コメント(私見):
以下のような経過であったと報道されています。
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10月4日(土曜日)午後7時頃に墨東病院に母体搬送受け入れ可否の問い合わせがあり、その時は産科当直医が「土日は基本的に母体搬送を受け入れていない」と回答し、受け入れ可能な医療機関名を教えた。
その後、東京都内の8病院(慶応大病院、日赤医療センター、順天堂医院、東京慈恵会医大病院、東京慈恵会医大青戸病院、日大板橋病院、東京女子医大東医療センター、東大病院)に母体搬送の受け入れ要請をしたが、受け入れ病院がなかなか決まらなかった。
午後7時45分頃、妊婦の容体が悪化し、再度、墨東病院に母体搬送の受け入れ要請があった。当直医が常勤産科医師を呼び出した。
午後8時頃、母体搬送の受け入れが可能と連絡した。
午後8時18分頃、救急車で墨東病院に到着した。救急車内で患者の意識レベルが低下した。
午後8時半頃、脳外科の当直医が対応した。
午後9時41分、帝王切開で児を娩出した。
午後10時24分、脳外科で頭部の血腫除去手術を開始した。
10月5日午前1時28分、手術終了した。
――――――――――――――――――――――
東京都内だと日本最高水準の医療機関が数多くあり、多くの医療機関に受け入れ可能かどうかを打診することが可能です。今回は、9医療機関に打診し、受け入れ病院が決定するまでに約1時間を要しました。
地方の場合だと、各医療圏で母体搬送を受け入れることが可能な医療機関はたいてい1施設に限定されますので、受け入れ可能な病院を探して苦労するという事態は今までほとんど聞いたことがありません。
私自身の場合も、現在の病院に赴任してから約20年になりますが、一人医長だった時も含めて、地元医療機関からの母体搬送の要請を断ったことは一度もありません。電話を受けた瞬間に、何も考えず即断即決で母体搬送の受け入れを受諾してます。
田舎だと症例数が少ないのでそれでも何とかなってますが、大都会では症例数が田舎とは全く比較にならないので、母体搬送をどの病院で受け入れるかを決定するシステムが非常に重要になると思われます。
****** NHKニュース、2008年10月23日
受け入れ拒否 8医療機関に
妊娠中の女性が、東京都内の医療機関から受け入れを断られたあと死亡した問題で、新たに東大病院が受け入れを断っていたことがわかりました。これで受け入れを断った医療機関は、あわせて8つになりました。
この問題は、東京に住む36歳の妊娠中の女性が、今月4日に脳内出血を起こし、都内の医療機関から次々と受け入れを断られたあと、3日後に死亡したものです。女性は、激しい頭痛を訴えて東京・江東区の掛かりつけの診療所に運ばれたあと、医師が都立墨東病院をはじめ、あわせて7つの医療機関に受け入れを要請していましたが、これとは別に、診療所で待機していた救急隊員が、文京区の東京大学附属病院に受け入れを依頼していたことがわかりました。しかし、東大病院側は、女性が赤ちゃんを出産した場合に必要な新生児用の集中治療室の空きがなかったため、受け入れを断ったということです。これで、女性の受け入れを断った医療機関は、あわせて8つになりました。
(NHKニュース、2008年10月23日)
****** NHKニュース、2008年10月23日
妊婦死亡“必要な対策を”
脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の7つの医療機関から受け入れを断られたあと死亡した問題で、民主党の厚生労働関係の会議が23日開かれ、出席した議員からは、同じようなことが起きないよう、直ちに必要な対策をとるべきだという意見が相次ぎました。
今月4日、脳内出血を起こした東京に住む36歳の妊娠中の女性が都内の7つの医療機関から次々と受け入れを断られ、出産した3日後に死亡したもので、会議には厚生労働省の担当者も出席しました。この中で、出席した議員からは「厚生労働省は、患者のたらい回しを許している行政としての責任を重く受け止めるべきだ」として、同じようなことが起きないよう医師を増やすなど、直ちに必要な対策をとるべきだという意見が相次ぎました。また、今回の問題では、緊急時に患者の受け入れが可能な病院がどこにあるか調べるシステムが機能していなかったという指摘もあるとして、改善を求める意見も出されました。これに対して、厚生労働省の担当者は「現在、東京都を通じて、女性が死亡した詳しい経緯を調査しており、できるだけ早く詳細を把握するよう努めたい」と述べました。
(NHKニュース、2008年10月23日)
****** FNNニュース、2008年10月23日
妊婦たらい回し死亡問題 舛添厚労相「緊急時に医師が連絡を取れる態勢作りを」
脳内出血を起こした出産間近の女性が、7つの医療機関から受け入れを断られ、死亡した問題で、舛添厚生労働相は23日朝、FNNの取材に対して、医師の連携不足を指摘し、再発防止のため、緊急時に医師が連絡を取れる態勢づくりをしていきたいと述べた。
