の未明、脳出血を起こし、6つの病院から次々と受け入れを断られた末に、意識不明の重体になったものです。

 最初に受け入れを要請された東京・三鷹市の杏林大学医学部付属病院は、リスクの高い妊婦を受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されていますが、「掛かりつけの飯野病院からの説明には脳出血などの重い症状を疑わせる内容はなく、緊急の受け入れが必要だとは思わなかった」と話しています。また当時、産科には当直の医師が2人いましたが、別の手術を抱えていたうえ、集中治療室のベッドも満床だったことから受け入れを断ったということです。その後、杏林大学病院と飯野病院が手分けをして、あわせて5つの病院に打診しましたがいずれも搬送を断られ、最初の要請から3時間後に東京・墨田区の都立墨東病院で搬送を受け入れることが決まったということです。子どもは無事産まれましたが、女性は脳出血のため意識不明の重体になり、現在も墨東病院に入院しているということです。

 東京では先月4日にも脳出血を起こした妊婦が8つの病院に受け入れを断られたあとに死亡し、お産前後の救急医療の課題が明らかになったばかりで、事態を重く見た厚生労働省は情報の収集を始めました。

(NHKニュース、2008年11月5日)

****** TBSニュース、2008年11月5日

9月にも妊婦受け入れを病院が拒否

 東京で、また妊婦の受け入れ拒否が明らかになりました。今年9月、脳内出血を起こした妊婦が6つの病院に受け入れを断られました。妊婦は4時間後、およそ25キロ離れた病院で手術を受けましたが、現在も意識不明のままです。

 「なぜこんなに文明や医療が発展した都会で、こんなに死にそうに痛がっている人を誰も助けてくれないのだろう」(8病院が受け入れ拒否、妊娠中の妻を亡くした夫 先月27日)

 8つの病院に受け入れを断られた末、妊娠中の妻を亡くした夫が、こう訴えたのは先週。

 しかし、5日、また新たな受け入れの拒否が明らかになりました。

 東京・調布市にある飯野病院。出産を間近に控え入院していた32歳の女性が異変を訴えたのは、今年9月23日の未明。嘔吐や右半身が動かなくなるなどの症状が出たため、病院の産婦人科の医師は脳出血の疑いがあると判断、東京都の総合周産期医療センターに指定されている三鷹市の杏林大学病院に、救急搬送を要請しました。

 しかし、杏林大学病院は空きのベッドがなかった他、産科医が手術中だったなどの理由から受け入れを断りました。

 「軽度の意識混濁や手のふるえがありますけれども、(容態は)安定していると報告を受けた」(杏林大学病院)

 女性が運ばれたのは、およそ25キロも離れた都立墨東病院。すでに4時間が経っていました。

 その間、都内の5つの病院に「ベッドが埋まっている」などと、受け入れを断られたということです。

 女性は出産後、手術を受けましたが、現在も意識不明の重体です。

 「産科の施設は絶対的に足りない」(武蔵野赤十字病院 院長)

 産婦人科医が、緊急手術中という理由で、女性の受け入れを断った武蔵野赤十字病院。女性の脳にも異常が起きていたことは飯野病院からの連絡で分かっていましたが、こうしたケースでは救急救命医などに加え、産婦人科医も立ち会えない限り受け入れは難しいと話しています。

 「救急医療と産科医療の連携をどうするのかは非常に大きな問題。具体的になにをやればいいのか提言をやりたいと思っています」(舛添要一 厚労相、5日)

 一方、地元医師会などを招いて周産期医療に関する緊急会議を開いた東京都、石原知事は・・・。

 「国の責任だ、都の責任だ、自治体の責任だ、みんな重層、複合的に絡まっている。それを、みんなで合議しあって解決していかないと。この問題は本当に国民が安心する状況にはならないと思いますよ」(東京都 石原慎太郎 知事、5日)

 「私の望みは、妻の死を無駄にしないで欲しい。(息子のためにも)日本一の母親だったと言える状態に世の中を変えていただきたい」(搬送を拒否され、死亡した妻の夫)

