ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

子宮頸がん予防ワクチンについて

2007年06月10日 | 婦人科腫瘍

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子宮頸がんは世界において45歳以下の女性の死亡原因の2番目となっており、毎年27万人以上がこの病気で亡くなっています。子宮頸がんは、パピローマ・ウイルスの持続感染からがんへ進行するとされています。わが国でも、子宮頸がんによって年間約2400人が死亡しています。

現時点において、子宮頸がんで死亡することを免れるためには、年に1度の子宮頸がん検診(子宮頚部の細胞診検査)を受診することが最も有効とされています。しかしながら、欧米での子宮頸がん検診の受診率が7~8割であるのに対し、わが国の子宮頸がん検診の受診率は2割程度にとどまっています。

米国メルク社が開発した初の子宮頸がん予防ワクチン「ガーダシル」が、昨年6月に米国で承認され、9月には欧州でも承認されました。最近、英国グラクソ・スミスクライン社が開発した子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」が、世界で初めてオーストラリアで承認されました。日本でも、現在、これらの子宮頚がん予防ワクチンの臨床試験が進行中ですから、数年以内には使用可能となるはずです。

今後、これらの子宮頸がん予防ワクチンが世界的に普及すれば、将来的には子宮頸がんがほとんど撲滅される可能性もあります。

参考:

子宮頚がんワクチン 米国で認可

子宮頸癌について

子宮頸がん、最近の話題

****** 薬事日報、2007年4月27日

【万有製薬】子宮頸癌ワクチン「ガーダシル」‐今年中に申請へ

 万有製薬の平手晴彦社長は都内で記者会見し、子宮頸癌ワクチン(海外名「ガーダシル」)の日本での承認申請について、「期待値としてだが、今年中に申請したい」と述べた。子宮頸癌によって年間約2400人が死亡していることから、早期上市が社会的使命だとし、全力を上げる構えだ。実現すれば当初予定より2年以上前倒しの申請となる。

 ガーダシルは、米メルクが開発した子宮頸癌ワクチンで、2006年6月に米国で承認。子宮頸癌ワクチンとしては世界初となった。その後9月には欧州でも承認。日本では現在PⅢにある。

 「ガーダシル」は、子宮頸癌の原因の約70%を占めるされるヒトパピローマウイルス(HPV)16型、18型と、尖圭コンジローマなど生殖器疣贅の原因として約90%を占めるHPV6型、11型の感染を予防するワクチン。海外臨床試験では、HPV16型、18型に曝露された経験のない女性で、両型に起因した子宮頸癌を100%予防したという結果が報告されている。

 日本の治験では、当初計画として18~26歳の健康な女性1000人を対象に、プラセボ対照二重盲検群間比較試験が予定されている。筋肉注射によって初回と2カ月目、6カ月目の計3回接種し、抗体価、ワクチンに含まれる型に由来するHPV持続感染及び生殖器疾患の発生の有無が検証される。

 同社としては、日本で年間約7000人が新たに子宮頸癌と診断され、約2400人が死亡している状況を解消したい考え。ドラッグラグの解消の動きやがん対策基本法、ワクチン産業ビジョンの策定など環境が整ってきている中で、「何よりも優先させて取り組む」(高橋希人・研究開発本部長)としており、データ収集・解析を急ぎ、早期承認にこぎつける方針だ。

(薬事日報、2007年4月27日)