舛添厚労相は午前8時ごろ、「本当にお悔やみを申し上げるしかないんで。お医者さん間のネットワーク、それの連携をちょっと強めないと、要するに箱(周産期医療センター)だけではだめだという感じですね。こういうことが二度と起こらないように、態勢の整備をきちんとやっていきたい」と述べた。
今回の問題は、出産間近だった36歳の女性が10月4日、脳内出血を起こし、都立墨東病院など、7つの医療機関から次々と受け入れを断られ、1時間以上あとに墨東病院に運ばれ、帝王切開で出産し、3日後に死亡したもの。
舛添厚労相は、周産期医療センターを設置するだけではなく、地域の医師会にも協力を求めて、さまざまなケースに対応できるよう、連携を強化することが必要だとの考えを示した。
(FNNニュース、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
当初、脳内出血と分からず 都「当直医の判断妥当」 かかりつけ医と食い違い 妊婦受け入れ拒否
東京都内で7カ所の病院に受け入れを断られた妊婦(36)が、いったん拒否した都立墨東病院で脳内出血の手術を受け死亡した問題で22日、都と墨東病院が記者会見し「当直医は当初、脳内出血だと分からなかった。分かっていれば最初から受け入れたはず」と説明した。その上で「一連の判断は妥当」と主張し、医療過誤ではないとの認識を示した。
一方、墨東病院に受け入れを依頼した江東区のかかりつけの川嶋一成(かわしま・かずなり)産婦人科院長も会見し、当初の妊婦の容体について「自宅に救急車が到着する直前から頭が痛いと訴えた。尋常ではなく頭部の疾患を疑った」とし、病院に「七転八倒している状況を伝えた。頭を抱えて『痛い、痛い』と言っていると伝えた」と説明、双方の認識に食い違いがあることが判明した。会見では「今後、子どもの顔が見られない母親を作ってほしくない」とする遺族のメッセージが読み上げられた。
かかりつけの産婦人科医院の医師が、当初から脳内出血の診断を墨東病院の当直医に伝えていたのではないかとの質問に、都の幹部は「詳しいやりとりは調査中で分からない」と答えた。
また当直医は、受け入れ可能な周産期医療センターなど3病院を端末で検索。かかりつけ医はそれらを含む計8病院に問い合わせたが、7病院で断られたことも会見で判明。1カ所は「受け入れる」としたものの、その時点で既に墨東病院への搬送が決まっていたという。
断った病院の当直体制について、都側は「調べてみないと分からない」とした。
厚生労働省の基準で総合周産期医療センターは24時間体制で産科を担当する複数の医師の勤務が望ましいとしているが、墨東病院は7月から週末の当直が1人態勢になり、基本的に搬送を受け入れていなかった。
都幹部や病院幹部は「産科医の確保は懸命にしていた。週末に受け入れが困難になることは地元の医師会などにも周知していた」と話した。
▽総合周産期医療センター
総合周産期母子医療センター 胎児の異常や切迫流産など、リスクの高い妊娠に対応する医療機関で、2008年5月末現在、全国で74カ所が指定されている。複数の産科医を配置し、新生児用の集中治療室などを備え、24時間態勢で運営。厚生労働省は全都道府県に設置するよう求めているが、佐賀、山形の両県では未整備。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
拒否の経緯、詳しい検証を
【解説】大都会・東京で7病院から救急搬送による受け入れを拒否された妊婦の死亡が明らかになった。
舞台となった都立墨東病院は、緊急時の受け入れ先として都の指定を受けている大規模施設。都は搬送を断った当直医の判断は妥当だったとするが、妊婦の当初の症状をめぐり、受け入れを要請したかかりつけ医側との間に認識の食い違いもあり、「産科医不足」が原因と割り切っていいものかどうか疑問が残る。
受け入れ拒否について都側は、背景に組織体制の問題があると強調。
しかし、そもそも墨東病院は緊急事態に対応するためにスタッフを充実させているはずの「総合周産期母子医療センター」だ。
かかりつけ医の要請をいったん断ったものの、約1時間後には受け入れた点についても、患者側にしてみれば「最初から迅速な対応を取れたのでは」との印象はぬぐえないだろう。
医療現場では、医師が難しい症例を回避する"萎縮(いしゅく)"が広がっているとされる。産婦人科医が逮捕、起訴された福島県立大野病院事件の後遺症との指摘もある。
崩壊の危機にあるとされる医療が信頼を獲得するためには、今回の原因を単に医師不足だけに求めるのではなく、経緯について詳細に確認し、あらゆる角度からの議論を進める必要があろう。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
「妥当」「問題ない」 病院、繰り返し強調
妊婦の駆け込み寺である総合周産期医療センターが、救急患者を断っていた。出産後に脳内出血の手術で死亡した妊婦(36)の受け入れをいったん拒んだ都立墨東病院。22日の記者会見では「当直医の判断は妥当」「問題ない」と繰り返し強調した。