 医師不足の中でまたも起きた悲劇。具体的に改善される見通しはまだ、立っていません。

(TBSニュース、2008年11月5日)

****** TBSニュース、2008年11月5日

妊婦受け入れ拒否、杏林大病院を批判

 東京で脳内出血を起こした妊婦が、複数の病院に受け入れを断られ意識不明となった問題で、妊婦が当初入院していた病院が記者会見し、最初に受け入れを断わった大学病院の対応を「理解できない」と批判しました。

 今年9月、東京・調布市で出産のため産婦人科に入院していた32歳の妊婦が脳内出血を起こしましたが、妊婦は6つの病院から受け入れの拒否をされました。

 妊婦は4時間後、およそ25キロ離れた都立墨東病院で手術を受けましたが、現在も意識不明の状態となっています。

 この問題について、最初に受け入れを拒否した三鷹市の杏林大学病院は患者の容体についての緊急性が伝わっていなかったと説明しました。

 「もし、緊急性があって血圧が下がったり、バイタルサインが悪くなれば、当然そういう情報を頂ければ受けられた。これは総合周産期関係ないですから」(杏林大病院)

 これに対し、妊婦の受け入れを要請した産婦人科病院も記者会見し、、緊急性は伝わっていたはずだと杏林大学病院側の対応を批判しました。

 「頭の問題だからすぐに診てもらいたいと。(杏林から)これだけ返事をくれているというのは重大に感じてくれたのだと思う」(飯野病院)

 この問題をめぐっては、厚生労働省が事実関係の調査に乗り出していて、東京都も関係者から事情を聴いています。

(TBSニュース、2008年11月5日)

****** 時事通信、2008年11月5日

「頭の問題と伝えた」=妊婦の入院先、杏林大付属病院に-妊婦拒否問題

 脳内出血を起こした東京都調布市の30代の妊婦が少なくとも6つの病院から受け入れを断られ、意識不明になっている問題で、受け入れを要請した飯野病院(同市)の飯野孝一院長(62)が5日記者会見し、「杏林大付属病院には、とにかく頭の問題だから見てもらいたいと伝えた」と説明した。

 同院長は、杏林大付属病院とのやりとりは約10回にも上ったとし、「あちらからも何回も電話があり、切迫性は認識していたと思う」とした。

 同病院側は「飯野病院から脳内出血とは聞いておらず、緊急性は伝わらなかった」としている。

(時事通信、2008年11月5日)

****** 時事通信、2008年11月5日

産科・救急連携、年内に提言=厚労省懇談会が初会合

 東京都内で救急搬送された妊婦が8病院に受け入れを拒否され死亡した問題で、周産期医療と救急の連携の在り方などを話し合う厚生労働省懇談会(座長・岡井崇昭和大教授)の初会合が5日開かれ、年内に提言をまとめることで一致した。

 冒頭、舛添要一厚労相が「周産期医療と救急との連携の必要性を如実に感じている。背景に医師不足など医療体制全体の問題がある。12月まで集中審議し、いい連携策をつくりたい」とあいさつした。

 続く自由討論では、委員から「産科医不足解消には、出産などで離職した女性医師の活用が手っ取り早い」と職場環境の整備を求める意見や、医療機関の受け入れ態勢を把握する周産期医療情報システムについて「都道府県単位ではなく広域で活用できるようにするべきだ」などの意見が出た。

(時事通信、2008年11月5日)

****** 共同通信、2008年11月5日

9月にも妊婦受け入れ拒否 東京で脳内出血の30代 杏林大など複数病院

 今年9月下旬、東京都調布市のかかりつけ病院で嘔吐(おうと)などの症状を訴えた30代の妊婦が、「総合周産期母子医療センター」に指定されている杏林(きょうりん)大病院(三鷹市)など複数の病院から受け入れを断られた後、20キロ以上離れた都立墨東病院(墨田区)に運ばれて出産し、脳内出血の処置を受けていたことが4日、分かった。収容先が決まるまでに3時間以上かかった。

