ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

地域の産科機能を次世代に残すために

2008年04月19日 | 地域周産期医療

これまで地域の産科医療を支えてきた長老の産婦人科の先輩の先生方は、常勤の産婦人科医数がせいぜい2~3人の体制で、身を粉にして長年にわたり頑張ってこられました。

まだ多くの産婦人科医が存在している地域では、従来通りの体制のままでも、この先何年かは持ちこたえることが十分に可能なのかもしれません。

しかし、今、社会情勢は大きく変化しています。産科施設はどんどん減り続けていて、産婦人科医の高齢化も進んでいますし、産婦人科医の中で女性医師の占める割合も増えています。病院の産科診療体制を今後も継続していくためには、常勤の産婦人科医師が少なくとも4~5人は必要な時代になってきました。実際問題としては、5人体制であっても決して十分とは言えません。小児科医や麻酔科医のサポートも絶対に必要です。

ですから、現在の産婦人科医師不足の問題を解決するためには、『各自治体が高額の医師確保対策費を使って、どこかから1人の産婦人科医を調達してくる』というような一時しのぎの対応だけでは全く不十分です。

産婦人科医の総数がすぐには増えそうにない現状においては、当面の緊急避難的な対策として、『全県的な視野で病院を集約化(重点化)し、医師を適正に再配置する』以外には問題は解決しないと思われます。しかも、手遅れになる前に早急に実行に移す必要があります。地域の産科を統合して「最後の砦」である地域基幹施設の産科体制を強化する試みに成功すれば、その地域の産科機能を次世代に残すことができます。

****** Japan Medicine、2008年4月18日

日産婦学会シンポ 「男性医師の産科離れ」は産婦人科医療の危機に 男子医学生の新規専攻増加を狙え!

 「男性医師の産婦人科離れは、産婦人科医療の崩壊を加速させる」-。15日に横浜市で開かれた日本産科婦人科学会のシンポジウムでは、産婦人科専攻者における男子医学生の数的増加が、今後の産婦人科医療の提供体制を確保する上で喫緊の課題になっていることがあらためて問題提起された。近年になって若年世代の女性産婦人科医が著増傾向にある。シンポでは、産婦人科医療のマネジメントの在り方への意識改革を求めるとともに、安定した産婦人科医療の提供を目指す上で、男子医学生へのリクルート戦略がいまや学会の緊急課題だとの意見も相次いだ。また、問題解決には「産婦人科は女性医師で」という固定観念の打破が必要とされた。

(中略)

総合討論 男子医学生のリクルートは国民の協力・支援も不可欠

 総合討論では、フロアから昭和大の岡井崇教授が男子医学生の問題に言及し、「産婦人科の7割を女性医師が占めることが続くと、日本の産科医療はもたない」と問題提起。同教授は、産婦人科は女性医師の活躍の場という意識が強まり、男子医学生が敬遠する動きが加速している危機感を示した。
  ほかの参加者からも、男子医学生が産婦人科を希望しても、その周囲の人たちが、「産婦人科の訴訟問題、厳しい労働環境から他科を選択するよう助言する」ケースも出てきていると報告された。
  特に、医療現場では臨床研修で患者に分娩の立ち会いを依頼すると、「女子学生はいいが、男子学生は遠慮してほしい」との回答が増えている現実もあるとし、「そんな経験をしたら、男子医学生は産婦人科を選択する意思は消えてしまう」としている。
  それだけに参加者からは、男子医学生に対して産婦人科を専攻してもらえるような広報戦略を進めてもらいたいとの意見が強かった。国民への協力要請も重要な視点となる。海野委員長は、学会としても取り組みを進めている段階だとして、理解を求めた。

(Japan Medicine、2008年4月18日)