「このような事態になり、亡くなられた方やご遺族に心よりお悔やみ申し上げます」。一緒に会見した都病院経営本部の及川繁巳(おいかわ・しげみ)経営企画部長は冒頭、沈痛な表情で頭を下げた。
女性は最終的に墨東病院が受け入れるまで、同病院を含む7病院から診療を断られた。「妊婦のかかりつけ医は当初から脳内出血の診断を当直医に伝えていたのではないか」。記者の質問は病院側の判断の是非に集中した。
及川部長らは「吐き気や下痢の症状が連絡されたため、脳内出血との認識はなかった。脳内出血と分かれば、最初から受け入れていた」と主張した。
一方「かかりつけ医と当直医の詳しいやりとりは知らない」とも。「問題がない」と判断した根拠について、十分な説明はなかった。
墨東病院の林瑞成(はやし・ずいせい)周産期センター産科部長は「産科医自体が少ないし、目指す人も少ない」と医師確保に苦労している実情を訴えた。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
七転八倒、苦しむ妊婦 「分かってほしかった」 医院が会見で遺族心情も
「痛い、痛い」。かかりつけの医院で頭を抱えて七転八倒する妊婦。わずか1キロ離れた大病院の当直医は、こう答えたという。
「1人当直なので受け入れられない」
脳内出血を起こした妊婦が、7カ所もの病院に受け入れを拒否された末に死亡。かかりつけ医院(江東区)が22日夜になって記者会見し、都立墨東病院とのやりとりなどを明らかにした。
「今後、子どもの顔が見られない母親を作ってほしくない」。会見の冒頭、5の橋産婦人科の川嶋一成(かわしま・かずなり)院長(49)は、遺族からのメッセージを読み上げた。
川嶋院長によると、妊婦は4日夕、自宅で下痢や嘔吐(おうと)の症状を訴えた。夫が同日午後6時半ごろ119番をかけたが、自宅に救急車が到着する前から「頭が痛い」と苦しみ出した。
医院に搬送され、すぐに採血や腹部の超音波検査を実施。川嶋院長は「妊娠のトラブルではないことを確認した。尋常でなく、頭部の疾患を疑った。緊急性があると判断した」。診察した塩野結子(しおの・ゆうこ)医師(38)も脳内出血を疑った。
家族や救急隊が見守る中、塩野医師は墨東病院に連絡。「頭を抱えて『痛い、痛い』と言っている」と以前からの知り合いだった当直医に伝えた。
疾患名まで特定して伝えたわけではないが、塩野医師は「頭部の疾患との意味を込め、依頼した。急ぐ状態を察してほしかった。個人的な意見が先走るのは避けたいが、分かってほしかった」と声を落とした。
墨東病院は2度目の要請で受け入れを決めたが、搬送される救急車の中で妊婦は意識を失った。わずか1キロ先の同病院にたどり着くまでに要した時間は1時間20分。川嶋院長は「一生懸命やった中で、これが現実。状況をみんなに理解してほしい。今後も墨東との協力を密にするしかない」と訴えた。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
墨東病院の対応
東京都が発表した妊婦に対する都立墨東病院の対応は次の通り。
【10月4日】
午後7時ごろ 東京都江東区の地元産婦人科医師から都内の妊婦(36)の受け入れ可否問い合わせ。当直医が「土日は基本的に母体搬送を受け入れていない」と回答、受け入れ可能な医療機関名を教える
午後7時45分ごろ 妊婦の容体が悪化し、他の医療機関が受け入れ困難だったため、再度母体搬送の依頼。当直医が産科の医師1人を呼び出す
午後8時ごろ 地元産婦人科医師に母体搬送が受け入れ可能と連絡
午後8時18分 救急車で墨東病院に到着。救急車内で意識レベル低下
午後8時半ごろ 脳卒中が疑われるため、脳外科の当直医が対応
午後9時41分 帝王切開で出産
午後10時24分 頭部の血腫除去手術を開始
【5日】
午前1時28分 手術終了
【7日】
午後8時31分 脳内出血による死亡確認
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
最初に頭痛ちゃんと伝えた
妊婦のかかりつけの川嶋一成(かわしま・かずなり)・五の橋産婦人科院長の話 患者の女性が頭が痛いというのが一番の搬送理由。墨東病院には最初に、そのことをきちんと伝えている。脳外科と産婦人科の両方が必要なので、墨東病院に連絡した。言い分が違うと言うとけんかになるし、反論するわけではない。患者や赤ちゃんの命を預かる者として、事実と違う話が独り歩きすると焦点がずれる。事実を伝えることで、これから先どうしたらいいのかということを国民みんなで判断してほしい。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
要請先の病院名を公表
東京都は22日、死亡した妊婦(36)のかかりつけ医院が都立墨東病院(墨田区)のほかに、搬送先として問い合わせた病院7カ所を明らかにした。