 搬送を依頼したかかりつけ病院側は「赤ちゃんは無事だが、母親の現在の容体は把握していない」としているが、厚生労働省は「母親は重篤な状態と報告を受けている」としている。

 同じ総合周産期母子医療センターの墨東病院など8病院による妊婦受け入れ拒否よりわずか11日前の出来事。事態を重視した厚労省は事実関係の確認に乗り出した。

 かかりつけの病院によると、妊婦は妊娠41週目で、お産のため入院中の9月23日午前零時ごろから、嘔吐や右半身が動かないなどの症状が出始めた。

 午前3時ごろ、当直医から呼び出しを受けた院長が診察し「脳の疾患の可能性が高い」と判断。杏林大病院に連絡したが、同病院は「産科医が手術中」などの理由で受け入れを断ったという。

 かかりつけの病院は「その後、都内の3病院に要請したが断られた。午前5時半ごろ、墨東病院に連絡して受け入れてもらえることになった」としている。

 妊婦を乗せた車両が墨東病院を目指し、かかりつけ病院を出発したのは午前6時20分ごろだった。

 杏林大病院は「かかりつけの病院が『受け入れ可能になるまで待ちたい』と言ったので、緊急性はないと判断した。当初は脳の疾患の疑いまでは伝えられず、分かっていればすぐに引き受けた」としている。

 かかりつけの病院は「脳の手術の必要を感じなければ、そもそも脳外科医のいる大病院を探していない。当然、症状については杏林大病院側に伝えた」としている。

 東京都は「情報は入っているが、内容については調査中なので、今の段階ではコメントできる状況にない」としている。

▽墨東病院の妊婦死亡問題

 墨東病院の妊婦死亡問題 10月4日、体調不良を訴えた東京都内の妊婦=当時(36)=が都立墨東病院など8病院に受け入れを断られ、最終的に搬送された墨東病院で出産後、脳内出血の手術を受け、3日後に死亡した。赤ちゃんは無事。墨東病院は緊急処置の必要な母子を24時間受け入れる「総合周産期母子医療センター」として都が指定した9施設の1つだが、産科医が次々退職したため、7月から土日の当直を1人態勢として急患は原則受けないことにした。10月4日の当直も研修医1人だった。

(共同通信、2008年11月5日)

****** 共同通信、2008年11月5日

「地区割り」の限界露呈 機能不全の代替システム

 東京で妊婦の搬送受け入れ拒否がまた発覚した。多摩地区の「総合周産期母子医療センター」に指定された杏林大病院から拒否された脳内出血の主婦が、3時間以上たって運ばれたのは別の地区のセンターだった都立墨東病院。関係者からは「救急搬送先が地区割りされた今のシステムの限界が露呈している」との指摘が出ている。

 妊婦の脳疾患を疑った調布市内のかかりつけの病院が当初、搬送依頼したのは、多摩地区で唯一の救急搬送先に指定されていた杏林大病院だった。

 緊急時の受け入れ先となる「総合周産期母子医療センター」は都内に9つ。8つに分けた各地区に、最低でも1つのセンターが配置されている。

 しかし、関係者は「多摩地区だけで都内のお産の3分の1近くを占めている上、隣県の山梨からも妊婦が来るため、常にいっぱいの状態」と実情を明かす。

 こうした状況もあり、23区内にある別地区の8センターが毎日交代で「多摩当番」を請け負い、杏林大病院が受け入れられない場合に、急患の対応に当たっているという。

 だが、杏林大病院から最終的に妊婦を受け入れた墨東病院までの距離は20キロ以上。今回のケースでも、最初の要請から収容が決まるまで3時間以上もかかるなど、"代替施設"を活用するシステムのほころびが表面化している。

 現場の医師からは「都は実態を調査し、制度の見直しをすべきだ」との声が出ている。

(共同通信、2008年11月5日)