7病院は、慶応大病院(新宿区)▽日赤医療センター(渋谷区)▽順天堂医院(文京区)▽東京慈恵会医大病院(港区)▽東京慈恵会医大青戸病院(葛飾区)▽日大板橋病院(板橋区)▽東京女子医大東医療センター(荒川区)。
都によると、東京女子医大東医療センターは受け入れを了承したが、その時点では墨東病院への搬送が決まっていたという。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
救急にかかわる医師不足 識者談話
日本産科婦人科学会常務理事の岡井崇(おかい・たかし)昭和大教授の話 そもそも救急部門にかかわる産科医の数が絶対的に少ない上、医師や病院の適正な配置ができていない状況が問題の大きな原因だ。東京都内であっても人手不足は深刻で、産科医はぎりぎりの状態で診療を続けている。都立墨東病院や、当直だった研修医の責任を追及すべきではない。計画的な病院の設置ができるよう行政などと協議を進めることが重要だ。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
妊婦死亡は極めて遺憾 官房長官
河村建夫官房長官は22日午後の記者会見で、東京都内の妊婦が7カ所の医療機関に診療を断られ出産後に死亡した問題について「極めて遺憾だ。亡くなられた方に心からお悔やみを申し上げたい。原因をきちんと究明し、早急に再発防止措置を取らないといけない」と述べた。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
崩れた「最後のとりで」 産科医不足、都心にも影
多くの病院が集まる東京都でも22日、妊婦の救急搬送をめぐる悲劇が明らかになった。都が24時間対応可能な「総合周産期母子医療センター」に指定した都立墨東病院(墨田区)ですら、産科医不足から週末は急患の受け入れを制限していた。母子の命を救うための「最後のとりで」はなぜ崩れたのか。
▽欠員
「ぎりぎりの人数で当直をやってきた。先生たちのやる気の灯を消したくないので、苦しいけれど頑張ってる」。問題発覚後、墨東病院の幹部の1人はそう打ち明けた。
同病院産科が望ましいと定めた常勤医の定数は9人。だが退職者が相次いで数年前から欠員状態が続き、現在は常勤医は4人しかいない。このため、研修医も含めて通常2人で回してきた当直を7月からは土日は1人とし、土日の緊急搬送を原則断ることにした。
今月4日、土曜日の夜。江東区内の産婦人科医院から受け入れ要請があった日も当直医は研修医1人だった。再度の要請を受けて林瑞成(はやし・ずいせい)産科部長を呼び出し、妊婦を受け入れたのは最初の要請の約1時間後。36歳の主婦は帝王切開で男の子を出産後、脳内出血の手術を受けたが、赤ちゃんの顔を見ることなく3日後に息を引き取った。
▽取り合い
22日午後、都庁で開かれた記者会見。林部長は「当直がベテランなら受け入れたのでは?」との質問に対し、「そうかもしれない。産科救急はやる人間が少なく、やっと来てくれた若い先生に当直をさせなければいけない。すべて負わせることはできない」と苦渋の表情をにじませた。
総合周産期母子医療センターは母体や胎児の集中治療に対応できる高度な医療機関として指定され、国の基準は「24時間体制で複数の産科医が勤務することが望ましい」と定めている。
都は墨東病院から相談を受けて産科医不足を把握していたが、センター指定を外さなかった。
会見に同席した都病院経営本部の及川繁巳(おいかわ・しげみ)経営企画部長は墨東病院の危機的状況に3カ月間も手だてができなかったことについて問われ「深刻に受け止めている。今、医師は取り合い。2人当直体制が復活できるよう、あらゆる手段を尽くして確保したい」と言うのが精いっぱいだった。
▽都会の死角
厚生労働省は、2006年夏に奈良県で意識不明になった妊婦が10カ所以上の病院に受け入れを断られた末に死亡するなど各地で問題が相次いだことを重視。総合周産期母子医療センターの整備を切り札として、全都道府県への設置を目指している。東京は既に墨東病院など9カ所を整備した「先進地」だった。
だが、総務省消防庁の調査によると、07年に救急隊が妊婦を搬送しようとして医療機関から10回以上拒否されたケースは全国で53件あり、東京はそのうち31件を占めていた。
今回の問題でも当初の説明について、妊婦のかかりつけ医が「頭痛で七転八倒していると伝えた」とし、都側は「脳内出血とは認識していなかった。最初から知っていれば受け入れていた」と食い違う。しかし医師が確保できていれば起きなかった問題で、都心でも安心して子どもが産めない現状が際だった形だ。
厚労省の担当者は今回の問題について「都の調査を待たないと何とも言えない」としながら「病院が1カ所しかない地方と比べて、逆に『うちでなくても、ほかにあるだろう』という意識が都市部にはあるのかもしれない」と漏らした。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
7病院から直接聞き取りへ 妊婦死亡で厚労省 一両日中にも実施
東京都内で7カ所の病院に受け入れを断られた妊婦(36)が、都立墨東病院(墨田区)で脳内出血の手術を受け死亡した問題で、舛添要一厚生労働相は23日、国として事実関係を検証するため、診療を断った病院に対し独自に聞き取り調査する方針を決めた。一両日中にも実施する。国が直接、地域の医療機関への調査に乗り出すのは異例という。
同省は、断った病院が産科医療の基幹的な施設や国内有数の大規模病院だったことを重視。国の医療政策に問題がなかったかどうか確認する必要があるとしている。
都などによると、妊婦は4日、吐き気などを訴え、かかりつけの医院に救急車で搬送された。かかりつけ医院は深刻な症状だと判断し、都立墨東病院に受け入れを要請。しかし同病院から断られたほか、慶応大病院(新宿区)、日赤医療センター(渋谷区)など6病院も相次いで受け入れを拒否。断った理由は「新生児集中治療室(NICU)が満床」「当直に脳外科医がいない」などだった。
これら7病院以外に、東京女子医大東医療センター(荒川区)だけは受け入れを了承したが、その時点では墨東病院への搬送が決まっていたという。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
検索の更新、1日2回以上 病院の最新情報反映できず
東京都内で7カ所の病院に受け入れを断られた妊婦(36)が出産後に脳内出血で死亡した問題で、最初に拒否した都立墨東病院の当直医が受け入れ可能な病院を検索したシステムは1日2回以上の更新しか義務付けられていないことが23日、分かった。
当直医が検索し、「受け入れ可能」として妊婦のかかりつけ医に教えた東京慈恵会医大病院など周産期医療センターに指定された3病院はいずれも「満床」や「処置中」の理由で断っていた。検索システムの情報が最新の診療態勢を反映していなかった形で、都は当時の状況を調べている。
都によると、検索システムは病院ごとに「産科空床」「ハイリスク患者」「産科手術」などの項目に○か×を表示。土日も含め、1日2回以上の更新を義務付け、病院側が更新を怠ると、その病院のシステムには警告画面が表示され、使えなくなる。
都は平日は更新されたかどうかをチェックし、更新されていなければ病院に電話をかけて注意を促しているが、妊婦が搬送された4日は土曜日でチェックしていなかったという。
受け入れを断った日赤医療センターは「専用の6ベッドがすべて埋まっており、別の母体搬送を受け処置中だった」と説明。東京慈恵会医大病院は「母体、胎児の両方をケアする可能性があると判断したが、新生児集中管理治療室が満室だった。システムに入力していなかったことはない」とし、慶応大病院は「受け入れられる態勢だったが、感染症の疑いがあると判断し、個室ベッドを探したが満床だった」と話している。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
医者は一生懸命やっている 石原知事
東京都内の妊婦が都立墨東病院で脳内出血の手術を受け死亡した問題で、石原慎太郎知事は23日、都庁で報道陣に対し「医者は一生懸命やっている。みんな命懸けでやっているんだから、そういう事情も配慮して、すべてを否定するみたいな報道をしてもらいたくない」と述べた。
知事は「墨東病院を弁護するつもりじゃない」としながら「臨月の女性が脳出血を同時に起こしたという大変な事態で、めったにないケースが起こった」とした。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 共同通信、2008年10月23日
救急搬送先選ぶ基準作成へ 消防庁、容体に応じて判断
総務省消防庁は23日、救急隊員らが患者や負傷者を運ぶ際に、重症度や緊急度に応じて搬送先の医療機関を選ぶ基準を作成する方針を固め、同庁の有識者検討会に提案した。今後、基準の内容などについて具体的に議論する。
国は患者らの容体と搬送先について明確な基準を定めておらず、自治体が独自に判断しているケースが多い。基準作成は救命救急センターなど高度医療機関への集中を防ぐとともに、医療機関による救急患者の受け入れ拒否問題の改善にもつなげることが狙い。
消防庁は、例えば患者が胸の痛みを訴えている場合、心電図のデータや呼吸困難の程度などに応じて、適切な医療機関を判断できる基準を想定。症状に応じて治療をスムーズに受けられるようにすることを目指している。
検討会では、東京都内で7カ所の病院に受け入れを断られた妊婦(36)が死亡した問題について、石井正三委員(日本医師会常任理事)から「(医療に関する)予算を削って質を維持するのは無理だ」とする発言もあった。
(共同通信、2008年10月23日)
****** 朝日新聞、2008年10月23日
都立墨東病院、搬送先探す役割果たさず 妊婦死亡事故
脳内出血を起こした東京都の妊婦(36)が都立墨東病院など7病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、受け入れ要請を断った都立墨東病院が周産期医療センターとして搬送先を探す役割があったにもかかわらず、かかりつけ医に任せていたことが分かった。また、都の受け入れ病院を検索するシステムも機能していなかった。