****** 共同通信、2008年11月5日

「判断不十分だった」 受け入れ拒否で杏林大病院

 東京都調布市のかかりつけ病院で嘔吐(おうと)などの症状を訴えた妊婦が、複数の病院から受け入れを拒否された問題で、最初に断った杏林(きょうりん)大病院(三鷹市)が5日会見し、「(脳内出血は)専門外で、重症度の判断が十分にできなかった。搬送元とのコミュニケーションもきちんととっていなかった」と説明した。妊婦の容体について同病院は「意識がない状態と聞いている」としている。

 かかりつけ病院などによると、受け入れを拒否したのは計6病院。しかし、これらの中には共同通信の取材に「要請を受けた記録がない」としている病院もある。

 妊婦は最終的に20キロ以上離れた都立墨東病院(墨田区)に搬送された。同病院で出産後、脳内出血の疑いがあり処置を受けた。赤ちゃんは無事という。

 杏林大病院やかかりつけの病院などによると、妊婦は調布市在住で、お産のためかかりつけの病院に入院中の9月23日午前零時ごろから、嘔吐や右半身が動かないなどの症状が出始めた。杏林大病院など複数の病院から受け入れを拒否された。

 杏林大病院は「総合周産期母子医療センター」。当時、当直をしていたのは研修医を含めて2人だった。岩下光利(いわした・みつとし)副センター長は「脳内出血という診断がついていれば受け入れていた。極めてまれな症例で経験がなく、残念なことになった」と話した。

(共同通信、2008年11月5日)

****** 朝日新聞、2008年11月5日

脳出血の妊婦受け入れ断り、9月にも 

搬送先まで4時間

 東京都調布市の飯野病院に入院中の30代妊婦が、今年9月に脳出血を起こし、一報を受けた杏林大病院をはじめ6病院から受け入れを断られた末に、搬送先が見つかり運び込まれるまで約4時間かかっていたことが分かった。最終的に都立墨東病院で子どもは無事に生まれたが、「妊婦は入院して、意識がない状態」(杏林大病院)だという。都内では先月4日にも脳出血を起こした妊婦が8病院に断られ、死亡している。都は9月のケースも調査する。厚生労働省も事実関係を把握しており、都などに事情を聴く方針。

 総合周産期母子医療センターに指定されている杏林大病院(東京都三鷹市)の岩下光利教授(産婦人科)によると、かかりつけ医のいる飯野病院からの電話連絡は23日午前3時過ぎ。妊婦は出産予定日を過ぎており、前日に飯野病院に入院していた。「容体が悪くなって、軽いまひがある」という連絡だった。

 しかし、当時、杏林大病院の産科の当直医2人は、電話の前に救急搬送された別の妊婦の帝王切開中だったため、受け入れを断った。

 当直医が、受け入れまでに時間がかかると説明、かかりつけ医側は、「いつまでも待つ」と返事をしたという。

 岩下教授によると、当直医は、妊婦がそれほど緊迫した状況にあるとは思わず、陣痛の際にしばしば起こる、「(呼吸が過剰になる)過換気症候群などではないか」と判断したようだという。

 同大学病院は都内の他の周産期母子医療センターの状況がわかる情報システムで、受け入れ可能な病院をかかりつけ医に紹介。一方、当直医は多摩地区の3病院に連絡したが、断られた。

 飯野病院によると、杏林大病院には「緊急性と切迫性がある」と伝えていた。独自に杏林大のほか新宿や渋谷の病院に連絡をしたが、いずれも断られた。このとき、多摩地区の妊婦を杏林大病院が受け入れられない場合には都内の総合周産期母子医療センターが輪番制で受け入れるルールだと教えられたという。

 妊婦は午前7時10分に墨東病院に運び込まれ、帝王切開と脳の手術を受けた。

 東京都は「子どもは健康だが、母体については家族の意向もあり、言えない。搬送についてはこれから調査する」としている。

(朝日新聞、2008年11月5日)