墨東病院は都指定の総合周産期母子医療センター。指定基準では「担当する地域の患者の搬送先確保に努める」とあり、同病院で患者を受け入れられない場合、他の周産期母子医療センターなどと連携して搬送先を探す役割が課されている。
しかし、都は「今回はかかりつけ医が搬送先を探すと言っていたので任せた」と説明。墨東病院側も「当直医が1人しかいないこちらの事情を知っているかかりつけ医が、気を使ってくれたのではないか」としている。
ただ、墨東病院はかかりつけ医に対し、都の周産期母子医療センターのネットワークシステム上で受け入れ可能となっていた東京慈恵会医科大付属病院、慶応義塾大学病院、日本赤十字社医療センターを紹介したという。
このネットワークシステムには、危険度が高い出産に対応できる医療機関として都が指定する周産期母子医療センター(都内22カ所)と同程度の機能を持つ2病院が参加。各病院は「手術が可能か」「ベッドに空きはあるか」など変更があるたびに入力し、どこが患者を受け入れられるか端末で見ることができる。
しかし、かかりつけ医が3病院に受け入れを要請したところ、いずれの病院も満床などを理由に拒んだという。都は、なぜ受け入れ可能となっていた病院が妊婦を受け入れられなかったのか、システムがうまく機能しなかった原因を調査する方針だ。
都によると、4日夕、江東区の女性が自宅で下痢や嘔吐(おうと)、頭痛を訴え、救急車でかかりつけの江東区内の産婦人科医院・五の橋産婦人科に運ばれた。かかりつけ医は脳内出血の疑いがあると診断し、午後7時ごろ、墨東病院に受け入れを依頼。しかし、断られ、他の搬送先を探した。
搬送先探しはかかりつけ医が担当し、7病院に断られ、午後7時45分に再度、墨東病院に要請し、午後8時ごろに受け入れが決まった。その間、妊婦の症状は悪化し、墨東病院に着いたときには意識不明に陥っていたという。
(朝日新聞、2008年10月23日)
****** 朝日新聞、2008年10月23日
順天堂、慈恵医科大、慶応…大病院が次々拒否 妊婦死亡
脳内出血とみられる妊娠9カ月の東京都内の女性(36)が、救急搬送を断られた末に亡くなった問題で、受け入れを拒否した病院は、都立墨東病院(墨田区)のほか、大学病院など6病院だったことが分かった。ほとんどの病院はハイリスクの出産に対応する「地域周産期母子医療センター」などに指定されていた。
救急車で運ばれてきた妊婦の異変に気づいた江東区亀戸6丁目、「五の橋産婦人科」(川嶋一成院長)の医師は、墨東病院に断られた後、周産期母子医療センターのネットワークで診察可能な病院を探したという。
この医師は、順天堂大学医学部付属順天堂医院(文京区)に4日午後7時半すぎ、「妊婦が吐き気や下痢、激しい頭痛を訴えている」として受け入れを依頼した。医院側によると、当日の産科・婦人科の当直医は2人いたが、いずれも別の出産に対応していた。産科・婦人科の計61床も満床で、受け入れは不可能と答えたという。
さらに医師は東京慈恵会医科大付属病院(港区)にも電話。ベッド数9の新生児集中治療室(NICU)は満床だったうえ、前日に生まれた双子を管理中で、当直医2人は手が回らなかったという。産科には当直医も2人いたが、破水した妊婦が待機中で「受け入れられるような状況ではなかった」という。
日本赤十字社医療センター(渋谷区)は、6床の母体胎児集中治療室が満床なうえ、別の妊婦も搬送されていたため、当直医3人では対応できないとして搬送を断った。センターによると、「電話では切迫した状況がうかがえなかった」といい、「救急患者はかなり受け入れてはいるが、集中治療室が満床の場合には断らざるをえない」という。日本大学医学部付属板橋病院(板橋区)も、12床の集中治療室が満床で断るしかなかったと説明。当直の産科医が3人いたが「ベッドがないなら断らざるをえない」と話した。
慶応義塾大学病院(新宿区)では、「下痢、嘔吐(おうと)、頭痛の症状がある」という医師の言葉を聞いて感染症の疑いがあると判断。産科の個室の空きを確認したが埋まっていたため、受け入れられなかったという。東京慈恵会医科大学付属青戸病院(葛飾区)は、もともとリスクの高い新生児の対応ができないうえ、当日は脳外科医の当直医が不在だったと説明した。
(朝日新聞、2008年10月23日)
****** 東京新聞、2008年10月23日
受け入れ拒否、妊婦死亡 『みんなギリギリ』墨東病院 産科医不足浮き彫り
脳内出血を起こした出産間近の妊婦(36)が七つの医療機関に受け入れを断られ、その後に死亡した問題は、産科医不足にさらされる医療現場の危うい実態も浮き彫りにした。地元医院からの最初の要請を断った墨田区の都立墨東病院は「複数の当直医をどうしても手当てできず、原則として救急搬送は断っていた。みんなギリギリのところでやっている」と訴えた。【石川修巳】
都によると、墨東病院は妊産婦の救命救急に二十四時間対応する「総合周産期母子医療センター」として都の指定を受けており、周産期医療を支える中核病院の一つ。都の基準では「複数の医師の確保が望ましい」とされるが、医師の退職で二人の当直体制が維持できず、七月から休日には一人体制としていた。
同病院の常勤産科医は現在、四人。都が提示する定数の九人を大きく下回っている。
同病院周産期センターの林瑞成産科部長は「産科医を簡単に増やせる状況ではなく、産科救急を目指す人はもっと少ない。その中で、どうしたら安全が維持できるか、関係機関と話し合っている」と話す。医師確保のため大学医局への働きかけや待遇改善、女性医師の短時間雇用など「打てる手は打っている」(病院経営本部)という。
都内の産科医は一九九六年の千五百七十三人から、二〇〇六年には千四百十一人に減少している。
都の周産期医療協議会による〇八年三月の報告では「予想以上の減少傾向」と指摘。▽女性医師自身の出産や育児のための離職▽医療訴訟の多発などで新たな産科希望の医師の減少-などの要因があると分析している。
(東京新聞、2008年10月23日)
****** 時事通信、2008年10月23日
7病院から聞き取り調査へ=妊婦受け入れ拒否-厚労省
東京都内で救急搬送された妊婦が7つの医療機関に受け入れを拒否され死亡した問題で、厚生労働省は23日、これら7つの医療機関から近く聞き取り調査することを決めた。なぜ妊婦の受け入れを拒否したのかを直接聞き、当時の経緯に問題がなかったか調べる方針だ。
同省は、病院が多い東京都で相次ぐ受け入れ拒否から死亡事例が起きた事態を重視しており、いったん受け入れを拒否し最終的に受け入れた都立墨東病院(墨田区)を所管する都の担当者からも既に事情を聴いた。
(時事通信、2008年10月23日)
****** 時事通信、2008年10月23日
「七転八倒」尋常でない頭痛=産科医療の現状に理解を-妊婦死亡で掛かり付け医
脳内出血を起こした妊婦(36)が7病院に受け入れを断られ死亡した問題で、妊婦が通院していた五の橋産婦人科(東京都江東区)の医師らが22日夜に記者会見。妊婦が尋常でない痛がり方で頭痛を訴えていたとし、脳神経外科のある病院に搬送を依頼した経緯を説明した。
川嶋一成院長は、搬送受け入れ先が決まるまで1時間ほどかけて依頼することは常にあるとし、「複数の科にまたがる搬送は非常に難しい。現状がこういう状況であることを皆さんに理解していただきたい」と述べた。
同院長と、当日対応した塩野結子医師によると、4日午後6時ごろ、妊婦の夫から下痢と嘔吐(おうと)を訴える電話があり、具合が悪ければ救急車で来院するよう指示。午後7時少し前に到着した時には、激しい頭痛を訴えていたという。
妊娠状態に問題はなく、頭部疾患を疑って搬送を依頼。都立墨東病院には「当直が1人で対応できない」と断られた。電話した塩野医師は「頭を抱えて痛い痛いと七転八倒している状態をそのまま伝えた。脳出血とは言っていない」と説明。電話を受けた医師がどう判断したかは「分からない」とした。
並行して救急隊員が病院を探し、脳疾患だけなら受け入れ可能な病院があったが、妊婦には対応できず、最終的に墨東病院が受け入れるまで約1時間20分かかった。
複数の病院に断られたことに対し「みんな頑張ってるとしか思えなかった」と塩野医師。搬送する際、目の前で急激に妊婦の容体が悪化していき、「自分の無力さを感じた」とつらそうに話した。死亡翌日に来院した夫からは「この病院に来てよかった」と言われ、涙したという。
(時事通信、2008年10月23日)
****** 毎日新聞、2008年10月23日
妊婦受け入れ拒否 都心でも産科崩壊寸前
◇医師不足、拠点まで--当直1人、土日対応に限界
都立墨東病院が今月4日、36歳の妊婦の受け入れをいったん拒否し、その後妊婦が死亡した問題は、緊急を要する妊婦に対する医療体制の不備や医師不足が東京など大都市にも及んでいることを示した。周産期医療の拠点病院でも医師の勤務実態は厳しく、搬送のための連絡態勢にも課題を残した。
「亡くなられた方、そしてご遺族の方々に心よりお悔やみ申し上げます……」
22日午後3時すぎ、東京都庁で開かれた記者会見。立ち上がって頭を下げたのは病院経営本部の及川繁巳・経営企画部長1人だけで、残りの説明者4人は座ったまま。しかも「おわび」ではなく「お悔やみ」。今回の問題での都の複雑な立場を物語っていた。
墨東病院は一報を受けた4日午後7時の段階で、女性の症状をどう認識していたのか。
会見で同病院の林瑞成(ずいせい)・周産期センター産科部長らは「下痢と吐き気があって、頭痛が少しあるという状態での依頼だった。一般的には感染症を疑うべき症状」と繰り返した。
当時、産科の当直医として連絡調整に当たっていたのは経験4年の医師1人。適切な判断が疑われる背景には、医師不足で進む周産期医療の形骸(けいがい)化がある。
都は同病院を「総合周産期母子医療センター」に指定しているが、基準は「複数の医師が24時間診療できることが望ましい」というあいまいなものだ。産科スタッフは常勤医の定数を9人としているが、法律や内規などで義務付けられたものではない。現状は常勤医の4人に加え▽非常勤のシニアレジデント(研修医)2人▽非常勤医師2人▽応援の非常勤医師7人--で日常業務をやりくりしているという。