****** 読売新聞、2008年11月5日

杏林大病院など脳出血の妊婦受け入れ拒否、意識不明の状態に

 脳出血を起こした東京都調布市内の妊婦(32)が今年9月、杏林大病院(東京都三鷹市)など、少なくとも6病院から受け入れを断られていたことが5日、分かった。

 最終的に都立墨東病院(墨田区)に搬送され、子供は無事に生まれたが、妊婦は意識不明の状態が続いているという。

 杏林大病院は妊婦や胎児の緊急治療に対応する「総合周産期母子医療センター」。先月4日には、江東区内の妊婦が8病院から受け入れを拒否され、脳出血の手術の3日後に死亡している。

 都や調布市内のかかりつけ病院などによると、妊婦は9月22日午後、出産のために入院し、23日午前0時ごろから嘔吐や右半身が動かなくなるなどの症状が出始めた。午前3時ごろ、当直医から連絡を受けた院長が診察し、脳疾患の疑いがあると判断、杏林大病院に電話で受け入れを依頼した。

 杏林大病院は総合周産期母子医療センターに指定されており、「産科医を24時間体制で2人以上確保することが望ましい」とする都の基準を満たしていたが、産科の当直医2人が帝王切開の手術中だったことから受け入れを拒否。このため、かかりつけ病院と杏林大病院で、都内の5病院に受け入れを要請をしたが、いずれも拒否された。

 午前6時ごろになって、ようやく約25キロ離れた墨東病院での受け入れが決まり、妊婦が同病院に到着したのは午前7時過ぎだった。

 かかりつけ病院側は、「脳疾患の疑いがあり、杏林大病院に緊急性は伝えた」としているが、杏林大病院は「(かかりつけ病院からは)受け入れを待てる状態だと言われた。緊急性があると分かっていれば受け入れた」と述べるなど、主張が食い違っている。

(読売新聞、2008年11月5日)

****** 毎日新聞、2008年11月5日

妊婦拒否:杏林大病院など6病院も 女性意識不明の重体に

 おう吐や半身まひなど脳内出血の症状を訴えた東京都調布市の妊婦(32)が今年9月、リスクの高い妊婦に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている杏林大病院(東京都三鷹市)など6病院から受け入れを拒否されていたことが分かった。女性は最初の受け入れ要請から約4時間後に都立墨東病院(墨田区)に搬送され出産したが、現在も意識不明の重体。子供は無事だった。

 都内の別の妊婦が10月、墨東病院など8病院に受け入れを拒否され死亡した事故の約2週間前に起きたケースで、妊婦に対する救急医療体制の不備が改めて浮かび上がった。

 この妊婦のかかりつけ病院だった調布市の飯野病院によると、女性は出産のため9月22日に入院。23日午前0時ごろからおう吐や右半身まひなどの症状が出た。脳内出血の疑いがあり、医師が外科治療が必要と判断、午前3時ごろから複数回、杏林大病院に受け入れを要請したが、「産科医が手術中で人手が足りない」と拒否されたという。

 一方、杏林大病院によると、要請を受けた時、当直医2人が手術中で、約1時間後に再要請を受けた時も術後管理や空きベッドがなかったことから受け入れられなかったという。岩下光利・同大教授(産婦人科)は「飯野病院からの連絡に切迫性はなく、外科措置が必要との認識はなかった」と話している。その後、杏林大病院は飯野病院と分担し、小平市など多摩地区の3病院と23区内の2病院に問い合わせたがいずれも受け入れを拒否されたという。

 東京都内の周産期医療システムでは、多摩地区の総合周産期母子医療センターなどで受け入れができない場合は、23区内の八つの総合周産期母子医療センターが輪番で対応することになっており、午前5時半ごろ、約25キロ離れた墨東病院での受け入れが決定。同7時ごろ、搬送されたという。

(毎日新聞、2008年11月5日)

****** NHKニュース、2008年11月5日

妊婦 6つの病院断られ重体に

 ことし9月、東京・調布市の産婦人科病院に入院していた妊婦が脳出血を起こし、地域の拠点病院を含む6つの病院から受け入れを断られた末に、意識不明の重体になったことがわかりました。東京では先月にも脳出血を起こした妊婦が受け入れを断られたあとに死亡し、お産前後の救急医療に大きな課題のあることが明らかになったばかりでした。

 意識不明になったのは、お産のため東京・調布市にある産婦人科病院「飯野病院」に入院していた32歳の女性です。

 飯野病院によりますと、9月23日の未明、女性におう吐や右半身のマヒなどの症状が出たため、地域の拠点病院である東京・三鷹市の杏林大学医学部付属病院に受け入れを要請しました。

 杏林大学病院は、緊急の治療が必要な妊婦を受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されていますが、当時、産科では別の手術を抱えていたうえ、病床もいっぱいだったことなどから、受け入れを断ったということです。

 その後、杏林大学病院と飯野病院が手分けをしてあわせて5つの病院に受け入れを打診しましたが、いずれも断られたということです。女性の搬送先は最初に受け入れを断られてから3時間後に決まり、およそ25キロ離れた東京・墨田区の都立墨東病院で手当てを受けました。子どもは無事産まれましたが、女性は脳出血のため意識不明の重体になり、現在も墨東病院に入院しているということです。

 東京では先月4日にも脳出血を起こした妊婦が、8つの病院に受け入れを断られたあとに死亡し、お産前後の救急医療に大きな課題のあることが明らかになったばかりでした。

(NHKニュース、2008年11月5日)

****** FNNニュース、2008年11月5日

9月に脳内出血した東京・調布市の妊婦、6病院から受け入れ断られ都立墨東病院で出産

 2008年9月に、脳内出血をした東京・調布市の妊婦が、杏林大学付属病院など6つの病院から受け入れを断られ、20km以上離れた都立墨東病院で出産していたことがわかった。9月23日未明、調布市の飯野病院に入院していた32歳の妊婦に、吐き気や右半身まひなどの症状が出たため、「総合周産期母子医療センター」に指定されている杏林大学付属病院など6つの病院に受け入れを要請したが、産科医が手術中などの理由で、受け入れを断られていた。結局、3時間半後に20km以上離れた都立墨東病院が受け入れ、赤ちゃんを無事出産したあと、母親は、脳内出血の処置を受け、現在も意識不明のまま入院している。

(FNNニュース、2008年11月5日)

****** 産経新聞、2008年11月5日

9月にも妊婦受け入れ拒否 都内の30代脳内出血

 東京都調布市内のかかりつけの病院で嘔吐(おうと)などの症状を訴えた30代の妊婦が今年9月、杏林大学病院(三鷹市)など複数の病院に受け入れを断られ、最終的に20キロ以上離れた都立墨東病院(墨田区)で出産し、脳内出血の処置を受けたことが4日、分かった。母子ともに命に別条はないという。

 関係者によると、9月23日未明、妊婦がかかりつけの病院で嘔吐を繰り返したため、杏林大病院へ搬送を要請。ところが同病院は「他の妊婦の帝王切開の手術中」などとして受け入れを拒否。かかりつけの病院は都内の複数の病院にも搬送要請したが、いずれも断られた。

 その後、杏林大病院に再度受け入れを要請したが、「帝王切開の手術自体は終了しているが術後の処置などが済んでおらず、新たに妊婦の搬送を受け入れることは困難」と拒否された。

 杏林大病院は、東京23区外の多摩地域で唯一「総合周産期母子医療センター」に指定されており、かかりつけの病院からは約4キロの距離。これに対し、搬送された墨東病院は20キロ以上離れていた。

 同じ総合周産期母子医療センターの墨東病院など8病院による妊婦受け入れ拒否が発生したのは、その11日後だった。

 事態を重視した厚労省は事実関係の確認に乗り出した。

(産経新聞、2008年11月5日)