以前からも産科医不足に悩まされ、06年11月からは新規の一般分娩(ぶんべん)患者の受け入れを停止した。今年6月末にシニアレジデント1人が退職し、7月からは土日の当直は1人態勢に切り替え、土日の救急の受け入れを制限していた。それでも07年度の母体受け入れ数は199件で都内の同センター9施設の平均よりも約90件多く、林部長は「この人数でも頑張ってやっている」と理解を求めた。
総務省消防庁が今年3月にまとめた07年の妊婦の救急搬送の実態調査によると、昨年全国で10回以上受け入れ拒否された53件のうち31件が都内。また、救急搬送されるまでに30分以上かかったのは264件、2時間以上は6件でいずれも全国最多。首都・東京の周産期医療は限界近くまで疲弊しているといえる。
都内の産科医は06年に1411人となり、88年の1813人に比べ2割以上も減っている。都福祉保健局の吉井栄一郎・医療政策部長は「厳しい状況の中で役割分担をし、他の圏域からの応援ができる仕組みを作りたい」と話し、医療機関同士の協力態勢の再構築を急ぐ考えを示した。【木村健二、堀智行】
◇搬送調整役を設置--大阪・千葉
妊婦の命にかかわる出産はまれではない。日本産科婦人科学会が04年に実施した調査によると、約12万人の分娩で32人が死亡した。うち、今回の妊婦と同じ脳内出血も4人。延べ417人が生死をさまよい、妊婦の250人に1人が命にかかわる状態に置かれた。久保隆彦・国立成育医療センター産科医長は「重症例は必ず発生する。危険度が増す高齢出産も増えている」と話す。
現行体制の限界を指摘する見方もある。総合周産期母子医療センターは、危険度の高い出産の「最後のとりで」と考えられ、未熟児など新生児の救命を目的に設置された。現在45都道府県で74病院が指定されている。しかし、母体救命の設備を必須としていない。母体の救命を優先するならば、一般の救命救急センターに搬送したいが、多くの家族は「胎児も助けてほしい」と希望するため、総合周産期母子医療センターへ搬送される。ある産婦人科医は「結果的に母親への対応は後手に回る」と打ち明ける。
緊急を要する妊婦の搬送体制にはどう対応するのか。奈良県橿原市の妊婦が搬送中に死産した問題を受け、大阪府は搬送先の調整に当たるコーディネーターを昨年11月に全国で初めて設置。千葉県でも24時間対応のコーディネーターを置いた結果、妊婦の県外搬送が減ったという。
「受け入れ拒否」を防ぐ取り組みも求められるが、産院を経営する医師は「施設やシステムが構築されても、訓練と当事者意識が徹底されないと再び起きかねない」と指摘する。【永山悦子、奥野敦史、清水健二】
◆妊婦死亡までの経過◆
<4日(土)>
午後7時ごろ 女性(36)が江東区のかかりつけの産婦人科医院に搬送される。主治医が墨東病院に受け入れの可否を問い合わせるが、当直医は「土日は基本的に母体搬送を受け入れていない」と説明。連絡した計7病院に断られる
同45分ごろ 主治医が再び墨東病院に受け入れを依頼。当直医が外にいた産科部長に緊急登院を要請
同8時ごろ 墨東病院が産婦人科医院に「受け入れ可能」と連絡
同18分 女性が墨東病院に到着。救急車内で意識レベルが低下し、到着時には呼吸停止状態に
同9時41分 帝王切開で胎児が生まれる(病院側が胎児から先行して手術を進めることを説明し、家族は同意)
同10時24分 女性の頭部の手術を開始
<5日(日)>
午前1時28分 頭部手術が終了
※その後、女性の症状が悪化
<7日(火)>
午後8時31分 女性が死亡
(毎日新聞、2008年10月23日)
****** 毎日新聞、2008年10月23日
妊婦受け入れ拒否死亡:産科医「頭部疾患伝えた」 病院側は「脳出血疑えず」
妊娠中に脳内出血を起こした東京都内の女性(36)が都立墨東病院など7病院に受け入れを断られた後に死亡した問題で、最初に女性を診察した江東区の「五の橋産婦人科」の医師が22日夜、記者会見した。「(受け入れを要請した)墨東病院の当直医に(女性は)頭が痛くて痛くて七転八倒しているニュアンスを伝えた」と証言し、「脳内出血が疑われる症状は伝わらなかった」とする墨東病院側の説明に反論した。
会見したのは、塩野結子(ゆうこ)医師(38)。会見は遺族の同意をもとに開かれ、川嶋一成院長と小西貞行弁護士が同席した。塩野医師によると、女性は初めての妊娠で定期的に検診を受け、妊娠35週と4日目だった。4日午後6時に夫から「下痢と嘔吐(おうと)があり、食中毒かもしれない」と電話があり、救急車で来院するよう伝えた。救急車は同52分に医院に到着し、夫は「自宅に救急車が着く直前に『頭が痛い』との訴えがあった」と話し、本人も頭痛を訴えたという。
採血と超音波で妊娠によるトラブルがないことを確認したが、頭痛が尋常ではなかったため、電話で墨東病院に受け入れを要請。詳しい症状を伝えたが「1人当直なので受け入れられません」と